「星の数に意味は無いです。」帰ってきた あぶない刑事 こっこさんの映画レビュー(感想・評価)
星の数に意味は無いです。
正直、どう評価したら良いのか、心から戸惑っている。先に云うが、話が長くなる事をご寛恕いただきたい。
恭サマの言う通り『新しい物語を愉しめるまで何度も観て(咀嚼してほしい)』と言われたので、立て続けに2回観たのだが、それでもまだ混乱している。
舞台挨拶で舘さんが「新しい世代による、新しい『あぶ刑事』です」と語っていたが、そこが《全て》で、その部分をどう見るかで、評価は大きく変わると思う。
観覧直前までキャスト・スタッフのインタビュー本を読んでいたので、テレビ第一話から《作り手側の様々な試行錯誤や制作秘話》を知った立場から見ると、やはり『《あぶ刑事》はコレじゃない感』が強かった。太鳳ちゃんを交えた楽しそうに戯れる3人のPVの様なシーンや、(映画の)リズム感を崩すストーリー上も意味の無い引き(いわゆるロング)の映像が長く《悪役の早乙女君の車が走ってるだけ等》、全体的に冗漫な印象が残る。ドローンやCGも矢鱈と使えば良いってもんじゃない。昔の監督さんなら、20分以上は(編集で)切れると思う。
こういう点を『新しい』と言うなら、たしかに新しいし、《普通の映画なら》全然違和感は無いだろう。ただ『あぶ刑事』でソレをやらなくても…と云うのが、個人的には強かった。
最近は公開の度に『お目出度い』感が強くて《本来のアクション映画》としての評価は甘いが、今回は「そりゃズルいよ!」と突っ込みたくなる昔の懐かしい映像や音楽(『もっとも…』のあの歌は何度聴いても泣いちゃう!)を使ってもいるので、そういう“保険的な事”までするなら、もっとテンポの有るスピード感が欲しかった。
キャストでは吉瀬美智子、西野七瀬がアウト。前者は、とてもじゃないが《3人の男から愛された女》に見えなかった。もっと《そういう佇まいを感じさせる力の有る女優さん》でなくてはダメ。後者はそもそも「刑事役」自体が間違ってる。交通課のミニパトぐらいならまだしも。この2人の女性のミスキャストで、映画全体で相当勿体無い事をしている。太鳳ちゃんは、相変わらず後光が指しているような美しさでOK!悪役の早乙女君、ガン飛ばしばっかりだったけど雰囲気は出ていたのでよき。
脚本は、出だしはまずまずだったと思うが、途中から早乙女君の言動が《皆にバレバレ》で、「計画も何も…」と云う感じ。あんなキレキャラにするなら、初めから『新・銀星会』立ち上げを目論む男にでもしてあげた方が良かった。岸谷五朗さんとのシーンで散々「ビジネス…」と繰り返すが、その計画に何も商業的な要素が無いw。《新カジノ構想を再燃させるから、邪魔する奴等を皆殺しにする》事しかしていない。その上「ワグネル」的な《軍事会社》なんて、日本に作る意味が無いからほぼ理解不能…。サブマシンガンの扱い方も雑。
と、随分辛口な事ばかり書いたが、本当の感想はここから。
何と言っても、主役の御両人『本当に御歳を召された…』。これはもう映画作品として《良し悪し》の問題ではない。それが感想の“全て”。
館さんの“ショータイム”も、勇次の走りも、もう《どうやっても隠しようが無い位に衰えられていて》、観ている此方もツラかった…(涙)。だからといって「昔の映像」とか昔のレパードを差し込むのもズルいけどw。
今作は、製作開始前に“立ち上げ当時のスタッフ”が相次いで身罷られ、当初はお二人も(本編製作に)前向きでは無かったと聞き及び、『じゃあ若い世代のスタッフ達の為に、自分達が“御神輿”に成ってやろう』と云う気持ちで作られたのかと拝察。
上映後の舞台挨拶で町田課長(=仲村トオル)から「今後は『あぶなくない探偵』を是非レギュラーで…」等のリップサービスも有ったが、正直言って“御両人の窶れ具合”を見ていると「もう開放してあげて」と言いたくなった。
タイトルが『帰ってきた…』に成っているが、個人的には「今作が御両人の見納めかな…」と、劇場を出る際に肌感で強く思った。
今回の興収で、東映やセントラル・アーツがどれ程儲けるのか分からないが、「と云うことで何年か後にまた…」等とは、決して考えないで欲しい。むしろ今迄の財産をもっと《大事に市場に回すこと》に注力して欲しい。
五十をとうに過ぎたオッサンが、高校生時代に《毎週心ときめかせてくれた作品》なのだ。勝手に「これが最後…」と決めて、年甲斐も無くグッズや本も買い漁ったが、こんなファンの為にも《観るのも憚られる様な本編》を将来作る事だけは、しつこいようだが避けて欲しい。
本当に長い間、ありがとうございました、舘さん、恭サマ、トオル、薫ちゃん、ナカさん…。もう、充分堪能させていただきました。そして全てのスタッフに最大級の感謝を。
さぁて、ドラマの第一話から見直さなきゃ!
P.S.「あぶない刑事」の略称は「あぶデカ」ではなく『あぶ刑事』が本来なんだからね!!! ネット界隈で適当な事を書いてる奴が多いが、元々は『あぶ刑事』なんです!
早速の返信、有難うございます。
そうですね…、《老い》を笑い飛ばす様な筋立てなのに、アレコレ小細工を入れたりするから余計に、御両人の《老い》がかえって目立ってしまった気がします。
それと、ここ何作かは『製作すること』だけで満足してしまって、キチンと映画として成立させようと云う気持ちが希薄な感じがして、ちょっと嫌なんですよね。
アドリブも含めて『どうぞ,どうぞ』と製作陣がお二人に委ね過ぎちゃってるし…。
仰ること、多々、共感いたします。
作った世代が若返ったことで、むしろ未熟な部分が出てしまったのでしょうか。。
「老いるショック」これがこの映画で真っ先に頭をよぎる印象だった気がします、キツい言い方ですみません