「エンディング後のインパクトは凄い」名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ) 森林熊さんの映画レビュー(感想・評価)
エンディング後のインパクトは凄い
ただそれだけの作品。今まで1作目から毎年劇場で観ているが、初日に観たのは27作目にして初めてかも知れない。昨年の「黒鉄の魚影」は非常に素晴らしい出来だったのだが、今回は正直言って微妙だ。マフィアがどうこうというのは完全に「紺青の拳」と被っている。しかもあちらと違い、殺人事件については何のトリックもなく、アリバイがどうのというのも無い。容疑者がどうのというのも作中では全く進展せず、いきなり鞘から指紋が検出されたということで連行されてしまう。
個人的にキッドが出て来る映画作品は微妙というのが持論であるのだが、今作はキッド参加作品では「業火の向日葵」に次ぐ残念さである。キッドとの対決は本当に最初のOP前だけであり、ストーリーのメインは財宝探しとなる。しかしこの財宝、戦時中の兵器という話が途中に出たことでオチが読めてしまう。大したことない兵器で拍子抜けとかそんな感じだろ?と思ったら案の定。しかもこの財宝が時代遅れというオチ、ルパン三世で見た覚えがある。
「ナポレオンの辞書を奪え」という作品で、やっとの思いでお宝に辿り着いたと思ったら、中身は「真空管ラジオと特許申請書」だったというオチである。ルパン一世の時代においては最新鋭の発明だったが、現代はおろか放送当時の1991年ですら時代遅れの産物となっていた。
そして最後に、お宝に辿り着いた犯人の反応「こんなもののために」は、老婆に整形した犯人の奴とほぼ一緒である。ちなみに余談だが、その「青の古城探索事件」は視聴率23.4%と、アニメコナンの中では最高視聴率を記録しているらしい。17人を殺害したというのも最多記録だそうだ。まぁ確かにあの作品は滅茶苦茶怖い。
話が逸れたが、終盤は見たことのある展開ばっかりだった。かと言ってそれまでが面白いかというとこちらも正直微妙である。キャラクターが非常に多く、毎年コナンの映画を観ている人ですら誰こいつ状態だっただろう。この辺は「黒鉄の魚影」でもあった問題だが、今回は三つ巴どころか四つ巴になった上にゲストキャラクターがその内の三つを占めている。そこへまじっく快斗やYAIBAからもキャラクターが登場しているため、さらに雑多になってしまっていた。
鬼丸猛なんかはちょい役だからまだしも、沖田総司はキッドが変装する。沖田も今でこそ平次の剣道でのライバル的立ち位置になっているが、元々はYAIBAのキャラクターだ。というかこの変装シーンも問題で、完璧な変装の出来るキッドが京都弁が使えないというのは違和感しか無かった。
斧江拓三を庇って生死の境を彷徨うことになる中森警部。駆けつける青子。このシーンいる?まぁこうでもしないと出す機会が無かったのかも知れないが、正直出なくても良かったんじゃないかなぁと。そもそも既に警察に確保されていた斧江拓三を、ブライアン・D・カドクラがわざわざ自ら手を掛けようとする意味が分からない。その後、カドクラと因縁の出来たキッドと何かあるのかと思いきや、特に何も無かった。
平次と飛行機の上で戦うことになる聖は、もう少し登場シーンが欲しかったところ。聖が和葉にアプローチして、平次がヤキモチを焼くというのはいいのだが、そのシーンは一度だけな上に、平次自体との絡みがそこぐらいしか無かった。そこも手合わせして、襲撃犯と太刀筋が似ているとかそういう台詞が欲しかったと思ってしまった。聖自体のキャラクターの掘り下げが無かったせいで、いきなり母親の話をされても置いてけぼり感がある。
函館山への突撃にしても、平次は和葉が函館山にいることを知っていたので、それを言えば聖が思い留まった可能性もあるし、「そうだとしてもやらなければならない使命」と言えば、それはそれでキャラクターとしての魅力にはなるのだが、その辺も無い。素人目から観ても、もう少しこうすればいいんじゃない?と思えるシーンが本当に多いのだ。
今回はスケボー無いのかぁと思ったところで一応はあるのだが、街中でのカーチェイスはかなり省略気味な上に、ロープウェイを登って行くシーンもいきなり登りはじめており「え?」という感じしかしない。序盤から北海道観光名所を紹介していた紅葉と伊織の援護も、それ援護?というものとなっている。
街中で発砲事件が発生しているのに警察は何してるの?レベルで動きが遅いが、聖を捕まえるところだけは無駄に迅速である。にも拘わらず、五稜郭にいたカドクラはあっさりと函館山に向かっていく。警察は包囲もせずに一体何をしているんだ?と思ってしまう。今回ゲストキャラとして北海道警の川添が登場していた。こういうゲストキャラクターの警察官は怪しいの法則がルパンでもあり、実際そういう素振りを見せることもあったのだが、結局こいつ何だったの?と思ったところで正体が黒羽盗一だと判明する。
しかも黒羽盗一と工藤優作が双子の兄弟であり、他人の空似と言われ続けていた新一とキッドが従兄弟だと判明する。沖矢昴の正体が赤井秀一だと判明する「異次元の狙撃手」と同等の衝撃ではあったが、黒羽盗一を知らない人は誰?だっただろう。あと、黒羽盗一生きてたのかよ、と思った人はかなりの通だと思う。ただ、それならば盗一の変装していた川添の出番がもう少し欲しかった。とりあえず黒いキッドの衣装はカッコイイことは確かである。
有希子とベルモットの変装技術は盗一に弟子入りして身につけたという設定があるのだが、まさかこんな関係が出て来るとは想定の斜め上過ぎる。あとはもう完全にオチが読めていたが、平次の告白は失敗した。来年は諸伏高明が登場することが確定している。2作連続で微妙なのは勘弁して欲しいので、来年は面白いことを願うばかりだ。