「【”生徒自身に自らの可能性を想像させる授業。”今作は、既成のカリキュラムに捉われず、子供の好奇心を刺激する授業により飛躍的に学力向上を実現させたメキシコ人教師の実話の実写化作品である。】」型破りな教室 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”生徒自身に自らの可能性を想像させる授業。”今作は、既成のカリキュラムに捉われず、子供の好奇心を刺激する授業により飛躍的に学力向上を実現させたメキシコ人教師の実話の実写化作品である。】
■2011年。米国国境に近いメキシコのマタモロスにあるホセ・ウルビナ・ロペス小学校が舞台。麻薬と暴力が蔓延る中、小学生たちは家の手伝いなどで、勉強に身が入らずに6年生の半数は卒業が難しい状態。
そこに、地元出身の元中学教師フアレス先生(ヘウエニオ・デルベス)が赴任して来る。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・フアレス先生は、赴任初日からラディカルな授業を繰り広げる。部屋の生徒の机は逆さまにおいてあり、自分の机は廊下に押し出す。
生徒は自由な場所に腰掛けて、この不思議な先生が何を言うのか興味深げに見ている。
ー 所謂、掴みはOKと言う奴である。
先生は”井戸に落ちたロバの話”をして、ロバのように土に埋もれずに這い上がれ!”とはっぱをかけ、更に生徒達に質問するのである。”君たち、23人が6つの救命ボートに同人数乗るには、どうしたら良い?”
生徒達は皆で話し合いながら、その問いを考えるうちに、物理や哲学などにまで思考を広げて行くのである。ー
■この映画では、当時のメキシコの教育を阻む社会問題が描かれている。
1.数学に秀でながら、父の廃品回収の手伝いをしなければいけないパロマ。それにしても彼女が、フアレス先生の”1から100まで足すと幾つになる?”という問いに、”5050”と答えるシーンは彼女の数学の強さを一発で示すシーンであり、フアレス先生が彼女の数学に秀でたる生徒である事を知ったシーンでもある。
2.兄と同じ犯罪組織に入るようにプレッシャーを掛けられ、ナップザックに勝手に銃を入れられ戸惑うニコ。だが、彼は密かにパロマが好きなんだよね。
それを、あと押しするフアレス先生も素敵である。
3.幼い姉弟の面倒を見ながら学校に通う、哲学に興味を持ったルペ。彼女は哲学書を読むために大学の図書館から本を沢山借りて来るのである。だが、子が生まれる母から学校を休学するように言われてしまう。
・フアレス先生は、生徒達に対し上から目線では接しない。故に生徒達は、フアレス先生の問いを自分達でドンドン”思考”して行き、比重に気付いて行くのである。
フアレス先生をサポートする太っちょ校長と、フアレス先生を水槽に沈め、生徒達が大喜びするシーンは、良かったなあ。
■要領の良いズルイ先生は、メキシコの全国共通テスト”ENLACE"の答案を何故か持っていて、生徒に事前に教えたり、教育委員会のお偉いさんは”パソコンを配布する・”と新聞記事にさせておいて、実際は配布しないというメキシコ教育界の不正も今作では描いているのである。
それに対し、敢然と抗議するフアレス先生。彼はズルイ先生から”ENLACE"の答案を渡されても、ごみ箱に捨ててしまう。
・だが、ある日パロマと下校途中だったニコの所にギャング達がやって来て、悲劇は起きてしまう。それ以来フアレス先生もカリキュラム通りに授業をしなかった事を咎められ、2週間の停職。それを知った生徒達も学校に来なくなる。
・校長が、フアレス先生を説得し何とか外に連れ出すシーン。彼らは浜辺に有った”パロマと書かれた小舟”を浜辺を引きずって、海に浮かべるのである。
ー 今作の中身を暗喩した象徴シーンだと思う。ー
<今作は、メキシコの貧困、犯罪、家族環境など学びには障害が山積みの中、生徒達に”自らの可能性を想像させる授業”を行う気概ある先生と、先生により学びの楽しさ、素晴らしさに目覚めていく生徒の姿を描いた作品なのである。>
NOBUさん
考えることを教えたのは素晴らしいですが、それだけだし、良いとこどりな感じもするしという感じでした。
私は今日&明日で年内劇場観賞終了で飲んだくれます!