「韓国映画は良質だね!」梟 フクロウ おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
韓国映画は良質だね!
日本公開の韓国映画はすべておもしろいので、本作も期待して鑑賞してきましたが、その期待を超えるおもしろさで大満足です。
ストーリーは、盲目の鍼医ギョンスが、その腕を見込まれ宮廷内の御医の下で働くことになるが、ある夜、体調の異変が起きた王のもとへ御医とともに訪れ、実は完全な盲目ではない彼は、そこで驚愕の事実を目撃し、王の死の真相を知ることになり、我が身に迫る危機から逃れながら、真実を明らかにするために奔走する姿を描くというもの。
17世紀・朝鮮王朝時代の記録物「仁祖実録」に記された“怪奇の死”にまつわる謎を題材にしているということで、その知識がある方にはかなり興味深い作品だと思います。私はそんなことは全く知らず、というよりその記録物さえ知りませんでしたが、それでもとてもおもしろかったし勉強になりました。
序盤は、ギョンスの有能ぶりから宮廷内勤めとなるまでを、彼の置かれている状況も交えながら簡潔に描きます。ここでのテンポがよく、あっという間に作品世界に誘われます。また、宮廷内の先輩的ポジションの男のコミカルな立ち回りがおもしろく、これが後半のシリアスな展開との対比になっており、伏線の役割も担っています。
そして、舞台が整ったところで清国との関係をめぐる意見の相違があらわになり、と同時にギョンスがひた隠しにしていた秘密も明らかになり、物語はいよいよ大きく動き始めます。ここからは緊迫シーンの連続で、スリリングな展開に圧倒されます。事件の真相、その裏での駆け引きなど、二転三転する展開から目が離せません。ラストの闇を感じさせる幕引きも悪くないです。
ただ、ストーリー上しかたないことなのですが、画面がほぼ暗いのは残念です。おそらく細部までこだわっていたであろう宮廷内セットや調度品や衣装などが、しっかり見えなかったのはもったいなかったです。とはいえ、巧みなライティングでギョンスの視界をうまく表現していたと思います。タイトルの意味にも納得です。
主演はリュ・ジュンヨルで、盲目のギョンスを好演しています。脇を固めるのは、ユ・ヘジン、チェ・ムソン、パク・ミョンフンら。中でもユ・ヘジンは、「コンフィデンシャル」の時とは別人で、暴君ぶりがお見事です。