ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディのレビュー・感想・評価
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なぜ今、70年代の学園もの映画?
映画館には観客が沢山いました。アメリカ合衆国本国でも評価されているようなんですが、なぜなのか私はわかりませんでした。背景が現在でないことは生徒たちの外見や部屋の雰囲気や所持物でわかったしテレビ番組で明らかでした。70年代、それも前半。当時の社会政治背景が殆ど描かれていないこと、何故今、そういう映画を作るのか、それによりどんなメッセージを送りたいのか全くわかりませんでした。ノスタルジー?こういう先生がいた時代の学校ってよかったね?
その頃まだ大人でなかった自分でも、当時はベトナム戦争、大人世代と戦後ベビーブーマーの価値観がぶつかり合った時代、今やっと浸透してきた自然保護・エネルギー問題、LGBTQ、結婚のあり方への疑問などの考え方の芽が出てきた時代、若い人達等による異議申し立てがアメリカだけでなくフランスでもドイツでも日本でもイタリアでも同時多発的に起こった時代だったとざっくりとですが理解しています。
ポール、アンガス、メアリーのそれぞれの家族、親、個人の問題もクリスマス休暇を通じて気持ちが通じ合い成長するという物語そのものには文句ありません。
誰もいないクリスマス休暇中の寄宿制私立男子校を舞台にし学校に残ったいわば隔離された3名を巡るお話。その舞台設定は外の世界や現実社会の諸問題を排除、といって悪ければきれいに漂白するにはうってつけだったと思います。
この暑い時期にクリスマスの讃美歌で始まる映画を公開するのはいろんな事情があったのかとも思いましたが、映画祭でも8月に上演、合衆国公開も10月末のようでした。気候が世界的に変動しているからなんでしょうか?昔から世の中変わってないんだよ。富める親の子どもは学校でも優遇され勉強をしなくても卒業できていい大学に進学し親のコネでさらに富を増やす、そういう仕組は昔から続いているんだよ、その証拠が現在の有り得ない程の富の格差だよ。わかった?受け入れましょ!と言いたかったんでしょうか?
新人には目を輝かせます。アンガス役のドミニク・セッサは今後が楽しみです。
おまけ
ベトナム戦争の時代だからこそ、せめて学校生活では自由に平等に、そして学問、特に歴史の大切さをポールが訴えるようなシーンありましたか?もしそうだったらごめんなさい。寝落ちしていた可能性高く記憶にありません。
居残りsavage
寄宿学校のクリスマスの物語と言えば、エーリヒ・ケストナーの「飛ぶ教室」を思い出さざるを得ない。あちらはドイツのギムナジウムの話だが、再読するたびに毎回号泣してしまう。主人公のマルティン君は本当に健気で良い子で、一方この映画のアンガス君はかなりの荒くれ者、社会規範に従う気はさらさらない(のちにその家庭的な背景が明らかになってくるのだが)。なので、その行動にはついていけないところも多々あるが、それでもラストはちょっぴり泣いた。
ポール・ジアマッティの斜視はどうしたんだろう?「教場」の木村拓哉の義眼みたいにコンタクトレンズを使用したのだろうか。
24-069
「評判通りのいい映画なのだろう」と観に行ったら、確かにいい映画だっ...
生きづらそうな先生
ハナム先生、偏屈で融通が利かないから友達ゼロ、家族さえいません。そんな先生が休暇中の学生寮監督を務めるところから物語はスタートします。お留守番メンバーは他にクリスマス休暇に家族の元に帰れない成績優秀なアンガス、息子を戦争で亡くした学食で働くメアリー。
この3人がそれぞれ持ってる淋しさは、お互い理解できるわけないんだけど、なんとなく噛み合っていくのが静かな演技でも分かります。
ハナム先生はクソ真面目で、先生からも生徒からも嫌われてるんだけど、ちゃんとそうなるルーツがあったんですね。でも理不尽な事も少しは、スルーできる能力がないと人生ってうまく立ち回れない。まだ若いアンガスは彼から、そんなことも学んだかな?ラストは勝手にそう思ってしまいました。
実は先生、あの後ちゃっかり作家デビューして印税生活してたら…なんて楽しい想像もしちゃいました。
そう、3人とも幸せになって!って応援したくなる映画でした。
心がほっこりしました。
1970年のアメリカ。ベトナム戦争(1964-1975)は米兵5万8千人が戦死(ベトナム人の死者は300万人)したが、この頃は既にアメリカにとっての戦況は厳しくなっていたという。映画でもメアリーの息子はベトナムで戦死してるし、酒場では(おそらく戦地で)右手を失ったやさぐれ男も出てくるし、生徒も落第すると軍事高校に送られことを恐れていた。
そんな背景の中のクリスマス休暇。それぞれの事情で寝食を共にするようになった3人。僅か2週間で家族のような関係になりました。様々なエピソードが心に残ります。
メアリーはこれから生まれる妹の子供を大事にしていくんだなと思うし、アンガスは実の父さんとも母とも疎遠になっていくだろうけど、頭も良さそうだしこれからのアメリカで活躍していくんだと思います。
ハナムは何と言ってもアンガスを守り退学を回避させ、自らは学校を去ることになるが、颯爽と(引越し荷物をけん引した)車に乗り込みエンディングを迎えるラストがとても素敵です。この後の人生に幸あれと祈りたくなります。
いい映画を観たあとは本当に心が温かくなります。ありがとうございました。
じわじわくる
優しい「嘘」。
寂しん坊の吹き溜まり。
脚本と役者がすごい。
毒親で気の毒
1970年12月、マサチューセッツ州の全寮制の寄宿学校で、生真面目で嫌われ者の教師・ポールは、クリスマス休暇に家に帰れない学生たちの監督役を務めることになった。5人居たのだが、4人は親の了解を得てヘリで友達の所に行ったが、アンガスは親が電話に出ず寄宿舎に残ることになった。食堂のマネージャーで息子をベトナム戦争で亡くしたメアリー、ポール、アンガスの3人が、クリスマス休暇を家族のように過ごす、という話。
堅物だった教師のポールが少し柔軟になっていくところが見所なのかも。
アンガスの母親、ちょっと酷いんじゃない、って思ったが、良い親だったらアンガスは寄宿舎に残ってなくて、ポールも残らず、メアリーだけになるから、毒親で良かったのかも。
病気で体臭がキツくそれを気にしてるポールも気の毒だと思ったが、アンガスの影響で堅物度合いが低くなった感じがするし、メアリーも気の毒だったが、最後は良かった。
極上のドラマだった。もちろん主演男優の力は大きすぎる。でも、助演女...
極上のドラマだった。もちろん主演男優の力は大きすぎる。でも、助演女優の彼女も独特のキャラクターを一人の別人格を存在させる形で演じ、高校生の彼も良かった。よく考えると最もやんちゃなのは主人公であり、だからこそ、彼女の悲しみも、高校生の彼の心も受け止められる。もとから優しいやつなのだ。
高校生の子に、こちらの目だと話しかけるシーンは素晴らしい。初めて、彼が他者に自身を見させようとまっすぐ向き合うシーン。彼がどこまで高校でもつかはわからないけど、先生に支えられたことだけは忘れないし、それは彼を支えていくはずだ。2人ともの顔がラストあたりで全く変わっていくことに驚く。酔っぱらいだった先生も、ラストで酒を口に含むだけで吐き出すのだ。人を支えた経験が先生を支えていく。人と人の関係の美しさに心打たれる。
彼女も、少しずつ前を向き始める。
セリフも極上だった。
これからの生き方
全寮制の高校にて、クリスマス休暇で周りが家族と過ごす中、寮に残ることとなった訳ありの3人の物語。
素行にやや問題があるものの、成績は悪くはなく、実は優しい一面をもつアンガス。堅物で嫌われ教師のハナムとドンパチしながらも、パーティーに行きたがったり、スケートで手を振る姿を見るうちにとても可愛く見えてくるから不思議…(笑)
そして、これまた哀しい過去をもつメアリーの物語も絡み、コメディ要素も含みながら話はシリアスなドラマに変わっていき…。
登場人物がそれぞれ辛い過去を持ち、それを引きずりながらも心を開いていく様が素敵ですね。
彼らにそんな背景があったとは…。
他人を不幸にする嘘でのし上がる者もいれば、他人を守る為の嘘で失脚する者も。
しかし、歴史は現在の説明!と言いつつも、これからの生き方に過去のシガラミを否定してみせる姿…きっと彼らは未来を見つけていけるハズ‼
強いメッセージと希望をもらえる作品でもあった。
そんなこんなで、今年観た中でもトップクラスの本作ですが…
面白いのは良いけど、あと一歩で涙が零れそう!…というところで漏れなく笑わせにくるのがある意味残念だったかもw
まぁでもそこが本作の良さですかね♪
そして同僚の姪っコちゃん小悪魔で可愛すぎ…もっと出番増やしてくれや!
これからの彼らに幸あれ‼
知らないところ
うん、いい映画だった。
穏やかで優しく、クリスマスにピッタリな作品。公開時期真逆過ぎ。70年代風にデフォルメされた配給・制作会社が何とも可愛らしい。MIRAMAXはこっちの方がいいんじゃない?映画本編も昔ながらのフィルムスタイル。これ、逆に現代風のほうが違和感あると思っちゃうくらいハマってた。
こういう映画はシネコンよりミニシアターで見たい。上映館少ないのにこの映画館でやってたことが奇跡だけど笑 度数高めのお酒を片手に、塩っけの強いナッツでもつまみながら。2回目見る時はしっかり時期合わせて、自分スタイルで見ることにしよう😁
見えてる部分だけがその人の全てでは無い。誰しも過去を持っていて、誰しも知らないところがある。偏見って良くない。良くないと分かっていても、目で見える範囲でその人を判断しちゃうのが人間という生き物であって、見えないところにまで目を向けるって、なかなか難しい。堅物教師・ポールのひとつひとつの行動に心打たれたし、堅物の皮が徐々に剥がれていく様に色々と思うものがあった。ポール・ジアマッティ、すごく良かった。。。
盛り上がるまでに結構時間を要していて、中盤若干退屈なのだけど、2人が仲を深め、互いのいいところ、わるいところを認めあっている姿は何時間だって見れる。評判が良すぎるが故に劇的な展開を期待していた自分がいたが、それほど驚きはなく、物語としては割と普通。ただ、味付けが非常に上手かった。期待は禁物。でもいい映画です。メアリーのような女性からしか得られない心の安らぎってあるよね...。
はっきりとモノが言える関係性の素晴らしさ
ホリディに学校で過ごさねばならない3人、
先生のポール(ポール・ジアマッティ)、生徒アンガス(ドミニク・セッサ)、
そして料理長メアリー(ダバイン・ジョイ・ランドルフ)の織りなす人間ドラマが
実にあったかくて心に沁みました。
先生も生徒も料理長もいろいろと心に抱えているものがあって、
健康じゃないんですよね。
であるがゆえに、言葉がキツかったりするんですね。
それは先生と生徒が同じ薬を飲んでいることがわかったり、
料理長の息子が戦死していたりするので、いろいろと事情を抱えているんです。
だからこそ、ここ3人が心を通わせていくというのは理解できるんですよね。
ポールは厳格な先生でありながら、自分の経歴に嘘をついていたりする、
でも、そこにアンガスは共感できたりするんでしょうね。
3人がボストンへ旅行することによって、
ポールとアンガスがお互いのダメなところを言ってもらうというシーンは
成人発達段階が高くないと、到底受け入れられないのだと思うのですが、
信頼関係ができてくると、それが言える。その関係性こそが人生の宝だなと思いました。
ラストのポールの言動が実に素晴らしく、それでアンガスを救う、
でも自分は去らなければならなくなってしまう、おそらくはそこまでわかっていての行動ですから
感動もひとしおですし、人って自分次第で変われるんだなということを
あらためて学ばせてもらったように思います。
どこがオススメ!?と聞かれると、なかなかこたえづらい作品ではありますが、
ちょっとビターながらも、鑑賞後感が素晴らしい作品です。
できれば、クリスマスシーズンにもう1度観たいですね。
クリスマスムービーの傑作がまた一つ誕生
世の中が盛り上がるクリスマスに、訳あって寂しく過ごすことになるシチュエーションはクリスマスムービーの定番とも言えるが、ヒューマンドラマの名手、アレクサンダー・ペイン監督は1970年のボストンを舞台に、きめ細かく人間を描き、笑いあり涙ありのハートウォーミングなクリスマスムービーの傑作を作った。
1970年の冬、米ボストン郊外の全寮制ハイスクールのバートン校。
クリスマス休暇で生徒も先生も学校を去っていく中、生徒のアンガス(ドミニク・セッサ)は家族で旅行に行く予定だったが、母親が再婚相手との急な予定を入れてしまい学校に残ることになってしまう。
学校の留守番担当の古代史教師のハナム(ポール・ジアマッティ)とこの学校に在籍していた息子をベトナム戦争で亡くした料理長のメアリー(ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)の3人のクリスマスの出来事を丁寧に描いていく。
教師仲間にも生徒にも嫌われているハナム、心に傷を負っているメアリー、賢いが家庭の事情に反発するアンガスとそれぞれ孤独を抱えた3人が次第に心を通わせていく展開が見事。
とりわけメアリー役のランドルフの悲しみを抱えながらもだんだんと気持ちを解放していく演技は胸を打ち涙を誘う。ランドルフはこの演技でアカデミー助演女優賞を獲得。
また、アンガス役のドミニク・セッサは実際にロケで使われたハイスクールの生徒で、この役に抜擢され見事に演じきったというから驚きだ。
1970年をリアルに表現するフィルム調の質感、実際のハイスクールを使って全編ロケで撮影したという冬のボストン郊外の情景、BGMの70年代のポップソングやクリスマスソングの使い方。ベトナム戦争の暗く重苦しいアメリカの時代背景。
地味ではあるが繊細なドラマを重厚に紡いでいく手腕が見事としか言いようがない。
クリスマスにまた観たくなる心に残る映画だ。
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