「政治がテーマの邦画は、いつも曖昧」もしも徳川家康が総理大臣になったら コバヤシ・モユさんの映画レビュー(感想・評価)
政治がテーマの邦画は、いつも曖昧
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少し期待はしたが、やはりイマイチだった。
ベースの価値観を肯定し、その価値観の中での「問題点」を指摘する。いつもの政治系邦画パターンである。具体的には、民主主義は是であり、それに積極参加しない、自分たちで考えない、国民が問題である。ということを、リーダーである徳川家康が国民に諭して、映画は終わる。
民の安寧のために、家康が徳川幕府を開き、260年の平和をもたらした。ここはそうかもしれない。しかし、徳川幕府は「民主主義」ではない。
国民の7%しかいない武士による「寡頭政治」が江戸幕府だ。
その他、ここで出てくる偉人たちが行った政治も、独裁政治もしくは寡頭政治であり、
ラストシーンで、映画ではヒールの豊臣秀吉が放った言葉「俺たちに任せて、民は従っていればよい」こそ、偉人たち全員の本音だろう。
私としては、日頃、「民主主義こそ正義」と声高に叫んでいる日本国民が、
偉人たちの寡頭政治に満足している自分たちにはたと気付き、そこを起点に、望む政治とは何か、宗教のごとく信じている民主主義の是非を、改めて自分たちで考えていく。そんな内容のほうが、ストーリーとして面白いのではないかと思った。
映画の最後では、「民を信じる」と家康は言って、内閣解散、消滅するが、
本当の家康は、そんな無責任なことはしなかったと思う。
民を信じたら、また戦国時代の殺し合いに逆戻りだと思ったから、
家康は、ガチガチの枠組みを日本社会に組み込んだのではなかったか。
偉人をAIで復活させ、日本人の問題点を語らせるまではいいが、最終的に、丸めてしまう。
政治をテーマにした邦画の曖昧さが出ている、そんな映画であった。
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