劇場公開日 2024年2月9日

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「とりあえず観れて良かった」瞳をとじて yudutarouさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5とりあえず観れて良かった

2024年3月20日
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鑑賞方法:映画館

 ビクトル・エリセの新作、長編としては30年以上ぶりらしい。なのでエリセ作品をスクリーンで観るのは初めてで、それだけでも貴重な機会だった。幻想味は薄く、ビクトル・エリセの映画だ〜という感覚はあまり無かったのだが、フィルム映画へのノスタルジーを表明しているような表層の裏側に、おそらく監督にしか分からない思索が渦巻いているのは確かに感じられて、ちゃんとしたヨーロッパ映画を観ている感覚はあった。
 主要登場人物たちはまるで記憶と記録だけで繋がっているようで、それは映画の中だけで存在出来る関係性にも思えるのだが、しかしそれが一体何なのか、何を見せようとしているのかというのはサッパリ分からなかった。記憶を無くした男が映画によってそれを取り戻せるのかというストーリーも結局何を言いたいのかな、という感じだった。そこに映画こそ至上というストレートな解釈を当てはめると、それこそエリセ作品っぽいとも思えるけど、そんな単純なものでは無いのだろう、多分。とはいえ登場人物たちの誰もが冒頭に出てくるチェスの駒のように冷徹に配置され、動かされてるように見えるのは、これが『映画』だと殊更に強調しているようで、映画そのものを語る映画だというのは間違いない、と思われる。
 しかしビクトル・エリセらしさを一番感じたのは、そんな映画を語る映画とか、スペイン内戦の影が根底に潜んでいる政治的な感じ、などではなく、宮崎駿に通じる変態性だった。記憶を無くした男が娘(『ミツバチのささやき』の女の子だった、らしい。分からなかった)に見せる好色な眼差しや劇中映画の父親の娘への執着など、意識的に尋常じゃない雰囲気を漂わせていて、どう考えても異常…。なので理解は追いつかないけど興味深く楽しませてもらった、という感想。もう一度観て、理解を深めたいという気持ちはあるのだが、ちょっと長いんよね…。

yudutarou