「マダム・ウェブにも見えないSSUの今後」マダム・ウェブ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
マダム・ウェブにも見えないSSUの今後
“マーベル初の本格サスペンス・ミステリー”なんて謳ってるものの、謎解き要素はほとんどナシ。普通にスーパーヒーロー類いのアクション。
マーベルと言ってもMCUではなく、『ヴェノム』『モービウス』に続く“SSU(ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース)”の一編。
これまでのヴィランではなく、原作コミックではスパイダーマンのサポート役であり助言者。
実写作品では初登場の“マダム・ウェブ”。どういうキャラで、どんな能力を…?
NYで救命士として働くカサンドラ・ウェブ。通称“キャシー”。
救命活動中事故に遭うも、一命を取り留める。それ以降、自分だけに奇妙な事が…。
人が同じ事を二度言う。似たような現象を見る。しかしそれらはまだ起きておらず、直後に実際に起きる。
これは一体…?
次第に分かってくる。
未来が見える…。
原作では難病で盲目の車椅子の老婆。
映画は若かりし頃の設定。まあ、それで良かったかも。ダコタ・ジョンソンの魅力に異論ナシ。ジャケットにジーンズ姿がカッコいい。
時代設定も2000年代初め。なので、トビー・マグワイア版スパイダーマンのマルチバースではないようだ。現MCU版のマルチバース。
キャシーの相棒に、同じく若かりし頃のベンおじさん。あくまでキャシーとは最も頼れる相棒。だってベンおじさんにはメイおばさんが。が、今回メイおばさんは登場せず。まだ出会う前…? 代わりに妊娠中の妹が。名前は公表されなかったが、お腹の子は言うまでもなく後の“彼”だろう。
“スパイダーマン・ユニバース”だけあってリンクネタあり。でも、ちと辻褄合わないような…?
スパイダーマンネタは他にも。
未来が見えると言っても、世界や歴史が見えるのではなく、直近身近で起きる危機の予知。
ある時、3人の少女が黒いマスクとスーツ姿の男に襲われ、殺されるのを“見る”。
その3人の少女こそ、実写版ではまだ未登場だが、後のスパイダーウーマン/ガール。
ジュリア、アーニャ、マティ。
原作コミックではジュリアは“2代目マダム・ウェブ”に。演じるのは『恋するプリテンダー』もヒットし、今ブレイク中のシドニー・スウィーニー。ちょっと引っ込み思案で、眼鏡&制服姿に萌え。
まだ何も知らず、スーパーヒロインでもない3人。普通の“訳あり”のティーンエイジャー。
その3人を助ける事になるのだが…、キャシーも心開くのはベンくらいで、人付き合いが苦手。相手に時々要らん事を言ってしまう。
救命士でありながら正義感溢れる性格とは違うヒロインと、個性バラバラの3人のティーン。
助けたのにニュースで誘拐犯と間違われる。年頃のティーンに手を焼きながらも、次第に…。
そんな4人のやり取りと逃避行しながら、一連の謎や出来事や事件を解明しようとする…。(←ここがサスペンス・ミステリーなのかな…?)
キャシーには何故そんな能力が…?
母に由来する。
身重でありながら、アマゾン奥地で特殊な力を持つクモを探していた。見つけるも、相棒だった男に裏切られる。
瀕死の重傷の母。助けたのが、クモの力を宿した部族“ラス・アラニャス”。
絶命直前クモに噛まれ、その特殊な能力がキャシーへ。
キャシーは長らく母が理解出来なかった。何故身重でアマゾンへ…?
やがて母の真意を知る。難病を持ったまま産まれてくる娘。治療の術はナシ。そんな時、特殊なクモを知り…。
それによって娘は何かを背負うかもしれない。ラス・アラニャスからの言葉。
大いなる責任を担う者は、大いなる力が宿る。
ベンおじさんのかの名台詞。逆説のようでもあり、通じているようでもある。
巡りに巡って、運命の糸を手繰り寄せて。
母から娘へ。その力でキャシーは3人を。
そんな4人…いや、実質は少女3人を狙うのは、エゼキエルという男。キャシーの母のかつての相棒であり、裏切りクモの力で特殊能力と富を得た。
スパイダーマンのようなブラックスーツ。スパイダーマンさながら壁をよじ登り、天井を這う。一定の超人敵な強さも。
その力と部下の天才ハッカーの監視システムで3人を追う。
何故3人を狙うのか…?
その理由も含め、ここから難点指摘が多くなるのでご勘弁を。
エゼキエルは悪夢を見る。いつか分からないが、スパイダーウーマン/ガールとして覚醒した3人に殺されるのを。
殺される前に殺してやる。
所謂“ターミネーター的”だが、何だか動機がショボい…。
特殊な力を持ったエゼキエルに、まだ力をコントロール出来ないキャシーとまだヒーローじゃない3人が立ち向かうというのがアクションの見せ場なのだが…、特筆すべきものは無く、エゼキエルの最期も呆気ない。
『モーリタニアン』で熱演したタハール・ラヒムがステレオタイプな悪役で残念。
今回の事件と予知がワールドワイドや大スケールでもないので、何かこぢんまりとして物足りない。ツッコミ所も多々。警察にマークされてるのに、よう飛行機でアマゾン行けたもんだ。
お馴染み“ビギニング”なので致し方ないが、ラスト、キャシーは原作設定通りの盲目車椅子になり、3人も運命を受け入れる展開で終わっても、盛り上がりに乏しい。
つまらなくはなかったが…、ちと今一つ。
SSUは『ヴェノム』はそれなりに面白いが、『モービウス』や本作は不発感漂う。案の定、興行・批評共に振るわず…。
今年はもう一本、『クレイヴン・ザ・ハンター』が控えているが、果たして…?
ダコタ・ジョンソンも後のインタビューで不発は分かっていたし、もうスーパーヒーロー映画には出ないとも。じゃあ、続投どうするの…?
不安続く。“シニスター・シックス”まで結成出来るのか…?