「深く考えるとおかしなことだらけだが、本人が納得しているのならそれで良いのかも」サイレントナイト Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
深く考えるとおかしなことだらけだが、本人が納得しているのならそれで良いのかも
2025.4.17 字幕 T・JOY京都
2023年のアメリカ映画(104分、R15+)
ギャングの抗争に巻き込まれた父親の復讐を描くアクション映画
監督はジョン・ウー
脚本はロバート・リン
原題の『Silent Night』は「聖なる夜」のことだが、言葉を発することができない主人公の属性を加味していると思われる
物語の舞台は、2021年12月25日のアメリカ・テキサス州にあるラス・パロマス(架空)
その街はギャングの抗争が絶えない街で、昼夜を問わずにギャング団による銃撃戦が起こっていた
クリスマスの日、息子・テイラー(Alex Briseño)と一緒に過ごしていた父・ブライアン(ジョエル・キナマン)と母・サヤ(カタリーナ・サンディノ・モレノ)たちは、街角の銃撃戦の流れ弾に晒されてしまう
運悪く銃弾はテイラーを貫き、帰らぬ人となってしまった
ブライアンはギャング団の車を追いかけるものの、その一台と揉み合いになってしまう
そして、その車に乗っていたリーダー格の男プラヤ(ハロルド・トレス)に喉元を撃たれてしまった
救急搬送され、手術を乗り越えたブライアンだったが、銃弾は声帯を抉り取り、声が出せなくなってしまった
失意の中、夫婦も疎遠となり、やがては別居状態に陥ってしまう
そんなある日、ブライアンはある郊外の駐車場にて、自分を撃った男を見かけた
男は恋人らしき女性(Valeria Santaella)と手下(Yoko Hamamura)を連れていたが、目線があったというだけで手下に殴られ、女からジュースをぶっかけられてしまうのである
映画は、ブライアンが復讐の炎を燃やし、トレーニングを重ねながら、Xディに向かう様子を描いていく
息子の自転車をバラして作った器具で体を鍛え、中古車を買って銃弾武装を施し、ジュンの撃ち方などを覚えていく
また、接近戦に備えるために動画で寝技やナイフの使い方を学び、購入した車でドリフト走行ができるように練習を積み重ねた
ブライアンは相手の居所を特定するために、事件の担当刑事・デニス(キッド・カディ)の元を訪れ、待たされている間に彼の部屋の資料を盗撮する
さらに、手下の男(Vinny O‘Brien)を捕まえて拷問し、ギャング団の犯罪を暴露させる
そうした準備を整えたブライアンは、クリスマスの日に計画を遂行することになったのである
物語は、流れ弾に当たって死んだ息子の復讐を描いているのだが、結局のところは「自分を撃った相手を殺す」という着地点に向かっていく
誰の流れ弾に当たって死んだかを特定することは難しく、どのギャング団が放ったものかもわからない
だが、怨恨を持つことになったプラヤを殺すことで復讐が為されたと思い込むことができ、それ以外のギャングに関しては警察に委ねることになった
そして、一人でアジトに乗り込んだブライアンを追うように、デニスも現場へと向かうのである
映画は、素人が訓練してギャング団を壊滅させるというもので、その修行期間はわずか1年だった
正確には4月ぐらいまでウダウダしていたので、ほぼ半年間で仕上げたことになる
また、声帯を失っているとのことで、ブライアン自体は喋れないのだが、前半のほとんどのシーンでは他のキャラクターも喋らないか、窓越しで何を言っているのか聞こえないという演出になっていた
途中からは「これ以上は無理」という感じで、敵キャラが喋ったり、警察無線やラジオの音声が流れてくる
なので、主人公以外は普通に喋るでOKだと思うし、無声を印象付けるような宣伝をしても無意味のように感じた
いずれにせよ、主人公が敵に向かって痛快な一言を発するみたいなことがないので、あまり爽快感を得られないように思える
喋れないことがあまり物語を活かしているとは思えず、これなら耳が聞こえない方が面白くなったんじゃないかとも思ってしまう
復讐に関しても、結局は自分を撃った相手を殺して終わりだし、助っ人の刑事も弱すぎて何のために出てきたのかわからないくらい存在感が薄い
最終的には主人公が絞殺したものの、致命的な一撃は刑事の銃弾だったので、何だかなあと思ってしまった