リストラ・マン
1999年製作/90分/アメリカ
原題または英題:Office Space
スタッフ・キャスト
- 監督
- マイク・ジャッジ
- 製作
- マイケル・ロテンバーグ
- ダニエル・ラパポート
- 製作総指揮
- ガイ・リーデル
- 脚本
- マイク・ジャッジ
- 撮影
- ティム・サーステッド
- 美術
- エドワード・マカボイ
- 編集
- デビッド・レニー
- 音楽
- ジョン・フリッゼル
1999年製作/90分/アメリカ
原題または英題:Office Space
1990年代の米アニメ「ビーバス&バットヘッド」がリブート
2020年7月7日「シリコンバレー」シーズン6で終了
2019年6月9日映画&TV史上最悪の上司に「プラダを着た悪魔」ミランダほか
2011年7月13日日々の生活に疲弊し不満を募らせる青年ピーターが、自分を扱き使う会社に復讐するため、リストラされた同僚と共に横領を企てるという社会風刺コメディ。
ピーターが想いを寄せるウェイトレス、ジョアンナを演じるのはテレビドラマ『フレンズ』の、名優ジェニファー・アニストン。
原題は『Office Space』。
ピーターたちが『スーパーマンⅢ/電子の要塞』(1983)から着想を得て犯罪計画を企てたことからこんないい加減な邦題が付いたのだと思われるが、映画の内容もなかなかにいい加減なものでありため、このくらいヘナチョコなタイトルでちょうど良いのかも知れない。
日本では劇場公開されておらずほぼ無名な作品だが、米国ではカルト的な人気を誇るらしい。英語版ウィキペディアによるとDVD販売本数は600万本を超えるのだとか。
しかも2017年にはモバイルゲーム化されている。この映画をゲーム化しようと考えた奴、頭イっちゃってるぞ!!🤣
鑑賞後、監督の名前を調べずにはいられなかった。というのも、事前の想像を遥かに超える良作なコメディ映画で驚いたから!
確かにストーリーはいい加減で平坦で尻切れトンボ。決して褒められたものでは無いのだが、そのダメさを補って余りあるブラックコメディの切れ味の鋭さ。過剰なギャグや顔芸、効果音に頼らない、地味ながらも確実に笑いのツボをついてくる知的かつ意地悪な笑いが見事👏
森田芳光や伊丹十三の作品をちょっと思い起こさせるような、個人的に一番好きなタイプのコメディ映画でした。
罪を認め、横領した金と自白文を上司の部屋の隙間にスッと差し込むピーター。しかしその後すぐに戻ってきて、なんとかそれを回収しようと這いつくばりながら悪あがきをするシーンのあのみっともなさには爆笑!こうなんと言うか、人間が生きるということの汚さがめっちゃ上手く集約されていたっ。素晴らしい✨
映画冒頭。
通勤ラッシュの渋滞に巻き込まれ全く身動きが取れなくなったピーター。車線変更を繰り返しながら少しずつ前に進むが、歩行器を使いながら歩道をトボトボと歩くお爺さんよりも遅いことに気が付き絶望する。
それと平行して、イキったギャングスタ・ヒップホップを大音量で聴くが本当に怖そうな人が近づくとカーステレオの音量を下げるマイケル、渋滞に腹を立て毒づくサミア、クビになることを恐れながらバスを待つミルトン、自分専用の駐車場に自慢のポルシェを悠々と停めるランバーグ部長、それぞれの姿も映し出す。
主要人物5人のキャラを必要最小限の描写で、かつ観客の誰もがそれぞれのパーソナリティを一発で飲み込めるほどの的確さで、しかもコミカルに映し出す、このスマートさに痺れたっ!⚡️上手いっ!
もうこの段階で、この映画が優れた作品であることを確信。という訳でこの映画を監督したのは誰だあっ!!と調べてみました。
監督/脚本はマイク・ジャッジさん。『BEAVIS AND BUTT-HEAD』(1993-)や『キング・オブ・ザ・ヒル』(1997-)と言った有名作品を生み出したアニメーターであり、後に日本でもよく知られる風刺コメディ映画『26世紀青年』(2006)を手がける、正にブラック・コメディ界の旗手。
本作が彼の実写デビュー作のようだが、初監督でこのクオリティは見事!
最近は映画監督業から距離を置き、本業であるアニメの仕事を主にこなしているようですが、彼の名前は覚えておいて損はないでしょう!
オフビートな笑いで埋め尽くされた作品ですが、企業が社員に押し付ける理不尽な待遇を鋭く風刺しており、日々を懸命に生きるサラリーマンなら必ず共感してしまうと同時に、自分の生き方を見つめ直すきっかけになるのではないでしょうか。
ネットミームにもなっているプリンターリンチや、くっそ嫌そうに上司にハッピーバースデーを歌うシーンなど最高な場面は沢山あるのですが、個人的に好きなのはリストラされた社員トムが交通事故にあう一連の件。
リストラされたことに絶望し自殺を図るもギリギリで踏みとどまるのだが、その直後に飲酒運転の車に追突されてしまう。
背骨を骨折する重症を負うも保険金100万ドルを手にした彼がピーターに言うセリフ、「俺は30年間嫌な仕事を我慢してきた。我慢していればこんな良いこともあるだぞ」。
バキボキに骨折していながら、満足そうに微笑むトム。そんな彼を羨む同僚。
大金を得る事は重症を負うことよりも幸福。冷静に考えればどうかしている価値観なのだが、そう思っている人は少なからず居るのではないだろうか。こう言う現代社会のネジれをシニカルかつ冷静に笑いへと昇華する。本当に上手いですな〜。惚れ惚れしちゃう。
笑っちゃいけないけど笑っちゃうみたいな見事なブラックコメディなのだが、会社が放火されちゃうクライマックスにはちょっと複雑な気持ちになっちゃった。
京アニ事件や北新地ビル放火事件など、日本でも色々あったからねぇ…。
いくら社会に不満があっても、火をつけちゃあいけません。火をつけるのはハートだけにしておきましょう。
まぁとにかく、なんでこんなに無名なのかが不思議な、好きなところだらけの名作コメディ!
ちょっと中盤だれるところもありますが、予想以上に楽しむ事が出来ました〜🎵
…にしても「2000年問題」って懐かしいですねー。あれからもう四半世紀も経ったのか…。時間流れるの早すぎひん?