ディア・ファミリーのレビュー・感想・評価
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完璧な人工心臓の早期開発を願いつつ・・・‼️
大泉洋扮する主人公が重度の心臓病を抱えた次女の命を救うため、自ら人工心臓の開発に乗り出す作品‼️冒頭、年老いた主人公夫婦が表彰される場面から始まる事で、次女の命を救えなかった事、人工心臓も作れなかった事、バルーンカテーテルの開発に成功した事が示唆される‼️結果が分かっている物語構成に大丈夫かなぁと危惧しつつ、鑑賞したのですが、これがとんでもなく感動的な作品でした‼️娘のために一生懸命頑張る父、それを献身的に支える妻、妹思いの長女、健気な次女、姉思いの三女、共に開発に励む医療関係の方々、なかなかバルーンカテーテルを承認しない病院のお偉方など、定石通りの展開で新鮮味は無いのですが、俳優さんたちの素晴らしい演技で素直に泣かせてくれる見応えのある作品となっていました‼️特に三姉妹を演じる女優さんたちの存在感は悲しい物語ではあるのだけれど、作品全体を微笑ましく彩ってくれています‼️ラスト、次女が家族、特に父を思って書いた日記が読まれるシーンは、涙が溢れてきますよね‼️ただ主人公が経営する町工場の従業員たちの描写が少し浅いと思いました‼️娘のために暴走する主人公に迷惑をかけられ、複雑な思いを抱いている従業員たちの見せ場があった方が映画的に盛り上がったような‼️3枚の退職願だけでは‼️そこまで要求するのは欲張りですかね⁉️
最高でした、是非見てほしい映画
泣きたい人は迷わず劇場へ(^_-)-☆
魂を込めた信念を貫く深い思いと、父を支える家族愛に涙する!
この映画のチラシを手にしたのは2月頃だったか随分と前に思います。いつやるの?今でしょ、じゃないけど 公開日まで待ち遠しい日々を過ごしておりました。
本日初日に無事「ディア・ファミリー」を鑑賞させて頂きました。
有難う御座いました。(*´ω`*)
場内ですが、実話でもありますし やっぱり関心の高さを感じましたね。
それと この心臓の病について何らかの関わりがある方々なのでしょうか、日頃劇場ではお見受けしない服装の方々が来られていた感じしました。
私も身内と心臓疾患で早くに別れた為、このご家族の思いは凄く分かります。10年と言う時間を把握できて、前向きに過ごせた事は幸せであったと感じます。
悪化を感じる事無く気が付けばもう手遅れ。宣告されても何の手立ても打てずに終えてしまわれる家族の方もきっと多いと思うのです。
ですから レビュ-コメントするのちょっと心傷む思いもあります。
映画の展開、質的評から言うと、感動モノの王道作品な作りです。
実話ベースですので描かれた10年は色々とあり、怒り憎しみ、諦め、そして去った人々への感謝。深い思いが一杯詰まっては有るのですが上映時間的制約もあり各エピソ-ドが浅く感じるかも知れません。その点は少し残念ですが仕方無いと感じます。人によっては あんまり泣けなかった~ってコメントされる方が居るかもですが それはこのテーマへの自身の関係深さにて左右されるだろうと少し感じます。
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原作:清武英利氏 『アトムの心臓「ディア・ファミリー」23年間の記録』
監督月川翔氏
----心優しい役者陣----
坪井宣政(父 主人公):大泉洋さん
坪井陽子(母):菅野美穂さん
坪井奈美(長女):川栄李奈さん
坪井佳美(次女 心臓の病):福本莉子さん
坪井寿美(三女):新井美羽さん
富岡進(日本心臓研究所の研究医):松村北斗さん
石黒英二(東京都市医科大学教授):光石研さん
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この元話は、東海メディカルプロダクツ(愛知県)の創業エピソ-ドですね。
創業社長筒井御夫妻のお嬢様が心臓疾患で余命宣告を受けられた事により、何とか娘の命を助けたい思い、強い信念でもって人工心臓の開発に挑まれた奮闘が描かれてます。そして深い挫折とやり場のない悲しみ。そして日本製初のIABPバルーンカテーテル開発秘話へと繋がります。
同じ境遇の家族を抱えてる人が、この夫妻と同じ事が出来るのか? と言えば殆どの方は難しいでしょう。一つは時間、そして圧倒的な財力、そして努力できる環境連携(協力の輪)、そして 最後に運でしょうか。
どんなに優れた物が完成しても、世間に認めて貰わないと採用されない・・・
これを観ていて一番痛感致しました。
今は何処の地域でも、医学+工学=医工連携 って言うのが組まれている様ですが
平成元年当時はそういう後押し的な組織づくりは無かったのでしょうかね。
昔見た映画「ロレンツォのオイル/命の詩」も実話で今作と境遇が良く似てます。
難病の副腎白質ジストロフィー病の一人息子(ロレンツォ)を何とか助けるため、必死に奮闘するオドーネ夫妻の実話に基づく話です。
今作、一番感動した所は やっぱり父と次女との二人っきり会話の所ですかね。
”私の命はもう大丈夫だから”・・・ そこはやはり涙しますね。
父のもう限界域に達していて、助けたくても もう叶えられない思い。
それを察した娘の言葉が心の奥底に響きます。
それと、終盤のレポ-タ役の有村さんの 意外にも自分自身が心臓疾患あってこのバル-ンによって治った事。その感謝を開発に尽力された坪井さんへ直接告げる所でしょうかね。実際は色んな患者さんから感謝の手紙などは多かったであろうと感じますが、直接言われて頭を下げられる事程 嬉しい事は無かったであろうと思うのです。物を開発してる開発者って、中々それを使用する使用者の方からお礼を直接言われる事が無いでしょから。そう言うのって とっても大事だと思うんですよね。
本作は普通に感動モノで他の同類作品に埋もれてしまうかも知れません。
しかし、きっと記憶に残る一作で在ると信じます。そして最高です!!
ご興味御座います方は
是非、今の内に劇場へどうぞ!
偉業を成し遂げた家族の物語
大泉洋の作品にはあまりハズレが無いので、今作も迷い無く観賞。
【物語】
1970年代から話は始まる。名古屋の町工場の経営者筒井宣政(大泉洋)は幼い娘・佳美が先天性の心臓疾患を持ち、長くて余命10年と医者から宣告される。宣政と妻・陽子(菅野美穂)はがく然とするが、娘を救う方策を必死で探す。 全国、さらにはアメリカの著名な心臓医に助けを請うも見放されるが、アメリカでは人工心臓の研究が進められていることを知る。
人工心臓に希望を託して研究機関に足を運んで相談するも、アメリカでも実用にはほど遠く、まして日本では基礎研究の段階であることが分かる。 宣政は自分で人工心臓を開発するしかないと決断する。医療の知識が皆無の筒井は、人工心臓について独学しながら、有識者のもとへ日参した結果、ある医大の教授が宣政の熱意に負けて一緒に研究・開発に合意する。
最もお金がかかる試作品には宣政が私財をつぎ込んで製作・提供し、大学の想定していた以上の速度で開発を進んだ。しかし、技術的めどはたっても、それが医療器具として承認されるまでにさまざまな関門が残されおり、10年のタイムリミットは目前に迫ってしまう。
【感想】
予告編で想像したのは、「重篤な心臓の病を抱える娘の父親が、娘のために人工心臓開発に奮闘する」というかなりベタなフィクションだった。恐らく予告を観た多くの人がそうだったと思うが、冒頭の表彰式シーンでそれは違うと分かる。 いや、“人工心臓開発物語”はウソではないのだが、本作は大手医療メーカーが失敗した国産IABPバルーンカテーテルの開発を成功させた中小企業の経営者夫婦の物語なのだと。(冒頭のシーンは主人公が実在の人物なのだろうということも想像させるが、実名も役名筒井宣政のままの実在の人だということを観賞後確認)
冒頭のシーンから過去を振り返る構成で物語は展開され、最初から最後まで引き込まれた。実在の筒井宣政さんが凄い人物なので、それだけで興味深い作品にできたとは思うが、これだけ没入できたのは脚色・演出の出来が素晴らしいからこそだと思う。終盤は涙なしでは観られなかった。
まず、宣政の執念が凄い。「娘を何としても救いたい」というところまでは、親になった人なら誰でも思うだろう。しかし、俺なら早々に「悔しいけど、諦めよう」と妻を説得していたに違いない。最初にやった日本中、さらにはアメリカの病院にまで足を運んだという時点で、おそらく1/10の調査数で諦めたに違いない。客観的に言えば、全×だったのだから宣政は無駄な労力・時間・お金を使ったわけで、主要な数病院で話を聞いた結果で判断するのが効率的には正しいのだけど、その常識外れの諦めの悪さ、ポジティブ思考があとのカテーテル・バルーン開発成功につながっている。
作品タイトルがファミリーとなっているように凄いのは宣政だけではない。
妻陽子(菅野美穂)も宣政の背中を強く押す。行き詰ったときに口癖のように宣政に言う「それで、どうするの?」はちょっと怖いけど(笑)
俺だったら「どうしろって言うんだ!」と切れてしまいそう。 でも、言うだけでなく自らも動いていたようだし、莫大な私財投入も奥さんが反対したら出来なかったはずで、妻の後押しが有ったからこその偉業だったに違いない。
ちなみに菅野美穂もステキだった。今まで観た中で一番キレイに感じた。
子供達も凄いと思う。病を抱える佳美は次女で、この他に長女と三女の3人姉妹。例えば中高生にもなれば、佳美のために親が莫大な借金を抱えていることも知っていただろうし、生活も佳美中心だったことは想像に難しくない。家族旅行さえほとんど行けなかったことが劇中でも仄めかされる。 普通なら「佳美ばっかり」と不満も出よう。しかし、そんな不満を出さずに佳美を応援し、父親に理解を示す。 事実はきっと不満が皆無だったとは思えないが、娘たちの理解無くして、宣政の“無茶”は進められなかったはず。
また、佳美の前向きに生きる姿勢も宣政の大きな力になっていたに違いない。
“諦めの悪さ”はしばしば周囲にとっては迷惑になるが、迷惑を超えて偉業につなげた偉大なるファミリーなのだと思う。
町工場が成し遂げた偉業という点では“下町ロケット”を彷彿とさせるが、池井戸作品の特徴として業界の調べが甘くてリアリティーに難があるのに比べて、実話ベースだけにリアリティー溢れる本作の方が俺にはずっと感動できた。
俺のお気に入りランキング、2024年上期公開作品中TOP3に入る秀作。
全ての方に観賞をおススメできます。
大泉洋でしかできない家族愛の物語とその先を丹念に描く。
妻役・娘役・協力者役、好きな俳優が多く出ていて、それだけでも見ようという気にさせる映画だった。
しかしながら、本映画は、主演大泉洋がはまり役。コメディ要素などほぼなく、実話に基づく内容でどこまでのものが描けるのかが興味の対象だったが、非常に良かった。
自分の持てる立場・環境・技量を惜しみなく娘の疾患への解決策(人工心臓)に注ぎ、到達が難しいとわかってからは、娘との約束を胸に、そこで得た知見・蓄積を応用して、同じように苦しんでいる人たちへのツール開発(IABPバルーンカテーテル)に還元し、結果、より多くの人達を救う。
何より、壁にあたっては次はどうする、をひたすら続けるのに、本人の弛まぬ努力と、家族各自の役割分担&全力のサポートがあり、その皆で前進していくさまは家族愛の究極の形を見るようだった。
悲しい場面があっても、単に悲嘆に暮れるのではなく、それを上回るポジティブさが常に感じられたのは、そうした背景に基づくからなのだろう。
より多くの人を救う
後半は、ずっと涙が止まらない。人工心臓の夢を絶たれた坪井に、より多くの命を救って欲しいと佳美が訴える。
「死ぬたくない」「もっと生きていたい」その気持ちを押し殺して発した言葉に胸が締め付けられる。
坪井の前には、医学会の掟が何度も立ちはだかり、その都度苦渋を飲まされる。
娘を救いたい一心で始めたことが、挫折を経て、多くの命を救うための行動に変わっていく。
いつもの感動物でしょ? しかも大泉洋だし。鑑賞前に思っていたことは、本当に謝りたいです。
大泉洋、菅野美穂の熱演に心が動かされ、何度も拳を握り締めた。
松村北斗の抑えた演技から医局に勤務する研究医の切実な心情が伝わってくる。
有村架純が演じたテレビレポーターの話は、さすがに脚色? なんて気もしますが、全部がいいから脚色でも許しちゃいます。
誰かを想う気持ち
洋ちゃん皆様お疲れ様でした‼︎
素晴らしい作品でした。
娘さんに役立って元気に暮らしていれば良かったのに、それだけが大変残念です。役者さん達皆さんいい演技されていて、グッと気持ちを引き込まれました。
あんなに熱く一生懸命頑張れる人がいるって凄い事です。勇気貰いました。
実話ならではの重み
よかった。
見る前は難病の家族を救うための愛がテーマの映画と思ってそれほど期待していなかったが、いい意味で裏切られた。
こういう映画を見ていつも思うのは、1人の命を助けるために多数の人間を犠牲にするのはありなのか?ということだ。この主人公も自分の娘を助けたい一心で、自分の生活だけでなく、周りも巻き込んでいってしまう。周りの医者や工場の職員、家族。しかし、何をやり遂げるにも結局誰かに迷惑をかけなければいけないのは同じことだ。その目的が独りよがりなものであろうが、そうでなかろうが、何か話し遂げ世界を変えていくのはこういう人なのかもしれない。
大泉洋さんの演技は素晴らしく、彼の情熱が伝わってくる。何かを成し遂げるためには情熱が不可欠であることを再認識させてくれる作品だった。
映画の構成も見事で、全く未知の領域に飛び込む主人公の姿勢、周囲からの拒絶と絶望、そしてそこからの再起。主人公の決して諦めない姿勢には胸を打たれた。
僕は誰かを助けるために困難に立ち向かっていく主人公が好きだ。それがドラゴンに立ち向かう騎士であっても、メガネを開発する職人であっても。そういう意味ではこの映画もとても良かった。
泣かせる要素てんこ盛りのプロジェクトX風の映画
難病患者がいる家庭の家族愛を描いて観客を泣かせにかかったプロジェクトX風の映画と言ったら、石ぶつけられますかね・・
冒頭の「in vitro」(イン・ビトロ:試験管内)、「in vivo」(イン・ビボ:生体内)を医学猛勉強中の父親が知らなかった時点で、映画見る気が失せてしまいました(門外漢の自分でも知ってる初歩の初歩の用語です。知らないのは明らかにおかしい)。
そうなったら普通だったら気にならない齟齬も気になる気になる・・
・主演の福本莉子さん。綺麗な女優さんですけど血色良すぎです。
・心臓移植についてほとんど触れないのは何故でしょうか。海外移植が抑制される前の話ですが・・
・バルーンカテーテルを選んで開発しようとした理由があるようで無い・・
・十数万人の命を救ったとは盛りすぎ。十数万人の患者に使って医療事故が減ったが正確かと。
・記者の有村架純さん、偶然すぎて不自然です。
実話ベースの話ですが、過剰演出っぽくてイマイチ気に入らないという感想でした。
ただ、決してモデルの方を貶す意図はありません。
命も夢も諦めない
実話、難病、苦難、家族愛…。
予告編ではキャストの泣きの演技を見せ、人気アーティストの主題歌でさらに感動を謳う。
日本映画定番とも言えるこのジャンル。お涙頂戴映画。
こういうのって見れば良作なんだけど、ちょっと鼻に付くんだよね。実話だから感動して当たり前、泣け泣けの押し売り。
題材は違うが、本作と同じく菅野美穂が支える奥さん役で出た『奇跡のリンゴ』を何故か思い出した。あれも“さあ、泣いて下さい”の売り込みで見た人の涙をたくさん溢させたが、勿論苦難の実話には頭が下がるが、私ゃ冷めて見てた。
なので、最初は本作にも辟易。
だけど、この実話には惹かれるものも感じた。
人の命。それを救う。
もう6年も前。私も命が危うい事あったので、少なからずシンパシーを感じる。
観ようか観まいか直前まで悩んでいたのだが…、結果観た感想。
観て良かった。素直に感動しちゃいましたよ。所々、私の荒んだ目に溢れるものも…。
大泉洋演じる主人公は坪井宜政とされているが、そのモデルは、愛知県にある医療機器メーカー“東海メディカルプロダクツ”の創業者、筒井宜政氏。
元はプラスチック加工会社であったが、医療機器を扱う事になった訳…。
宜政と妻・陽子の次女・佳美。
先天的に心臓に病を煩い、医師から余命10年を宣告される。二十歳まで生きられない…。
宜政は国内のみならずアメリカの心臓病に長けた病院にまで赴くが、当時(1970年代)の医学では治療は無理。
そんな時、人工心臓の話を聞くが…、開発段階で、実用どころか完成にも至ってない。後何年…いや、何十年掛かる事か。
何十年って…。そんなに待てない。10年しかないんだ。
まだ出来てもいない。ならば…。
お父さんが作ってやる!
開発と実用化に成功した今だからこそ、氏の熱意と努力に本当に頭が下がる。
でも、当時だったら誰もが思う筈。そんな事…。夢物語で理想事。
ましてや氏は町工場の技術者であって、医学の知識は全くのゼロ。
医療従事者たちからすれば、ただ一心に命を救いたいという気持ちは分かるが、医学の事など何も知りもしない外部の素人が、何言ってやがると面白くもなかっただろう。
が、信じている者もいた。
宜政本人。諦めが悪いのだ。
家族。普通だったら奥さんは反対し、子供たちも呆れるが、佳美の日記にも書かれてある。
ウチの家族は変わっているのだ。
医学の知識はゼロ。分からない事は調べる。学ぶ。聞く。
病院の医師・石黒や研究医たちに根掘り葉掘り。
最初は鬱陶しがられるも、熱意に負け、協力を得られる。
病院側は医学の知識は豊富だが、技術に関しては専門家ではない。そこは、技術者である宜政の腕がモノを言う。
開発に当たってのこれまでの問題を、技術者ならではの視点で打開。
その分野に携わっていると何でもかんでも無理と決め付けるが、こういう時外部の人間の視点や発想が切り拓く。歴史上の発明や開発にそういう事は多い。
医学×技術。まずは先行きの良いスタートを切ったが…、本当の苦難はここから。
アメリカで治験中の人工心臓の患者が死亡。
これにより、石黒は手のひらを返すように手を引く。
協力してくれた研究医たちも各々進路が…。無理強いは出来ない。
振り出しに戻ったかのように孤立。
気付けば莫大なお金が…。人手、新技術の開発、アメリカからの機器の取り寄せ、本業もある。数千万単位ではない。億単位…。
さらに絶望的な報せ。佳美の症状が重くなる。心臓が弱まり、それと共に他の内臓機能も弱まる。つまり、例え奇跡的に人工心臓の開発に成功して移植手術しても、他の機能の低下により助かる見込みはない。
佳美の死は避けられない。
何だよ、それ! 人工心臓さえ成功すれば助かるんじゃなかったのか! じゃあ、今まで俺がやってきた事は何だったんだ…!?
家族や佳美の傍にも居てやれず。全て佳美の命を救えると信じて…。
だったら、佳美の傍に居てやれば良かった…。何をしてたんだ、俺は…。
諦めが悪い宜政。が、この時ばかりは諦めかける。
そんな宜政を救ったのは、救おうとしていた佳美の言葉だった…。
佳美はこの時、もう自分の運命を受け入れたのであろう。
自分の死は避けられない。
でも、お父さんがやってきた事は無駄じゃない。
私の命は救えなくても、これからたくさんの人たちの命を救う。
私の命は大丈夫だから…。
これを言った佳美の本心は、本当は辛かっただろう。泣きたかっただろう。
そんな本心を押し殺して。…いや、家族の為に前向きな心こそ、佳美の本心であろう。
健気な妹の前では気丈な姉・奈美。ひっそり咽び泣く。
佳美の日記を読む宜政。傍に居てやれなかったのに、溢れんばかりの愛と感謝の言葉が…。
娘の命を救う事はもう無理かもしれない。
が、そんな娘との約束、娘の夢…。
お父さんの作ったもので一人でも多くの命を救う。
宜政や家族の歩みは、苦難や壁の連続だった。
それにぶち当たったら…。
諦めろとは言わない。時に諦めたくなるほどの絶望もある。ならば…。
発想を切り換える。
娘一人の命から、同じ病に苦しむ人たちを救う。
人工心臓の開発から、バルーンカテーテルの開発へ。
恥ずかしながらバルーンカテーテルという言葉を初めて聞いた。
血管などに通し、圧縮の膨らませを繰り返し、心臓などの補助をする装置。
あくまで補助装置なので根本的な完治は出来ない。
ちなみに現時点でも永久的な人工心臓の開発の成功には至ってないという。
しかしこのバルーンカテーテルで、どれほどの命が救われた事か。その数実に、世界中で17万人以上!
それをやってのけた宜政氏の功績は、本当に人間国宝級だ。
それもこれも娘との約束。一人でも多くの命を救って。
だが無論、それに至るまでの道のりはこれまた苦難…。
開発をまた一から始める。
またまた莫大な時間とお金…。
が、やる。諦めの悪い男なのだ。
再び石黒に協力を乞うが…、門前払い。出禁。
と言うのも、当時国内で使われていたバルーンカテーテルは、アメリカからの輸入製。それで事故が相次いでいた。
事故は仕方のない事。
仕方のない…? それが医師が言う言葉か…?
人工心臓の時と同じく、国産バルーンカテーテルなど“いずれ”の事。
何故、今やらないのか…?
保身、金や地位や名声、事なかれ主義。権力に屈する病院の体制は変わらない。
事故が多いのなら、その原因は…? 誰もそのデータを取っていないのか…?
いた。研究医の富岡。が、彼は人工心臓開発の時、一番に逃げ出した人物だった…。
石黒に逆らえず。また、自分の保身の為。
それを悔やんでいた。
今回は協力。その協力あって、原因を突き止める。
アメリカ製のバルーンカテーテルが、日本人の体型に合っていない。
ならば、日本人の体型に合ったバルーンカテーテルを作る。
そこからまた試行錯誤、試作の連続。
治験も繰り返し、遂に実用化しても問題ナシの国産バルーンカテーテルの開発に成功した。
が…
石黒は実用化を認めない。他の病院にも圧力をかけて。
ここまで来て、ここまで来て、また阻まれる。
認めないなら、認めさせるまで。認可ナシに実用を。
責任は全て自分が取る。そう断言したのは、宜政ではなく富岡であった…。
人工心臓開発の時協力してくれた元研究医の現医師が実用。
結果は良好。全く何の問題もナシに、完璧なほどに。
実用化成功が知れ渡り、あちこちで買い手が付く。海外にまで…!
大借金返済のメドが付いた。
石黒の勤務する病院でも病院長の命により、実用へ。
石黒のまたまた手のひら返し。
この時の宜政の返しと「よっしゃ!」に本当にスカッとした。
どれほどの歳月が経った事か…。
全ては娘の命を救う人工心臓開発から。
当初の目的から変わったが、娘との約束を果たし、多くの人の命を救った。
そんな佳美も宣告の余命から生きた。成人式も迎えた。
佳美は大変喜んだ。また一人の命を救ったね。
だが、“その時”は確実に迫っていた…。
あざとさとか、お涙頂戴とか、確かに否めない。そう言うなら言えばいい。
23年の歳月を2時間の尺に収め、本当はもっともっともっと、苦難は計り知れない。
が、月川翔監督の演出と林民夫による脚本は、医療や専門技術の事など全く無知でも見れる分かり易さと作りに徹し、好感。
キャリアの絶好調ぶりと安定を示す大泉洋の好演。
菅野美穂、川栄李奈、松村北斗らも好助演。福本莉子もいいが、少女時代を演じた鈴木結和のアラレちゃんに匹敵レベルの眼鏡っ娘姿もキュート。
最初は協力するも、途中から協力を拒否する光石研の憎々しい巧演もあってこそ。
後年、功績が認められ、国から栄えある賞を。
が、宜政の顔は浮かない。
俺は、娘の命を救えなかったダメな父親だ…。
直接的な描写はないが、佳美は他界。宜政はずっと悔やんでいた。
確かに娘の命は救えなかった。が、多くの人の命を救った。目の前にも。
開幕のバルーンカテーテル手術。有村架純演じる記者。
ここは創作だろうが、命を救われた人が大勢いるのは事実だ。
世界中の人々が、感謝してもしきれない。
父は亡き娘に感謝を。佳美、ありがとう。諦めない事を教えてくれて。
亡き娘は父に感謝を。お父さん、ありがとう。私の夢を叶えてくれて。
次はどうする?
約束を諦めない。
夢を諦めない。
命を諦めない。
まだまだ。
諦めが悪いのだ。
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