劇場公開日 2024年2月23日

「アメコミ映画は星5つ! しかも観客自身に予知能力を付与!?」マダム・ウェブ 横浜太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0アメコミ映画は星5つ! しかも観客自身に予知能力を付与!?

2024年2月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

単純

幸せ

※映画化されたことがないアメコミキャラの作品ということで、それだけで無条件で星5を付けております。

「ミステリー」とうたいながら、これほどまでにミステリーになりそうな要素を、片っ端からご開帳し、先回りして説明してしまう映画もなかなかないのではないだろうか。。

この人って何なの? とか、こんな事態になった理由って何なの? といった、ストーリーの主な謎要素は序盤で触れられるため、ミステリーが思った以上にない。。
(最後まで観ると、主人公と母の関係性にまつわる秘密があるにはあったが、それはもうちょっと序盤に強調しておいてもらえたらなぁ……もったいないなぁ……と思わなくもなかったり)

加えて、いわゆる前振りやフラグも非常に分かりやすく、例の心臓マッサージに至っては、やるんでしょ? いつ来るの? やるよね? 忘れてないよね? と逆に心配になってしまったくらい。

本当に嘘がつけない、素直な方が作ったんだろうなぁ、と作り手の人柄を想像してしまいました。

非常にうがった見方をすれば、ここまで先が読める構成にすること自体が、実は観客自身に一種の予知能力を実体験させようという、作り手側の策略なんではないか!? そんな気分すら生まれてしまいました。
(ごめんなさい。イヤミではないんです……)

とはいえ、だから駄作ということではなく、「予知能力」という、映像化するには難しい題材を正面から真摯に描こうとしていることはしっかり伝わってくる内容になっており、序盤で主人公が戸惑いながらも能力に気づいていく展開は、惹き込まれる部分もありました。
(ただ、主人公が見ている予知を視覚化すると、観客としては同じシーンを二度見せられることになるため、どうしてもダレてしまうのは否めず、この辺りに予知能力者本人を主人公にする難しさも感じられた次第)

また、主人公のダコタ・ファニングはチャーミングだったし、若きチャーリーズ・エンジェルかのような三人娘も魅力的。加えて、観ている間はまったく気づきませんでしたが、ザ・リバーの記事によると、主人公の同僚のベンは、かのピーターパーカーのベンおじさんという設定のようなので、そういった点でも味わい深い作品。

そりゃ、主人公に対しては、序盤でさっさと警察行きなさいよ(不法滞在の話を聞く前)とか、三人を山に残してメモ帳取りに帰るのはどうなの? とか、ペルーに行っちゃうのはもっとどうなの(そもそも警察に追われてたんじゃ?? しかも山奥でノースリーブだし)? とか、いつまでそのタクシーを我が物顔で乗り回してるの? などなど、言いたいことはありますが、直接的な暴力以外の能力をもったヒーローものという、新機軸の作品が味わえました。

ヴィランは人間味が薄く、物語上の装置といった感は否めませんが、観ようによっては、ジェームズ・ガンが製作総指揮を務めた『ブライトバーン』のように、あちらはスーパーマンが闇落ちしていたら? という設定だったのに対し、本作では闇落ちスパイダーマンに追われる恐怖が疑似体験できる、とも言えるかも。

とにもかくにも、観終わったあとで、あぁだこうだと語りたくなる作品だったのは間違いありません!

横浜太郎