「未成熟さ故の近視眼(眼鏡が必要だけど禁煙して節約しないと買えない)」牯嶺街少年殺人事件 寝落ち中尉さんの映画レビュー(感想・評価)
未成熟さ故の近視眼(眼鏡が必要だけど禁煙して節約しないと買えない)
完全初見です。
以前からそのタイトルだけはよく目にしており、観る機会も幾度かありそうでなかったのですがこの度ようやく観れました。
1991年に作られた1961年の話で、2016年に4kデジタルリマスター版が作られた。ということですね。
当時の台湾における社会情勢や背景について色々話はあるのでしょうけども、細かいことはひとまず横に置いてシンプルにこの作品の印象を言葉にすると
思春期感染性メンへラによるいざこざドラマ といった感じかな。
男をとっかえひっかえしまくっている魔性の女学生にひっかかってしまった主人公の小四/張震が、家族・友人・同世代・学校・社会の狭間でもがくも救われなかった(或いは解放された)という印象かな。
思春期特有の雰囲気や心情状況は良い感じに描けているように見えました。
本作監督がショートバージョンの188分版を決定版としたのは、わかるような気がします。映像に魅かれる人ならなんとか4時間近くの236分版に耐えられるかもしれませんが、そうではない人にはあまりにも苦痛な尺ですし。
少年による殺人事件は2020年代と1991年とでは、だいぶ印象は違うのでしょうね。
このような事件に纏わる作品が戒厳令解除後 数年しか経っていない台湾で製作され公開されたというのはショッキングだったのだろうと思われます。
また過去の偉大な名作と呼ばれている作品を若い世代が触れると何がすごかったり良いのかがわからない、って場合は上記のような時代性とは別に、もうひとつ、表現がスタンダード化したり普遍化したりして派生・発展した表現が有り溢れている故に、特異性を感じづらいというケースもありますね。
画づくりについてはとても興味深いしおもしろいと感じました。
学校で笑い声の暗闇からバスケットボールだけが出てくるシーンが特に印象的でした。
アクションシーン的なところでは、ありがちなズバッシュバッバキッみたいなSEを全く入れてないのは良いですね~。
ほとんどバストアップ以上の画面を入れずに、引き気味の距離からのレイアウト映像主体なので登場人物が誰が誰だかが結構わかりづらいかな。呼ばれ方も入り乱れているし、グループ名も鑑賞後にネットで調べてようやくハッキリ認識できました(苦笑)上映中は「小公園」というのはてっきりコンサート会場とかの名称かな?(あれ?それで合ってます?)とか「217」はどれかの人物に対する暗号なのかな?とか、まったく的外れな予想の元に観てしまっていましたトホホ。
と、ここまで書いて以前に似たような感想を抱いた作品があったな~と掘り返したら『アウトサイダー コンプリート・ノベル』(1983) /movie/102440/ でほとんど同じ混乱をしながら観ていましたよ私。
アウトサイダーでも感じましたが、やたらと作中人物が売り言葉に買い言葉のやりとりが主体で、すぐ動く・手が出る とか似てますね。時代性とか国民性とかもあるんでしょうけど、私にとってはそのあたりは観ていて辛い部分です。なんで君ら、そうチャカチャカ情緒不安定なまま喋ってばっかりで落ち着いて話せないの?って
その上こちらの作品の場合、登場人物が中学生くらいなのか小学生くらいなのか高校生くらいなのか、さっぱりわからないんですよね。どうみても小学生の10歳前後でしょ、みたいな配役も混じってて。小プレスリーの子か。「ハニー」という渾名も、小明の視点での呼び方かと思ったらそうでもないと気づくのにしばらく時間がかかりました。ハニー自身もキャラクターとして不良?キッズギャング?のリーダーにしては全くそれっぽく見えなかったりで、とかく誰がどういう立場でどういう関係なのかというのがわかりづらかった・・・。
4/16の時点でパンフが品切れていて手がかりがあまり無いのですが、小明が内省人で、小四や小馬らは外省人だという構図なら、確かに小明の立場というのは台湾そのもののように見えて来ますね。現代の台湾の若者からすれば、内だの外だのというのはもはや過去の遺物のようなものでしょうけども。
私自身、台湾にはちょくちょく行ってますけど(少し前に哈爾賓を観てきました)牯嶺街ってどこだ?って見てみたら中正記念堂の側なんですね。今度寄ってみたいです。
ガジュマルの大木を見ると台湾感あります。
ラジオ→懐中電灯→小刀→ラジオ の順ですね。あ、時計もあるか?眼鏡… 寝落ちはしませんでしたよ~