「オトナになって体感できなくなった、サルトルの実存主義。」インサイド・ヘッド2 蛇足軒妖瀬布さんの映画レビュー(感想・評価)
オトナになって体感できなくなった、サルトルの実存主義。
むずかしい事を、かんたんに、
かんたんな事を、より深く、
深い事を、おもしろく、
おもしろい事を、
スピーディに、テンポよく、ダイナミックに、
鮮やかな色彩と躍動感あふれる映像で、
私たちの心の奥底を覗かせてくれた前作。
その続編である本作は、
主人公ライリーの成長と共に、
より複雑化する感情の世界を描き出す。
青い髪のヨロコビとカナシミ、
お馴染みの司令室など、
前作からの魅力的な要素はそのままだ。
だが!
新たな感情キャラクターの、
予想以上の数の多さに驚く。
その多さが物語に深みを与える。
特に印象的なのは、
ライリーが思春期を迎えることで現れるシンパイやハズカシといった、
より大人っぽい感情たちだ。
これらの感情は、
単に喜怒哀楽を表現するだけでなく、
人間が成長する過程で必ず直面する複雑な心の動きを鮮やかに描き出す。
更に感情たちは指令室を飛び出してライリーの心の奥底にある記憶を辿って冒険をする。
まるでパズルを解くように、
過去の記憶と現在の感情が繋がり、
ライリーの成長を促していく。
この過程は、観客も自身の記憶を辿り、
自己を深く理解するきっかけとなるだろう。
本作は子ども向けアニメーションでありながら、
サルトルのような問いを投げかけてくる。
例えば、感情のバランスとは何か、
私たちは本当に「自分」を理解しているのか、
シンパイもカナシミもネガティブやマイナスな感情ではなく必要な仲間だ、
シンパシーからエンパシーへ、
など。
理想的な、◯◯すべき、◯◯しないとイケナイは3の次、
論理的な解決策なんて2の次、
大事なのは今気持ちを寄せるエンパシー。
これらの問いは、
大人も子供も共感できる普遍的なテーマであり、
観る者の心を揺さぶる。
人間関係や自己肯定感といった、
普遍的なテーマが隠されている。
まさに、
むずかしいことをかんたんにふかくおもしろく、
エンターテインメントしているいつものピクサー作品だった。
様々なカラーがまだ分離されていない子どもたちが、
夏休みに本作を観る・・・イイナー
EDロールに、
シナリオアーティスト等、
シナリオ関連だけで20人はクレジットされていた。
アイスホッケー仲間と父母と、
最低限のセリフで、
原題『Inside Out』という意味の、
ヨロコビとカナシミの一心同体に華を持たせる、技術の高さに・・・イイナー