「これもこれでありと思うけど&陰陽師と天文学者のかかわりなど」陰陽師0 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
これもこれでありと思うけど&陰陽師と天文学者のかかわりなど
今年152本目(合計1,244本目/今月(2024年4月度)26本目)。
(前の作品 「あまろっく」→この作品「陰陽師0」→次の作品「映画 きかんしゃトーマス 大冒険!ルックアウトマウンテンとひみつのトンネル」)
この映画はここでも触れられている通り、陰陽師になる「前」の彼のストーリーということで、ややスピンオフかなという気がします。ただそれもそれで一つの解釈という気はしますし、この時代(平安時代)についてもかなり配慮のある描写が多かったので良かったです。
ただ結果的に映画として題材を同氏に取る場合、陰陽師になった後、その後の活躍のほうが何かとミステリーになっていて、そちらも少しは触れていただければ、と思ったところです。
日本史・古典(古典文法というより古典知識。「内裏」とかいて「だいり」と読むなど)があるとかなり有利です。日本に適法に在住している外国人の方でもギリギリ解釈できるんじゃないかな、といったところです(どうしても江戸時代チャンバラものか、お決まりの武田信玄だの織田信長だのになりやすいが、本作品は国語に関しても配慮があるので)。
採点に関しては特に減点対象まで見出せなかったのでフルスコアです。ただし、本映画で描かれていること自体は多少は史実を参照にしているとはいえ、「オリジナルストーリーである」という点には注意が必要です。
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(減点なし/参考/陰陽師と天文学者、時の権力者とのかかわり)
この映画は陰陽師になる「前」の話ですが、陰陽師と天文学は関連のある分野で、どちらもこなすことが一般的でした。そして、この奈良後期から平安といった時代にはさして趣味がなかったこともあり、「空を見上げる」ことは一つの文化でもありました(最初に北斗七星のようなものが出ますよね)。
一方、日本ではこの時代、水星・金星・火星・木星・土星は見つかっていましたが(地球の「発見」という概念はこの時代には観念しづらい)この中でも夜に見えやすい火星、木星、特に火星は公転周期が2年という事情もあり、当時(平安時代)からも誤差範囲レベルで陰陽師が正しい予測観測を行っていました。これははるかさきの明治時代以降の国立天文台ほかにつながる事業です(当時の「陰陽師」(天文学者)は今でいう国家公務員のような扱い)。
その中でも、特に「星と星が接近する・食する」ことは不吉の対象とされていました。食はめったに起こることではありませんが、代表的な恒星(今でいうレグルス、てんびん座α星(3等))等と、火星・木星が近づくことは(特に火星では)頻繁にあり、この「ある程度近づく」ことを「犯」(はん)と読んでおり、(日本が海洋国なのに)外国から攻めてくるとか、内乱が起きるとかという不吉な前兆とされていたため、いわゆる高貴な人たちはそうした陰陽師(天文学者)をおかかえにして毎日のように軌道計算(のようなもの)や予想(のようなもの)に従事させられていました。
ただ、上述通り、火星と他の星(レグルス、アンタレスほか)との「犯」は「しょっちゅう起きる」ことのため、それをいちいち「犯」だと報告すると上層部(ここでは、当時の最高権力者の天皇も含む)も如何ともしがたい部分があり、「いちいち心を乱すのだから報告しなくてもよろしい」みたいな考え方になってしまい、天文学はこうした「上層部からの圧力」をうけて衰退した事情があります。これがまた復活するのは江戸時代以降の科学(このころには天文学として完全に独立)にまで待つことになります。