ニューヨーク・オールド・アパートメントのレビュー・感想・評価
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不法移民のシビアな生活を描き見応え、しかし一方で…
ポップなポスターとはかけ離れた大国🇺🇸の小さな部屋で「透明人間」かのように暮らす不法移民親子の小さな暮らし…差別、貧困、強制送還への不安等をシビアに、しかし優しく描いて見応えがあった。終わり方も良い。一方で憧れの女性クリスティンの顛末は辛すぎた…
わりと絶賛の声が多いんだけど、わたしはクリスティンのような女性が「配置」されるのはあまり好きではないな…「少年二人にとっては」憧れで美しい金髪でスタイルも良くてセクシーな女性として存在、しかし最後はあんなことに。でもその後どうなったんだろう?登場させた限りはしっかり描いて欲しかった。
売春なんていう辛いことをしていた彼女に、さらに少年二人とセックスさせる意味もわからない。彼女はなんなの?女性として搾取されすぎてる感じが否めなくてつらい。「思い出の青春の1ページ」みたいにクスクスうれしそうにセックスしてたけど、彼女は?彼らに身体を捧げる必要あった?少年視点では素敵なお話でも、クリスティン視点で観るとあまりに酷く、つらすぎる顛末で、その後の彼女がずっと気になってしまう…
聖リタの続きが見たかった
これは、本当に良い映画なのだろうか。
スイスから資金が入っているが、監督との関係か。登場人物の一人、エドワルド(なぜか英語表記はEwald)はスイス出身との設定。ただし、露悪的で興醒め。
ストーリーは、最近日本で公開されるフランス映画に時々あるように甘い。何かの配慮があると、plotが緩むのだろう。ペルーからアメリカに密航し、ニューヨークの下町で、なんとか生きようとする親子の物語。彼らが巻き込まれる事柄の時間的な経過を入れ替えて、観客はごまかされている感じ。
ティトとポールの双子の兄弟は、結局ペルーに強制送還されるけど、同居の母親ラファエラはなぜ、一緒じゃないの?あとで、GPSで追跡される。
母ラファエラが知り合ったエドワルドの出資で始めたブリトーのデリバリー(当然、未認可)には、彼女のアパートが使われていたはずなのに、いつの間にか、さんざんに荒らされている。当局がやったの?
若いクロアチア出身の美女クリスティンはどうにもならないとしても、兄弟と再会するのは事件を起こした後なの?
たった一つ興味を惹かれたことは、兄弟が聖リタに毎晩、祈りを捧げるところ。初めはマリア様に祈っているのかと思った。この映画の原題は「Saint of the Impossible」(不可能の聖人―不可能を可能にするとの意か、聖リタのことを指す)。でも確か、聖リタは、イタリア中部の聖人のはず。スペインの強い影響下にあったペルーにどうして伝わったのか、是非カトリックの人に聞いてみたいと思った。南米やカトリックの国の人がこの映画をみたら、全然違って見えるのかもしれない。
日本語の字幕にも意訳が多い感じ。街頭の声を拾ってくれないのは仕方がないとしても。兄弟とクリスティンが通っている英語のクラスで、ノルマンディーのことから太平洋戦争に話がおよび、その時日本人を指す蔑称が聞こえた。もちろん字幕には出てこなかった(と思う)。クラスには、明らかな日本人はいないにしても、現代のNYで日本人のおかれている微妙な立場が感じられた。密航してきたペルー人には(ある程度の)配慮がある。しかし、少なくとも一旦は西洋人を追い越していった日本人は、一体どのように捉えられているのか。今、同じ立場に置かれつつあるのは中国人。この映画にも終夜営業らしい四川料理店が出てきたけれど、彼らは一晩中働くくらい、なんとも思わないだろう。彼らはずっと逞しい。
移民の国アメリカ
遠く離れたアメリカの話だからと他人事には出来ない内容だった。
今の日本にも移民の問題は確実にあるのだ。
理由は分からないが母ラファエラ、息子のポールとティトの親子は、祖国ペルーを捨ててニューヨークに移り住んだ。
後に彼らは不法入国者であることが分かるが、生活はあまりに厳しくラファエラはウェイトレスをしながら、二人の息子は語学学校で勉強しながらも配達の仕事で家計を支えている。
まるで誰からも見向きもされない透明人間のような存在の彼ら。
特に若いポールとティトはニューヨークで自分の居場所を見つけ、何者かになりたいと望んでいた。
そんな彼らは語学学校で同じく移民のクリスティンと出会い恋に落ちる。
彼女には服役中の恋人がおり、彼女は彼を釈放するためにコールガールをしながら金を稼いでいた。
そんな闇を抱えた彼女に恋をしてしまった二人。
どこまでも純情な彼らはやがてその恋によって追い詰められることになる。
同じくラファエラもエドワルドという作家に恋をしたことで人生の歯車が狂わされていく。
エドワルドは彼女をウェイトレスの仕事から解き放つためにデリバリーのブリトーの店を作る。
日々の生活に疲れていた彼女は簡単にエドワルドの言葉に乗ってしまうが、やがて彼は口先だけで人を支配しようとする小者であることが分かってしまう。
彼女がすがりついた希望は、家族を切り離す絶望への入口だったのかもしれない。
この物語の悲劇は、あまりにも無知である彼らの自業自得であると突き放す見方も出来る。
しかしそう断言できるのは恵まれた環境にいるからなのだとも感じた。
彼らは幸せを掴むために藁にも縋る思いだったのだ。
この映画に登場する移民がひどい仕打ちを受けるシーンはそれほど多くはない。
語学学校の講師のようにあからさまに彼らを嘲笑する人もいるが、ほとんどの人間が彼らに無関心だ。
そしてほとんどの人間が彼らに好意を持たない。
しかし中には彼らを利用しようとする者も現れる。
何か面倒を起こしても、彼らは大事にすることが出来ないと知っているからだ。
こういう悪意のある連中が一番厄介だ。
彼女は信じていた恋人までもが自分を裏切っていたことを知ってしまう。
そして彼女の闇はどんどん拡がり、ポールとティトをも飲み込むことになる。
終盤まで何も救いのない話だと暗澹たる気持ちにさせられたが、おそらくポールもティトも根っからの明るい気質なのだろう。
どれだけ過酷な運命に立たされても彼らは前を向いて生きている。
それはラファエラも同じだ。
映画の中で問題はひとつも解決しないが、それでも自分を信じて生きている限り、いつかは光が差し込むのだと希望を持たせてくれるような作品だった。
シビアな重さが兄弟の軽さで救われる
予習したほうがいいかな、哀しい母子の生き様を描く
社会に必要とされない不遇な不法移民、映画ではクリスティンの物語とのナレーションから始まるが、私は母の哀しい性と子どもたちへの愛に惹かれた。
だが予習無しで見ると、背景が少し分かりにくいのと設定に違和感覚えるので事前に映画評を見とけばと少し後悔。以下は違和感
①愛した男に裏切られたのはともかく、そのために娼婦してたとは想像できなかった。
②後半母が倒れるシーンあるが、そこまで材料の状態に気づかないのも謎。
③不法移民の状態はライトに描いている感じで、強制送還はともかく、母が前の職場に戻るなら瞬速で拘束されないのかな?
と、偉そうに書いたが映画自体は良い。前向きな子供達の姿で終わったが、もう少しだけ未来が見たかった。最後の男のシーンは余計な印象で映画を軽くした気がした。
大都会ニューヨークで暮らす不法移民の話
日本で普通に生きていると、この映画の中の人達の生きざまは理解できない。不快に思う人も多いんだろうな。なんせ"不法"移民なんだから。
思春期の双子の息子がいるのに狭いアパートに男を引っ張り込んじゃうお母さん。でもそんなお母さんが大好きな息子達。お母さんと息子達の心の絆は深い。そして彼らは彼らで訳あり風のお姉さんに夢中。でそのお姉さんはお姉さんで塀の中の男に夢中。で結局そのお姉さん、殺人を犯し塀の中に。双子はそのとばっちりで不法入国がばれてペルーに強制送還。お母さんとは離ればなれに。彼らの生きていたペルーの街は酷く荒んでて貧しい。そりゃ逃げ出したくなる。最下層だって、ニューヨークの方が遥かにまし(比べるべくもない)。彼らの人生、どうなっちゃうんだろう。逞しく生きて欲しいな、なんて平和な日本で生きるおじさんはお気楽に、いや、真剣に思うわけです。
純粋さ
期待度○鑑賞後の満足度○ 「ニューヨークのクソ男ダイアリー」かと思うくらいに出てくる男は主演の兄弟以外殆どクソ男ばかり。好編だが女性像がやや古臭いのが難。
①予告編を観て、もっとハートウォーミングな話だと思っていたら、結構シリアスな内容だったのにはちょっと驚いた。
②クリスティーンがクソ男を47回刺した気持ちはよく分かる。クリスティーンが心から血を流したのは47回どころではないだろうから。
ただ、恋人を刑務所から出すために街娼までしてお金を作ったのに裏切られた(というか利用されていた)のを知ってそのクソ男を殺すというメロドラマみたいな筋立ては最早使い古されたというか大時代的というか。
勿論、現代でも世界中にその様な女性(自分にで望むか望まざるにせよ)は沢山いるだろうし普遍的なこと(でも、そんなことを言うのは女性に対して失礼ではなかろうか)かも知れないけれども、せめて現代の映画の中ではその様なステレオタイプから女性を解放してあげるか、別の描きかたをするべきではないだろうか。
あと、初恋の相手だったり、初体験させてくれた女性が複雑な事情の持ち主で、離れざるを得なかったけれども、少年達の心には美しい人として、或いは美しい思い出として残る、という話も何処かで観たか読んだかした既視感あり。
また、お母さんにしても、“恋なんて卒業よ”みたいなことを息子達には言っておきながら、言い寄ってきた男(本性は息子達は見抜いていたけれども)を好きになった途端「恋は盲目」(ジャニス・イアンだぜ)になってしまうのも手垢の付いた展開。
③あっさり強制送還されてしまったのは仕方ないにしても、生肉を乗せたコンテナに隠れて不法入国したというシリアスさ(私ではとても耐えられそうにない)に反して、ペルーでの描写はそこまでして不法入国したいような国・環境に見えなかったし、“必ず戻るから”と軽く言ってたけれども、トランプがまた大統領になったら無理でしょう。
④良い映画なんだけれども、ちょっと中途半端な印象は拭えない。
「僕たちはこの街では透明人間なんだ」と言っていた冒頭、「もう透明人間ではいたくない」と叫んだ中盤、でも後半では「透明人間」のテーマは何処かへ行ってしまって、あのシリアスさは何だったの?という感じ。
いっそ、もっとシリアスな方か、もっとコメディタッチの方か、振り切った方が良かった様に思う。
⑤邦題が『ニューヨーク・オールド・アパートメント』という芸のなさ+内容を表していない。
まさか原題も?と心配していたら、『The Saint of the Impossible』(“不可能を可能にしてくれる聖人”くらいの意味かしら?)が原題。
こちらなら納得。
⑥オーディションで選ばれたという主演の男の子二人も好演だが、母親役のマガリ・ソルエルが、どうしようもなく“女”の部分を持ち併せながらも大変子供想いの母親であるラファエルと言う女性像を非常な好演。
ラスト、不法入国先ではあってもアメリカで自立して生きていこうという姿も清々しくて宜しい。
ニコイチ
驚きの傑作
こんなにいい作品だと思わなかった。
直近に見た「ラブストーリー」や「枯れ葉」に評価5を付けてしまったけど、これを見たら評価を下げようかと思ったほど。
みんなに見てほしい。
ちらりと壁に彼の写真が飾ってあるシーンがあったけど、もし彼が今年当選したりしたら、アメリカはどんな国になるんだろう。世界はどうなってしまうんだろう。
追記
ここのレビューで見たegoさんのランキングがおもしろかったので、私も真似して、今のランキングを書いておきます。
01 ニューヨーク・オールド・アパートメント
02 東京物語☆
03モナリザ・アンド・ザ・ブラッドムーン
04サンザシの樹の下で☆
05ショコラ
06ティル
07ファースト・カウ
08リアリティ
09トップガン・マーヴェリック4DX
10レザボアドッグス
11屋根裏のラジャー
12ニューシネマパラダイス☆
13ショータイム
14枯れ葉
15ポトフ
16怪物くん☆
17ラブストーリー☆
18ゴーストワールド
(「☆印」は家の配信で 今年見たのは、今のところ、みんないいのばかりです 「トップガン」と「ニューシネマ」は何度も見てるので、その分、本来の評価よりは低めです)
ニューヨーク・オールド・アパートメント 移民が他国で生きる苦しさが...
ニューヨーク・オールド・アパートメント
移民が他国で生きる苦しさが主たる作品だが、自分の居場所が分からなかったり、人に必要とされていないのではないかと不安に生きる苦しさはどんな人でも経験がある孤独さ。そんな孤独に生きながら片方は家族で支えながらギリギリで生き、片方は愛する人に騙されコケにされ復讐で自分の人生を終えてしまう対なる描写が決して他人事ではなく、どこか共感を覚えながら見いてってしまった。
中々の良作。
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