ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディのレビュー・感想・評価
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こんなクリスマスも素敵だなと思わせてくれる
今年のクリスマスシーズンに観るのだと決めていた作品。予想通り心が温かくなる作品だった。
クリスマスは笑顔と愛が溢れている1日だからこそ、人によってはいつも以上に孤独感を感じやすい日でもあるよなと思う。
この作品は
嫌われ者の教師ハナム
問題児生徒のアンガス
息子が亡くなった料理長のメアリー
の3人が、全寮制の高校で皆が年末年始の2週間家族のもとへ帰る中、高校に残り共に過ごす話。
最初は最悪な2週間の始まりかと思いきや、徐々にお互いの過去や考えや心のうちを知っていくことで、孤独だった3人が心を通わせ寄り添い合う2週間になっていく。
私も学生時代大嫌いな教師はいたけれど、こうやって上辺じゃない人間同士の会話をしたら、少しは好きになっていたのかな。
ハナムの最後にとった行動が本当にかっこよすぎて、胸打たれた。
劇中何個か胸を打つセリフもあり、脚本が素敵。特にハナムがなぜ歴史を学ぶ必要があるのかについてアンガスに語ったシーンにグッときた。このシーンは是非観てほしい。
クリスマスを代表する映画作品は多々あるけれど、キラキラのクリスマスから少し距離を置かれた人たちに優しく寄り添ってくれる作品だった。
オススメです!
世代や立場を超えた魂の触れ合いから生まれる希望
70年代当時のミラマックスのロゴで始まる、あたたかい音楽と、人の不器用さを包み込むように描き出すストーリー。誰もが心の底にそっと隠している弱さや悲しみに優しく触れて、慰め励ましてくれるような作品だ。
キリスト教圏では、基本的にクリスマスは家族と過ごすものだ。人の生き方が多様化した現代はいざ知らず、1970年のクリスマス休暇に家族の元に帰れないというのは、現代の日本人の私が想像する以上に疎外感や孤独感を覚える状況だったのではないだろうか。
しかもアンガスは、帰れるつもりでいたのに終業日当日に母から帰ってこないよう連絡があったのだからかなりきつい。資産家と再婚した母親は、毎年クリスマスディナーは取り寄せで(他の場面で愛情を伝えていればそれでもいいのだが)、クリスマスグリーティングには現金を送りつけるのみ(これはいけない)。
嫌われ者の教師ハナムは、学校に大口の寄付をしている議員の息子に対しても成績に色をつけない信念の持ち主だが、クリスマス休暇の過ごし方にさえ揺らがない信念を持ち込む堅物でもある。
序盤、2人の相性は見るからに最悪だ。ハナムは休暇中なのに規律を強要し、アンガスは勝手にホテルに予約の電話をしたり、体育館で暴れて肩を脱臼したりする。だが、事務員のクレインのホームパーティーに行ったりメアリー手作りの料理でクリスマスを過ごすなど、小さな出来事を共にするうちに相手の本音や弱さを知り、心の距離が近づいてゆく。
本作が銀幕デビューのドミニク・セッサが、あの年頃の危なっかしさや不安をリアルに伸びやかに演じて、経験豊富なジアマッティやランドルフに負けない存在感を示していたのが印象的だった。
彼らが互いに少しずつ心を許してゆく過程がとても自然で、微笑ましかったり切なかったりして魅了される。それに伴ってそれぞれの悲しく重い背景も明らかになってゆくのだが、不思議と物語自体の印象がヘビーなものになったりはしない。堅苦しさや意地を張った態度の内側が見えてくると、表面的な印象とは違うその素直さや人間臭さ、ぬくもりに目が潤んだ。
息子を亡くしたメアリーは、アンガスとハナムを繋ぐ存在でもあった。クレインのホームパーティーで、息子の死を嘆き心を乱したメアリー。アンガスはハナムを呼びに行って2人で彼女のそばにいた。翌日のクリスマスにメアリーは料理の腕を振るう。食卓を囲む3人にはどこか気の置けない、擬似家族のような雰囲気がうっすらと漂い始めていた。
このかすかな絆が芽生えたからこそ、最初は亡くなった息子を思って学校にとどまっていたメアリーは、新しい命を宿す妹の元を訪れる決心がついたのではないだろうか。
一方、「バートン・マン」の精神として嘘をつかないことを重んじていた堅物のハナムは、アンガスに振り回されるうち、次第に言動が柔軟になってゆく。アンガスが自分と同じ向精神薬を服用していることや実父の真実などを知るにつれ、ハナムの心の殻が剥がれていった。
そして最後に、アンガスを迎えに来た両親の前でハナムは信条を曲げ大きくて正しい嘘をつき、アンガスの前途を身を挺して守った。この短くて濃いクリスマス休暇で、彼は鶏小屋のはしごのようだった人生に形式的な信念よりも大切なものを見出し、変わったのだ。
心和むあたたかさと、メインの3人それぞれに違う色合いで滲むペーソスが胸に沁み入る本作。ラストシーンを迎える頃、私はある作品を思い出していた。マーティン・ブレスト監督作品「セント・オブ・ウーマン」(1992年)。珠玉の名作という表現がよく似合う作品だ。
2作には共通点がある。アメリカの寄宿学校の生徒が、クリスマス休暇に帰省せず過ごす間に体験するエピソードであること。青年と老年期を迎えた男性が、孤独な環境にあって邂逅し、互いの人生観に影響を与え合う物語であること。学校の同級生が金持ちのクズであること(笑)。年長男性が青年の未来を守るクライマックス。車が遠くへ走り去るラストシーン。
だが本作は、メインキャストのキャラクターや関係性の違いによって、違うテイストの物語になっている。「セント・オブ・ウーマン」で、スレード中佐とチャーリーは親子のような関係になったが、ハナムとアンガスの間に醸成された関係性は友情に近いものに見えた。
根底で共通するのは、人が世代を超えて人生の苦楽の一片を共有し相手を認め合う時、そこに見えるのは純度の高い魂の触れ合いであり、その絆が生む希望は心に響くということ。その過程を丁寧に紡げば、必然的に見る者を癒す名作になるのだ。
留学中の記憶を刺激された
疑似家族関係を描く秀作。クリスマスシーズンに全寮制の高校で、帰る家のない青年と、家族のいない教師、ベトナム戦争で息子を失った寮の料理長が束の間のホリデーをともにする。生徒は生意気な問題児だった。ことあるごとに教師にぶつかる。教師の方は気難しい性格で、生徒たちから嫌われている。ホリデーシーズンにも関わらず、寮での生活を厳しくルールで縛ろうとする教師に生徒はうんざりするが、料理長が緩衝材となっていって、打ち解けていく。
アメリカ人にとってのクリスマスシーズンは家族の時間。家族を持たない人はその団らんの輪を築けない。団らんの輪を築けない人同士がちょっとデコボコした輪を築く物語だ。筆者もアメリカ留学時代、その空気はちょっと体験した。学生はみなクリスマスには実家に帰るが、留学生はわざわざ帰らないので、クリスマスは孤独になる。やることなく手持ち無沙汰で一層の孤独感を感じたものだ。
クリスマス映画として異色の作品だと思うのだけど、誰にとっても大事なことが描かれていて、心が温まる素晴らしい作品だった。
前向きなノスタルジーの成果。
1970年代というのは、映画でもポップ・ミュージックでもある種の黄金時代であり、ノスタルジックな憧憬の対象で有り続けている。ソダーバーグ、リンクレーターあたりに顕著だと思うが、アレクサンダー・ペインが70年代趣味を全開にしてきたのがこの作品。音楽のチョイス、映像や編集のスタイルなど、形から入れ!とばかりに、もう70年代にできた映画ですと言われても信じそうになるくらい、細部まで時代性を表現している。デジタル撮影なのに、35mmフィルムの上映用プリントまで作ったのも、監督の強いこだわりの現れだろうう。
じゃあ、ただの形式主義かというとそうではなく、70年代的なルックが、特に新味があるわけではないけれど、繊細で沁みる物語にピッタリあっている。というのも、ペインが参照している70年代が、しっとり、かつ飄々とした70年代ヒューマンドラマだから。アルトマンみたいに尖っているわけでもニューシネマみたいに抗っているのでもない。ハル・アシュビーとか『ペーパー・チェイス』とか『ヤング・ゼネレーション』とか、今では滅多に見られなくなった地味だけど愛すべきタイプの映画が、この時代にも価値を持つと信じているからこその、前向きなノスタルジーの成果なのではないだろうか。
いい映画を見た、と幸福な溜息が出た
本作の序盤、寄宿学校で暮らす人々の関係性は不協和音に近いほどギクシャクしている。なかなか素直になれない。身の回りのすべてに反発する。あえて他者と距離をおく。自分は嫌われ者だと高を括っている・・・などなど理由は様々。彼らは家庭がとびきりの温もりに包まれるクリスマスシーズンにも帰省できない人たちなので、よっぽどの事情があるのは明らかだ。そんな「ワケありさん」たちが、誰もいなくなった学校で、まるで擬似家族にでもなったかのように過ごす数日間。最初はしょうがなく、しかし途中からは本心で、苦笑いを浮かべながらもぎこちなく、ありったけの心を持ち寄り始める姿がなんとも胸を打つ。自分のことだけで精一杯の意識にふと「他者のために」という気持ちが芽生える時、人は誰もがルビコン河に挑むカエサルになりうるのだろう。そうやって人生は押し開かれていく。監督によるジアマッティの演出が相変わらず冴え渡った至福の一作である。
誰もがどこかで感じている"置いてけぼり感"
人生のレールから逸脱した人々にもひとかけらのプライドがあることを描かせて、今のハリウッド映画では右に出る者がいないアレクサンダー・ペイン。その最新作も期待通り、皮肉と優しさとユーモアに満ちた作品になっている。
その厳しすぎる性格から生徒からも同僚からも疎んじられている教師と、母親に見捨てられた男子学生と、息子をベトナム戦争で亡くした料理長。以上、3人の主要キャラには同じ寄宿学校の住人という以外に何の共通点もないのだが、たまたま、クリスマス休暇で誰もいなくなったキャンパスで共に過ごすうちに、互いの心の奥底に同じ傷を隠していることに気づいていく。でも、ペインは彼らが傷を癒し合う話にはせず、絶妙の語り口で矛盾だらけの人生を生きることの悲しさと可笑しさを同等に配分して、温かみのある後味を残してくれる。こんな贅沢な時間は滅多にない。
ポール・ジアマッティ、ドミニク・セッサ、ダバイン・ジョイ・ランドルフが醸し出すケミストリーも芳醇だ。"置いてけぼりのホリディ"という日本オリジナルの副題が、誰もがどこかで感じている置いてけぼり感を言い当てていて、なんかこう、今の日本人にピッタリの映画であり、副題だと思う。
もって生まれたものにどう対峙するか
『クリスマス休暇を家族と過ごせない』『クリスマスにとりのこされる』ことがどれほどつらいことなのか、作中で何度も語られるので、そういうものなんだなあと思いながらみた(私自身にはぜんぜんそういう感覚がなかった)。
ルッキズムであったり環境であったり遺伝子であったり、もって生まれたものから逃れられない苦悩みたいなものは今でも根強く残っている。
むしろそういったものが認知され自覚的になっていくことで、劣等感とへんに普遍化した配慮がごちゃまぜになって、ますます混沌としてきた気がする。
あの子が不安を断ち切って、あのひとが解放を手に入れて、自由にかろやかに生きてくれるといいなとおもう。
昨年いろんなひとが高評価していて気になっていたけれどみにいけず、目黒シネマが今年のクリスマスに上映してくれたのでやっとみにいけました。
ありがとう目黒シネマ。満席の目黒シネマで映画をみて過ごすクリスマスの夜も悪くない。
自省録
じんわり、温かくなる。
素晴らしい映画でした!!
アマプラで公開終了間近だという事で、こんな素晴らしい映画は、一人でも多くの人に観ていただかないといけないと考え、レビューを残しておかねばならないと思いました。
不器用で孤独な先生と、夫を失い孤独な食堂のオバチャン、そして頭が良いのに孤独な少年。その、冬休みに寮で過ごす物語。
特に若い男の子たちには、ぜひ観ておいて欲しい映画です。若い頃に感じる孤独や葛藤、イラつき、それらは、いずれ大人の男になっていく為に必要な葛藤だったのだと、振り返る時には、この映画が記憶の片隅にあった方が良いと思います。
そして、社会というのは本当に理不尽で、大人たちはまったく自分たち若者の感性など認めず、一方的に自分たち価値観を押し付けてきてばかりだと絶望する中でも、必ず、根気強く理解をして認めてくれる大人と出会います。そういう希望くれる映画です。
ハナム先生のラストにグッとくるような、そんな感性を持った人が一人でも多くこの作品に触れて欲しいと願いを込めて、露出よ増えろ!の★5です(笑)
心が通じる居残り当番
ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ
2週間、先生一人、生徒一人、きまづいよなあ
教師ポールはうっとしいがられてたかも知れないが若い頃にやってきたことを考えると「わかり合えたら面白い人間なんや」と思う。
逆にポールから見たら寄宿舎に残った学生はうっとしいかったのではないか?
しぶしぶ休み中の監視役を務めることになったが休みが明ける頃には変な友情が芽生えていた。
本当は生徒思いの先生だったのに今まではそれを全く出していなかった?あるいは全く生徒に理解されていなかった?
料理長メアリーも加えて3人の抱える悩みが三者三様でお互い理解できていく過程は良かった。
メアリーの息子が若くしてベトナム戦争で亡くなり、ポールはアンガスを戦争に行かせたくないために自分が悪者になって退職していく。
戦争はダメということが底辺に流れていてほっこりだけで終らない良い映画だった。
アンガスはスキーに行かなくて正解やったね。
それにしても生徒の親がヘリコプターで学校にやってきて子供たちをスキーに連れて行くってさすがアメリカやね。
日本では考えられん。
貴重な時間
ジアマッティを始めとするが役者陣がとにかく良い!
アレクサンダー・ペイン特有のペソース漂う人情劇。今回は70年代に作られたようなエイジング加工を施してあり、この作品自体が登場人物と同じように世間から疎外した佇まいになっているのが良き。ジアマッティの偏屈な教授、人知れず家族の悩みを抱えた青年を演じた新人ドミニク・セッサのビビッドな魅力、そしてダヴァイン・J・ランドルフが深刻になりすぎない絶妙な塩梅で息子を亡くした母の喪失を演じる。2時間以上ある作品だが、この3人のアンサンブルが映画に実に心地よい空気を醸成していて、緩みなく観れる。
1回ではだけではなんとも
予備知識なく見たので、結構驚きだった。
最初は量に残された生徒と合唱隊でも組んで、それぞれの抱える葛藤を乗り越えていく物語なのかと思ったが全く違った。
一緒に残された4人はいなくなって、立場の違う3人がどうにもならない過去や壁と向き合いながら、それでも前に進もうとする姿は良かった。
昔ながらの映画のルックで、懐かしさはあり、見ている時の心地良さはあった。
ただ、派手さは無く、その分しっかりと各登場人物に寄り添う必要があるため、見るほうは結構大変。
1回では何とも言えない評価ではあるが、また10年後くらいに見たいとは思う。
人には添うてみよ
1970年、ボストン近郊の全寮制の高校の堅物の歴史の教師ポール・ハナム(ポール・ジアマッティ)と気難しい生徒アンガス・タリー(ドミニク・セッサ)と炊事係のメアリー・ラム(ダバイン・ジョイ・ランドルフ)はクリスマス休暇なのに寮に居残り、はじめは揉めていたものの次第に打ち解けて行きます。ハナム先生は片目が悪い、同僚の教師は「斜視野郎」とか生徒は「デメ金」とか酷い学校ですね、ジアマッティさんはほんとに斜視かと思ったらコンタクトレンズによる特殊メイクでした、意味不明の下劣な演出。寮での閉じこもりに飽きたアンガスが駄々をこね、ハンム先生とボストンに出かけますが思わぬ展開でアンガスをかばった先生は退職、校長も情なしでしたね。
それでも、先生と生徒の心温まるヒューマン・ストーリー、良作です。
「馬には乗ってみよ、人には添うてみよ」とは、物事の良し悪しは直接経験してみなければ分からないという意味のことわざ、馬の良さは実際に乗ってみるまで分からず、人の良し悪しも一緒に暮らし、時間をかけて付き合ってみなければ本当のところは分からない、という教訓ですが、まさに本作で再認識いたしました。
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