マンガ家、堀マモルのレビュー・感想・評価
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幽霊と逢う為には
マンガ家、堀マモル
ゴーストを失った、抜け殻のような漫画家。しかし描かれた漫画の登場人物は、皆魅力的な表情をしている。
見知らぬ似ても似つかない、女性を含んだ3人の幽霊。ああ、彼はスランプに陥ったことを理由にして、これからは幽霊の口述筆記をして漫画を作るのだと。そのやり方が、漫画家掘マモルなのだと、呆れさせられる。
しかし、その後のキャンドルナイトのシーンで、明確に自分の過去を、作品として昇華する態度が明かされる。
想い人には、思い出と作品の中でしか会えない。その一貫性を保ちながら、登場人物に、漫画家の表情が重なっていく。
結局のところ、「話せなくても良いから、顔だけでも良いから、ここに見せに来て欲しい」という言葉に結実している。これは紛れもなく、表情の映画だからだ。
マンガ家ファンタジー
幽霊だったのは春だけでしたね。
最初の幽霊3人が実は堀真守自身の妄想であり、
予告などがあえてのミスリードというのは
良かったと思います。
堀真守が過去から今までを見つめなおし、
想い人の春への気持ちに折り合いをつけ、
これからの未来を前を向いて歩んでいく話ですが、
予想していた作品と全然違い、
私は後半泣きっぱなしでした。
ストーリーの紡ぎ方も実に秀逸で、
見事に映画世界に引き込まれていきました。
堀真守と春の本音、
映画内表現では はらわたを抉り出す、
この軸で一貫して描いたからこそ、
心の琴線に触れたのだろうと思いました。
俳優人が素晴らしかったです。
坂井真紀と三浦貴大が良い味を出していましたね。
小さな世界線で丁寧に描かれていて
うまくファンタジーに仕立てていて、私は好きでした。
とどきましたぞ!
感想をうまく文章にできないので、ひとこと、
とどきましたぞ!!わが心に
といった感想です。
ハリウッド映画の金儲け主義的な映画に食傷気味だった。年のせいか、脂っこいものが食べれないのと同じ感じで、心は拝金主義、ヒット至上主義的な作品を受け付けなくなってきた。
そこへこの映画である。まったく、儲けようとする気はないでしょう。儲かる筈がない。
ただ、撮りたいという情熱だけで、撮った作品のような気がする。
今日観た映画館の来場者、私を含めて4人だよ、儲かるわけないよね。
エンドロールを見ると、本当に大勢の人間がかかわっていが、これだけの人間を結集する力というものはどこからくるのか。
カネになるからなどと考えている人は、一人もいないだろう。いたとしたら相当おめでたい。
日本映画の斜陽が言われて久しいけど、このような映画がつくられていく土壌があるのならば、独自の映画文化が花開くのではないかとなどと思ってしまった。
いいじゃないの日本の映画。
微力ながら応援いたします!!
石
男女間の恋愛ものではなかった😰
三浦貴大があまりにもいい先生役でちょっとコケた。
進路指導の先生役は室井滋???
あの世に引き込まれそうな瞳が印象的だった映画「六人の唄う女」に出てた桃果さん。
主演の山下幸輝さん、竹本千代さんもいい役者になりそう。
先に行ってしまった友人を思い出した。
今月はちょうど三回忌の月命日だった。
そんなことやっぱりあるんですよね。
親に遠慮して育ち、空気が読めなくて、勇気がなくて、いつも一緒にいたのにちっとも有り難さに気がつかないちょっとダメな男の物語。
託された石は重いかもしれないけど、やっぱり持っていてほしいンだね。
(一緒にいるから)頑張りなよ。
って言われた気がした。
桃果さん良い! 槇原敬之のエンディング曲良い!
「唄う六人の女」を観て桃果さんに魅せられて、桃果さんの出演作ということで観に行きました。
おじさんが観るような作品ではないと思ったけど、年配の男性客も多かったです。
お客さんの多くは若い女性で、作品にシフトしてるか、あるいは山下幸輝さん目当てか。
桃果さんは期待を裏切らず魅力的で良かったです。
作品内容は皆さんがお書きになっている通りで、不意に何気に感動しました。
エンディングの槇原敬之さんの歌声と曲がさらに後味を良くしました。
良い曲です。良い映画を観たな、という思いにさせてくれます。
その時間を過ごすだけでもお金を払って観る価値があると思います。
もう一つのルックバック
お話の骨格には「またそれか」と感じる部分はあるが、『ルックバック』にどこか通じる「子供の頃から夢見て来た漫画家への道」というテーマの描き方に瑞々しさが感じられ、結局最後にはグッと来てちょっとウルウルしてるんだよな。
思うような漫画が描けなくなったマンガ家に、3人のユーレイたちが自分のことを語ります。話を聞き自分を見つめ直した先には、どんな世界が広がっているでしょうか。
公開中の作品リストを眺めていて、ある日突然その作品が目に
留まってしまうことが時折あるのですが、そのパターンです。
「マンガ家+ユーレイ」というキーワードのお話の内容が気に
なり鑑賞することに。
鑑賞中。
スランプのマンガ家が、部屋に出る子どものユーレイ達から
” 自分達の話を作品に描けば? ”
と言われる。
このままではマンガ家としての将来は行き詰まり
先に進めなくなる。そう意を決し、
3人の子どもたちの話を聞き取って漫画にしていく。
そんなお話です。
■一人目は小学生。
” 母親がスナックだから ” と同級生から避けられているようだ。
この頃、好きな漫画作品を通してハルと出会い親密になっていく。
ハル学校に持ち込んだ漫画の本を、同級生が見とがめ取り上げよ
うとするが、割って入り取り返す。 …が、水没。あら
この子の初めての仲間であり、共感者を得る。
■二人目は中学生。
ゴーイングマイウェイな中学生である。感性も変わったモノがあり
公園での写生のとき、木のコブが猿の頭に見え、観察したりする。
クラスメートが声をかけても耳に入っているのやら。
猿のことを調べようと図書館に行った際に、絵を褒めてくれた教師
と出会う。自分が描いた猿の絵をブレゼントしたのだが、その絵を
教師が無断で展覧会に出してしまい、入選する。 おお。
なのにこの少年、無断で出品されたことに納得がいかない。
自分の絵は、誰かに見せるために描いているのでは無い と
言う少年。
” 自分だけの世界に引きこもるな ”
” 広い世界に出て行かないと ”
そう諭してくれた教師は、その後すぐ学校を辞めた。あら。
何のために絵を描くのか。一つの答えらしきものを得る。
■三人目は高校生。
女子高生のユーレイだ。そしてもう一人女子高生が居る。
漫画を書く仲間のようだ。
友人が話を作り、ユーレイが絵を描くという合作スタイルだ。
その日もまた、友人とマンガの話。
友人が、新たに考えたストーリーを語りかけてくる。
” どう? 描けそう? ”
” 覚えられない。ノートにまとめて ”
そんなやり取りを交わす日が、この後も続くと思っていた。
卒業後の進路を決めなければ時期に差しかかる。
” 漫画を描き続けたい ” そう熱く語るユーレイに対し
” 私は就職するの ” と返すハル。 … ええー。
パートナーの喪失。
後に残るのは、それでもマンガ家になりたいという想いと、
手渡された「新しいお話」の書かれたノート。
◇
三人から話を聞いてそれをマンガにしながらも、
マンガの新人賞を取った時の、出版社の担当者と打合せを繰り返す。
” 新人賞を取った作品は面白かったんだがなぁ ”
暗に今の作品はダメだと言われているようなものだ。
何かが足りないんだよ とも再三言われて耳にタコ。
その担当者が、三人の話を元にした作品を読んでこう言う。
” 3つの話をつなぐ、もう一つのストーリーが必要だ ” と。
◇
ある家を尋ねる主人公。
三回忌に来れなくてすいませんでした と頭を下げる。
ハルは病気で亡くなっていて、二年が過ぎていた。
そのハル。実はユーレイとなって主人公の周りにいたりする。
主人公の外出後の部屋に現れては、原稿を覗き見している。∂_∂
マンガを書く理由・情熱・そして秘めた後悔の念。
それらを確認し、吐き出し、見つめなおすことが必要だ と
亡くなった今も、主人公のことが気になっているのだ。
◇
えーっと このお話。
鑑賞中はストーリーの展開にいまひとつ乗り切れない感じが
していました。・-・;
鑑賞後に思い出しながらまとめているのですが、途中までは、
3人のユーレイの話がバラバラで、まとまりに欠ける気がして
いたのです。
それがラストの10分くらいで、3人のエピソードとハルの想いと
が束ねられ、主人公がこれからもマンガを描き続けるための動機
付けになっていく過程がファンタジー混じりに描かれ、きちんと
収束しました。
そう、三人のユーレイは、過去の主人公たち。
そのユーレイたちを、今の主人公に引き合わせたのは、たぶんハル。
ユーレイとして登場する小中高の子たちは、それぞれが
「主人公が過去に残してしまった後悔」であり、
振り返りたいのに、怖くて直視出来ないでいる記憶たち。
それぞれと向き合って、死に別れてしまった盟友との想いを
この後も共有し続けていける場所が出来た、という事なのか。
そう考えれば納得もできるし、
そう考えないとあの結末も落ち着かない。そんな感じです。
粗いかも と感じた話でしたが、ちゃんと収束しました。
途中で寝なくて良かった。・_・; (…これも本音)
◇あれこれ
■ハルとの中学校時代
中学校では疎遠だったのでしょうか?
ひとりぼっちで「公園の猿に見える木」をスケッチしている姿が
印象的で、仲間が一人も居ないかのような描かれ方でした。
けれど、高校生ユーレイ(=ハル)との会話の中で
「将来も二人でマンガを描いていこう」
そんな約束を交わしていたことが会話の中で出てきていたので
中学時代もハルとの交流は続いていたと思うのです。 はて。
■ハルの遺した原作
それを使って応募した作品が新人賞受賞。…かと思われます。
そして、それを報告しにハルの家に行った日に、母親から
ハルの死を知らされる。うわ。一番キツい場面…。
ハルの原作を使ってマンガを描くことは、ハルとの間では了解
の事だったのだろうと思うのですが、主人公の頭の中ではその事
がず~っと引っかかってきたような感じでした。
新人賞に応募する際、作者を自分一人として出品してしまっていた
ということなのでしょうか?(そうなら確かに後ろめたい感あり)
けれど、新人賞を取った報告にハルの家に悪びれず来ていたし…
”ハルは気にしてないから ”
とハルの母親が言うのも違和感…でした。
◇最後に
3人目のユーレイだけが女性でした。
そのことに何か意味があったのかなぁ と考えています。
ユーレイを男にしてしまうと、ほぼ現在の主人公と同じ容貌にし
なければ辻褄が合わなくなるので、女性にしました …と単純に
そういうことなのでしょうか。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
期待せずに見たけど
見る予定してなくて飛び込みで見ましたが良かったです!
心の中の闇に明かりが灯ってほっこりできる優しい映画だと思います。
原作者でもあるsetaさんの歌う主題歌の「さよなら僕ら」も槇原敬之さんの歌うエンディングテーマの「うるさくて愛おしこの世界に」も作品の世界をぎゅっと濃縮していて素晴らしく、特にエンディングは槇原敬之さんの歌声に感動しました。
夢を追いかけてる人、今に挫折しそうな人、大事な人と別れざるおえなかった人、そんな人達はじめ老若男女問わず多くの人に見てもらいたい、そう思える映画です。
再生の物語
新人賞を取って以来、描きたいモノが分からなくなっているマンガ家の前に現れた3人の子供の幽霊。
これは再生の物語。
観ていると、幽霊が過去の自分の分身だと言うのは読めるのだが、そこを重要視せずに、自分を分岐させて逃げていたところから、もう一度見つめ直す事の重要さを描いていた。
「ルックバック」程、切迫した話ではないが、ふんわりとした良い映画。
何となく「1/11」を思い出した。
#マンガ家堀マモル
#堀マモル
意外と胸にジーンとくる
漫画家を主人公とした物語で、けっこうひねりを加えたストーリーになっており、同じシーンが何度もくるような感じでした。
漫画家の頭の中から離れない葛藤を描いており、後半は胸にジーンとくるシーンが何回かありました。
「ルックバック」を思い出すような話なのですが、こちらの映画の方がリアリティを感じ、心に響いてくるものがありました。
山下幸輝さんと桃果さんの新鮮なコンビの演技も見所です。
分担作業ができなくなったマンガ家
ファンタジー感は残るものの、意外性のあるストーリーで涙しました‼️題名だけみると消去かもだが、おすすめ
マンガ家志望の男と、脚本が上手い女の話とだけ もう一度見たい‼️
エンディングの槇原の歌も良い感じです❕
うるさくて愛おしいこの世界に
マンガ家としての活路を見出していく作品という事で気になったので鑑賞。
「バクマン。」でマンガ家の苦しみを知り、「タイムパラドクスゴーストライター」で色々大変なんだなぁと作品内外で思い知り、「ルックバック」で濃厚な作品作りを味わってとほぼジャンプで見知った世界とはまた違うものだなと今作を観て思いました。
序盤は幽霊が見えるマンガ家が幽霊を通して自分の作品を形成していくという感じのオムニバス形式で進んでいくのかなと思ってみていましたが、どうにも解決したのかしてないのか宙に浮いたような感じで首を傾げながら見ていましたが、物事をマンガにする途中で止められてからガラッと作風が変わったように思えました。
親との距離感だったり、先生との距離感だったり、友達との距離感だったり、よくよく考えたら伏線だったなぁと思うところを淡々と描いていたのが後半になって活きてくるという形の作品は珍しい気がします。
病気で亡くなった親友の作品を自分で手がけた真守が過去と向き合って、やり直せないであろう過去はマンガという形のコミュニケーションで乗り越えていくというのも「ルックバック」に通ずるものはあれど、幽霊との対話という面で描かれるのも個性があって良かったです。
幽霊たちのシーンと真守が重なってストーリーが地続きになって繋がっていき、あの時の判断や対応はどうだったのかとか自分自身の人生にも投影してしまうようなシーンが多かったのも心に突き刺さるものが多くありました。
母と子の信頼感が味わえるシーンがたまらなく大好きなので、実家に帰ってきておにぎり食べていくだけのシーンがたまらなく良かったです。
主人公の性格はそのままなのに序盤と終盤で全く違った印象を持てるという未知なる感覚を味わえてクセになる作品だなと思いました。
3人監督構成という不思議なスタイルだったからこそ撮れた作品だったと思いましたし、物作りをする人間に送る一つのエールのような作品でした。
鑑賞日 8/31
鑑賞時間 14:25〜16:30
座席 H-10
心に残る優しい作品
解説には三人の幽霊とあったので、「三人のゴースト」風の作品と思ったが全然違った。三人の幽霊?が出てきたことや守が漫画を描けなくなった訳、幽霊の正体が中盤になって分かる脚本が上手い。わざわざ母が握るおにぎりを食べに行くのも、食べた感想も重要なシーンの一つ。回想シーンの雰囲気がよく、映像もキレイだった。
経験の浅い俳優や子役の演技がかえって自然に見えてよい。愛役を竹原千代にしたのも納得する。岡部たかし、坂井真紀、三浦貴大、占部房子など、実力ある俳優の演技がストーリーを引き締め、竹中直人もチョイ役で出る。
映画館内にポスターがなく、見た回の客は私を入れて四人。上映終了になる前に、多くの人に見てほしい作品。
春役の桃果と子役も可愛かった。
主人公のキャラが微妙に安定していない? でも悪くないです もう少し...
主人公のキャラが微妙に安定していない?
でも悪くないです
もう少したくさんの映画館でやると良いですね
あと、槇原敬之の曲が合っていた
若い人には響くかも。
レビュー評価が高いのと邦画の若手監督を応援したい気持ちで見てきました。
題材からしてファンタジー要素が強いストーリーと思っていたら、私小説のような雰囲気で全体的に重めですが内容は軽め。私の歳にはどうもなじめない空気感でした。
脇役の演技達者な大人達のおかげでなんとか成立してる作品。
アニメにして「あの花」風にしたほうが感動した気がします。
おススメ度は普通よりやや下。若い人にはグッと来るストーリーかも。
丁寧な作風で、すべてを描かない「余韻」が美しい
2024.9.2 イオンシネマ久御山
2024年の日本映画(111分、G)
原作はsetaの小説『幽霊ハイツ203号』
スランプ中の漫画家が幽霊と一緒に漫画を作る様子を描いた青春映画
監督は榊原有祐&武桜子&野田未麗
脚本は林青維
物語の舞台は、日本のどこかの街(ロケ地は千葉県松戸市)
新人賞を受賞した堀マモル(山下幸輝、幼少期:中村羽叶)は、かつて幼馴染の佐倉春(桃果、幼少期:秋元月椛)と一緒に漫画を描いていたが、今では一人で漫画と向き合っていた
新人賞を獲ったものの、その後の作品はイマイチな作品ばかりで、編集者の林(岡部たかし)からも最後通牒を受けるまでに落ちぶれていた
彼の部屋は特殊な事情があって、電気は通っているのに照明が消えてしまうことがあった
そんな時には必ず幽霊が現れて、マモルの執筆活動を妨げてしまう
小学生の幽霊(宇陽大輝)、中学生の幽霊(斎藤汰鷹)、女子高生の幽霊(竹原千代)たちは、各々勝手なことをし出すものの、マモルが一言声を掛ければ、おとなしく消えていく幽霊でもあった
ある夜、作品作りに悩んでいたマモルは、幽霊たちから「僕たちの漫画を描いてよ」と言われてしまう
仕方なく筆を進めるマモルは、小学生の幽霊から「母親のことでいじめられてきたこと」を聞かされ、体育祭のリレー選手に選ばれたのに母親を呼ばなかったことを後悔しているという話を聞かされる
マモルはその過去を改変し、振り向けば母親が見ていた、という漫画を完成させた
その原稿は編集者の目に留まり、次は中学生の幽霊の話を描くことになったのである
映画は、この三人の幽霊が実はという展開を迎え、その背景で「いなくなった幼馴染」のことが描かれていく
春は病気がちの女の子で、そのお見舞いに来るのが女子高生の幽霊だった
彼女は春が作った物語を漫画にしていて、この女子高生は卒業と同時に春から進路を変えることを突きつけられる
応援すると言われたものの、これまでは春の物語を描いてきたので話を作ることができない
だが、そのことを心にしまったまま、春の言葉を受け入れてしまい、それが後悔として残っていた
そして、この女子高生こそがマモル本人であることが暴露されるのである
映画は春がどのようにして去ってしまったかを映画の後半で描き、春自身がどう思っていたかを母親(坂井真紀)から渡された彼女の手記で知ることになる
春はマモルが作り上げた「潜水士と人魚姫」の物語の原作者にあたるのだが、そのことを隠してきたことにも罪悪感を感じていた
彼女に黙って出版社に送ったこと、それが評価されたことなどを心の中に残していて、それを告げようとした矢先に彼女が亡くなったことを知らされてしまう
そして、マモルはそのことが言えないまま、期待の漫画家としての重圧を受けることになっていた
物語はキレイな作風で、丁寧な伏線回収が行われている良作で、同じシーンが何度も登場するが、すべて別アングルの映像になっていた
編集者や、その他の大人たちとの掛け合いも面白く、胸熱な展開が待っている
キーとなる「ある漫画家とわたし」という手記は前半できちんと登場しているのだが、母親がそれを見せるタイミングを失っていたこともわかる
そうした先にある、これを伝えないことが後悔になると悟った先の告白は、坂井真紀の表情だけで描くという秀逸な演出がなされていた
絵作りにこだわりのある作品で、あまりメディアに登場しないのがもったいなくも感じる
もし、鑑賞可能地域に住んでいるのなら、今観ておいて損のない映画と言えるのではないだろうか
いずれにせよ、ボーイミーツガール的な作品の切なさも感じられる内容になっていて、マモルの高校時代が女子高生で再現されているというのが物語の骨格になっていると感じた
おそらく春にはマモルへの恋心があるのだが、マモルの方にはそれがないか、もしくはかなり薄くなっていると思う
それがマモルが空気を読めない性格につながっていて、最後まで春が言いたくて我慢していたことは伝わっていないのだろう
その心情を「バーカ」の一言で表現するのだが、劇中の漫画でも「母親を描かずに小学生の笑顔で表現」したり、人魚姫と航海士が抱き合うこともなく、その表情と言葉で描いている
この余韻の残し方が映画と劇中作品でリンクしているところが面白くて、ほぼ全ての心情をセリフにする陳腐なものとは一線を画している
この作風が一般受けするのかはわからないが、昨今の風潮に嫌気が差している人ならば、意外とハマるのではないだろうか
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