「若くて美しくて優しい」映画 からかい上手の高木さん グレシャムの法則さんの映画レビュー(感想・評価)
若くて美しくて優しい
永野芽郁さん。
『半分、青い』以来のファンです。
周りの人まで(他の女優さんよりその半径がかなり大きい)明るい気分にさせる笑顔と、ここぞという時の微妙だけど確かな演技力。
今泉力哉監督。
噛み合ってるのか、噛み合わないのかよく分からない絶妙な会話やそのやり取りから滲み出るユーモア、独特の間、独特の場面転換など、外れの作品がない監督。
そのふたりが織りなす映画です。
久々に休みをとって公開初日の朝イチの回で鑑賞しました。
なんか、らしくないな。
というのが、第一印象でした。
原作のテイストなのかもしれませんが、お伽話の中に世界が閉ざされた完全ファンタジー。
ガサツな人は出てきません。
青春時代特有の自意識過剰さも微笑ましい範囲にとどまり、鬱や自傷行為などの傷ましさとも無縁です。
風景も人もひたすら若くて美しくて優しい。
そうなのです。お年寄りも出てきません。
どこかの高校がそのまま、お伽話に出てくるような、のどかで美しい小島に移転した。
まるで漂流教室。
このような世界では、皮肉も嫌味も存在しないし、時間の流れもゆったりしていて、ありえないほどのもどかしさにもイラつくことはなく、そうだ、頑張れ、あと少しで伝わるぞ!
と応援するだけです。
永野芽郁さんは素敵な笑顔そのままでいいし、今泉力哉監督も凝った脚本を書く必要もなく、ただただ美しく撮ればいい。
実際には、そんな簡単なことで、ひとつの映画が作れはしないのは分かってるつもりですが、私が期待するおふたりの力量があまり発揮されることのない作品のように思えて、少し残念でした。
確かにそうおっしゃられてみると、そうですね。「完全ファンタジー」であり、「漂流教室」でした。ひと時の溢れる安息感と、ハラハラさえも心地よかった。
それが「他の女優さんよりその半径がかなり大きい」永野芽郁さんだからこそ、余計に取り込まれてしまったのですね。