ニューヨーク・オールド・アパートメントのレビュー・感想・評価
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外国で生きる若者への理解と共感をはぐくむために
評者自身も仕事の都合で一定期間アメリカで過ごした体験があり、市民カレッジと言うのだろうか、わずかな授業料でESL(第二言語としての英語)を教わるクラスに通ったこともあるので、懐かしさを覚えるシーンが多々あった。もちろん似たような経験がなくても、進学や就職、転勤などを機に地元を離れて不慣れな場所で暮らし始める時の心細さは大勢が知っているだろう。またコンビニやファストフードの店員など、接客業に従事する外国人に接することも年々増えているし、職場や学校でも移民やその二世・三世、あるいは留学生や技能実習生と一緒になる機会も増えているのではないか。本作のような題材を扱う映画を鑑賞することで、外国で生きる若者、あるいは不慣れな環境で疎外感を味わっている人たちへの理解と共感がはぐくまれ広がるといいなと願う。
不法移民という境遇に関しては、技能実習生として来日するもブラックな職場から逃げ出したベトナム人女性たちを描く「海辺の彼女たち」を思い出したが、比較すると本作のほうが明るく希望もたくさん感じられる。"boys meet a girl"の要素がそうしたポジティブな印象に大きく貢献しているのだろう。大人への通過儀礼とでも言うべき“体験”が描かれているが、2人目の際に「おいおい、初めてでそれはチャレンジャーすぎる……」と余計な心配をしてしまった。
24-027
不法入国と甘酸っぱい青春の恋。
何者でもないティトとポール、
麗しの存在クリスティン。
誰もが自分自身を生きようとし、
存在と居場所を探そうとする。
バカな大人に翻弄され、
それでも健気に生きていく。
劇場鑑賞できて良かったです😊
透明人間だけど…
NYに暮らす不法移民の家族のストーリー
時にある題材ではあるが何故かこの家族に悲壮感を感じられないのは肝っ玉かぁちゃんの明るさとクロアチア人の美女に恋をし
しっかり青春(性春…😁)を謳歌している兄弟の日常が自然に見えてしまっていたからかもしれない…
しかしその日常も徐々に崩れて行く…
透明人間でなくなる時が
彼らが恋するクリスティンも含め現実は底辺に位置する自分達であれど前を向き誇りを持って進んで行く姿とエンディング曲にかすかながら希望や微光が見えた気がしました
心留めしておきたい作品になりました
…クリスティンの受刑中の恋人や母親の恋人のポルノ作家…家族の親戚の親父などなど登場する男ども揃いも揃ってクズばかり!!
腹が立って仕方なかったよ!
そんな中でも母親の同僚
コインランドリーでの多人種達の協力に感動しました
帰りにタコスをテイクアウトしてしまいました😁
75点ぐらい。庶民の目線で描かれたニューヨーク。
移民の青年兄弟が主人公でニューヨークが舞台なんですが、
映画用に、よそ行きの顔した、カッコつけたニューヨークじゃなく、
そこに住んでいる庶民の目線からの様なニューヨークが楽しめます。
アメリカに住みたいと思うぐらいの僕にとっては、とても興味深く楽しめました。
ラブストーリーってより青春映画だと思います。
移民問題も絡んできますね。
考えさせられます。
良かったです♪
※原作は小説みたいですけど未読です。
多様性とは?人種差別が蔓延る現代における感じる矛盾
ペルーからアメリカの移民兄弟&母親を軸に
様々な出来事・事件を通して、社会問題を抉りだすように描いている作品だと思いました。
移民の生きにくさ、透明人間と自分で揶揄されるほどの無視っぷり、
冒頭のシーンなんて人間扱いすらされていない、
でも、それが当たり前の世界でも、
主人公兄弟ふたりが恋したクリスティンは、ふたりを差別なんてしていない。
まさにそういう世代なのかもしれないし、生きてきた境遇・教育にも影響があるのだろうと思います。
こういうテーマを扱った映画を観るたびに、世界で叫ばれている多様性という言葉が
実に陳腐に聞こえます。
本音で本当に多様な人種(LGBTQ含め)を受けとめることができる人が
一体どれほどいるのだろうと考えてしまいます。
またしてもそういう課題を突きつけられたと感じた作品でした。
この現実に唾を吐く
安定した暮らしを求めペルーから不法移民としてアメリカに来た家族だが、現実は厳しく…そんな中で母、息子がそれぞれ恋に落ちて巻き起こる物語。
アメリカにとって不法移民というのは勿論良くないことなんだろうけど、自らが透明人間に思える程、居場所の無い日々は辛いだろうなぁ…。
そんな燻った3人の生活がよく描かれており、双子のピュアさとたくましさが重々しいハズの雰囲気も和らげてくれ、とても見易い作品に仕上がっている印象。
一見ワルに見えるクリスティも(実際に悪い事してるんだけれど)、クロアチアからの移民。双子からは高貴に見えてたかもだけど、彼女は彼女で居場所探しに必死だったんでしょうね。
比較的、淡々とした展開ながらも終盤に向けて畳み掛けるような負の連鎖には焦燥感を覚えたし、そこからの一本の電話で胸にジ〜ンと熱が広がる。
その他にも、少なからず差別を受けているであろう人達のコインランドリーでの協力にはグッときた。
家族愛はまたきっと国境を超えてくれるでしょう。大きなインパクトは無くとも、リアリティがありつつ、わざとらしすぎない作風でとても良作だった。
【人種の坩堝、ニューヨークで暮らす不法移民のペルーやクロアチアの人々の自分達の居場所を必死に探しつつ生きる姿を描いた作品。】
■ペルーから不法に国境を越え、ニューヨークに辿り着いた双子のポールとティト。二人は語学学校で知り合ったクロアチアから来た超絶白人美女のクリスティンと出会い、恋をするが写真を貰っただけで、友達止まり。
二人を育てるシングルマザーのラファエルは愚かしき白人の恋人と、デリバリーの食品店を開く。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・クリスティンは実は恋人が、刑務所の中にいる。コールガールとして生計を立てているが、その恋人の出所日にこっそり見に行くと、恋人には妻子がいて・・。
ー 列車の中で彼女がネイルをこそげ落とすシーンの彼女の鬼気迫る表情と、ポールとティトを呼び出し”あたしのことを聞かれたら、良い人だったよと言ってね。”と言って場末のモーテルで二人を次々に優しく抱いてから、恋人を・・。
ウワワ。けれども、気持ちは分からないでもない。必死に支えて来たんだし、刑務所の中の、彼との電話が彼女の生き甲斐でもあったのだろう。彼女の人間としての矜持であろう。-
・自分達を”透明人間”と卑下しながらも、毎日を必死に送るポールとティトは、街中の人だかりの中で、クリスティンの写真を見て彼女に言われた通りの言葉を発するが、警官に事情聴取を受け、更に移民局の職員から国外追放を言い渡される。
ー 部屋の中に掲げてある、愚かしきトランプの写真が、絶妙に効いている。-
・シングルマザーのラファエルは、デリバリーの食品店が配達人のポールとティトが居ないせいもあり、あっと言う間に行き詰まる。
そして、息子達と交流があったクリスティンが起こした出来事を知り、友人から許可証を借り、彼女に会いに刑務所へ行く。
- そこで、やつれた彼女が言った言葉。”あの子たち、充分に愛されてるじゃない・・。”可なり沁みる。
<ラストシーンは、ペルーに強制送還されたポールとティトが立ちはだかる山に向かい、再びアメリカを目指す姿で終わる。
微かな希望と、勇気を感じさせる良いラストシーンだったなあ。>
<2024年1月28日 刈谷日劇にて鑑賞>
移民と飲食店の厳しさ
アメリカは移民が多い国ではあるが、不法滞在も厳しく取り締まる国でもある。それでも入国しようとする人が後を絶たないのは、そこに夢と希望がある(ように見える)から。
本作に登場する移民たちが置かれている状況と彼らの周りで起こる出来事は、移民の厳しさと彼らが感じる夢と希望を説明するものだった。男も女もカラダを使ってしか金を稼ぐができない。生活をやりくりするだけでなく、商売を始めたり進学したり、何かしらのステップアップするのはとてつもなく高いハードルが待ち受けている。
そうした弱みに付け込む人もいれば、助けてくれる人もいる。なんてツラいのだろうとも思うが、捨てたもんでもない。あんな感じでブリトー屋を開こうとする神経が信じられない。それに乗っかるママも含めてだけど。飲食店経営ナメんなと言ってやりたい。
後半、結構大きな出来事が起きて大変な状況に陥るのだが、なんか微妙に希望を感じる終わり方だったのがまだ救いか。恋の話とも言えるし家族愛の話とも言えるが、やはり移民と飲食店の厳しさが一番印象に残ってしまう映画だった。
中盤から
途中までは全然入っていけなく登場人物誰にも共感出来なかったのですが、ようやく話が大きく動く中盤以降自分の中では盛り返してくれました。
二人の兄弟が純粋で登場人物の中では一番まともに見えました。
母の短絡的な性格はこの映画だけのものなのかそれともステレオタイプなものとして描いてるのか。
不法滞在者かそれともアメリカから見ての外国人にとっては生きにくい国なのかなあとも思いました。不法滞在?そりゃそうか。不法滞在してまでもアメリカは希望のある国だということですね。
他の方が高評価をつけるまでにはいかなかったです。
青春ラブストーリー?家族愛?
食肉のトラック🚚に紛れてアメリカに不法に越境したペルー人の家族(母親と子供二人 子供は高校?)の話
子供二人は英語学校に通いながら、ウーバー(食事の配達)で日々の生活費を稼いでいる 母親は朝早くから仕事に出かけウェートレス 食事に来た男に口説かれ、アレヨアレヨと…
子供二人は英語学校に入学してきたどこか不幸をしょっているような女性にメロメロに…
しかしその女性は収監されている男(妻子持ち)を出所させる為に身体を売りながら…最後には
悲しくなるが、現実を見せつけられる内容でした
邦題が意味不明だが、移民と不法滞在者のリアルが描かれていた
2024.1.22 字幕 アップリンク京都
2020年のスイス映画(97分、PG12)
原作はアーノン・グランバーグの小説『De bellige Antonio(1998年)』
クロアチア移民に恋をしたペルーからの不法滞在兄弟を描いた社会派ラブロマンス映画
監督はマーク・ウィルキンス
脚本はラニ=レイン・フェルタム
原題は『The Saint of the Impossible』で「不可能の聖人=劇中で登場する聖リタ」を表す言葉
物語の舞台はアメリカ・ニューヨーク
そこで暮らすペルーからの不法滞在者ポール(アドリアーノ・デュラン・カストロ)とティト(マルチェロ・ディラン・カストロ)の兄弟は、ある女性との思い出に耽っていた
その女性の名はクリスティン(タラ・サラー)と言い、彼女はクロアチアからの移民だった
二人が通う英語教室に突如現れたクリスティンに恋をした二人は、あの手この手で距離を近づけようと行動していた
二人には近くのダイナーで働いている母ラファエラ(マガリ・ソリエル)がいて、ある日突然姿を消した息子のことを案じていた
友人のルーチャ(Elizabeth Covarrubias)とともに仮住まいを訪れたラファエラは「移民局」の捜査が入ったことに気を病んでいた
映画は、ラファエラの回想を主体にしつつ、彼女が知らない兄弟の一面を再現していく内容になっていた
映画は、クリスティンとの色恋沙汰がメインの童貞ものという感じで、彼女には訳があるという内容になっている
彼女の恋人ジェイク(ブライアン・ドール)が収監されていて、その釈放のための弁護士費用を集めるためにコールガールをしているというもので、その真相が後半で暴かれる感じになっている
兄弟の本音を察したクリスティンが条件を提示して行為に及ぶのだが、その余波を受けた二人が移民局の世話になってしまう
ペルーに強制送還された二人が何とかルーチャに連絡を取り、それによってラファエラに安堵が訪れるというものだが、訳あり底辺なので足元を見られまくっているという流れになっていた
そんな彼女にも一時の清涼が訪れ、それがスイス人の官能小説家エワルド(サイモン・ケザー)なのだが、彼が家に来たことによって、兄弟たちの行動がエスカレートしていくように紡がれていく
要は、母親が兄弟のことを考えているふりをしながら男に傾倒し、彼らの始めるビジネスに巻き込まれるのだが、その反発は水面下で起こっている、という感じになっている
飲食デリバリーの経験があると言っても、無許可で無計画で始めるあたりが無茶苦茶で、そりゃあそうなるよねという結末が訪れる
エワルドはラファエラ捨てられた後にちゃっかりと新しい女を連れ込んでいたが、街角のラバが一撃をお見舞いするのは爽快と言えば爽快なのかもしれません
いずれにせよ、邦題の印象から「ニューヨーカーと移民の恋」みたいなイメージを持っていたが、原題の意味が劇中で登場した唖然としてしまった
久しぶりに全く関係のない邦題がついて呆れてしまったのだが、これ以外に思いつかなかったというのが現実なのかもしれない
原題をそのまま使用しても日本人にはほぼ意味が通じないのだが、せめて「ダウンタウンの聖リタ」ぐらいの宗教色を取り込んでも良かったように思えた
ラマになって唾を吐く
ペルーからの不法移民、きれいな母と二人の息子の3人家族の話。
ペルーからどうやってニューヨークまで行けたのか?
物価の高いニューヨークでどうやって家を借りれたのか?
子供の学校も高いんじゃない?
などいろいろな疑問はあるものの、
”透明人間”として必死に生きている家族愛の物語。
ポールとティトは同じクラスのクリスティンに恋をし
その影響で大変なことになってしまうが・・・
ポールとティトはペルー人で本物の双子らしいです。
この家族の3年後くらいの続編が見たいなぁ。
幸せの未来完了形
評判の良さを目にして、予告編も未視聴のまま鑑賞したので、のっけから衝撃を受けた。
自転車が車と衝突しても、車側から「傷がついたじゃない!」と怒られてしまう街なんですね、ニューヨークって。
公然と格差が肯定されていて、弱い立場の者は強い立場の者に何をされても逆らえない。まぁ、あの女性ドライバーからすると「デリバリーをしているのは、どうせ不法滞在者で、表に出られない奴らなんでしょ?」といったことなのかもしれないけど、ポールとティトの2人の「透明人間は嫌だ」と言う気持ちは痛い程伝わってくる。
2人が恋するクリスティンも、ちょっとは身につける物が小綺麗でも、男たちにいいように扱われ続けている様は、やはり「透明人間」。自分のポートレートを相手に渡し、自分が求める時にはすぐに提示できるよう指図するのも、相手が自分を大切に思ってくれていることを目に見えて確かめる、彼女にとっての存在確認の大切な方法だったのだろう。
スプレーとナイフを携帯しつつ、自分の身を投げ出すことと引き換えに対価を得てきた彼女が、そうした生活に耐えられたのは、愛する彼の存在があったから。だからこそ、それが裏切られた出所の場面、美しく着飾った彼女の顔がみるみるうちに歪んでいくあのシーンの切なくて残酷なこと。
2人の母親のラファエラから「愛を与えたつもり?」と尋ねられて、クリスティンの「(2人は)もともと愛でいっぱいだった」との答えが胸を打った。
ビールを飲みながら授業する英会話学校教師や、上から目線のスイス人エロ作家を始め、胸糞な輩は山ほど出てくるが、不思議と爽やかさが途切れないのは、やはりポールとティトが真っ直ぐで清々しいからだと思う。
まだ道のりは長そうだったが、この2人だったら、確実に将来的には幸せをつかむだろうという希望が感じられた。
個人的には、ラマに「いいね!👍」を連打してつけたい。
話は変わるが、今回鑑賞した映画館は、塩尻市の東座という。上映前に、支配人?の合木さんから、毎月2週間自分のおすすめ映画を上映するというこの「FROM EAST上映会」の説明と、今回の映画の見どころや監督に関する話があった。NO原稿で、柔らかな語り口で、しかも決して観る前の余分なネタバレにはならない内容で、その見事さに心から感動した。また是非足を運びたいと思った。
透明人間って、いい得て妙な。
命がけで国境を渡ったのに、自分の存在を否定されるような日常。
だれにも気づかれずにひっそりと生きてきたのに、なぜ?
愛は人を変えるから?
彼女の表情を、怒りや哀しみと捉えられる二人の感性がスゴイ。
ママとは離れちゃったけど、二人で切り開いていくんだろうな〜
なんだかんだ言っても、ママから愛されてきた二人が、彼女は羨ましかったんだろうな〜
彼女の生き様が切ない。
でも、落とし前つけたかったんだろうな。
ある意味、かっこいい。
皆懸命に生きている
日本に暮らしているとわからない苦労が散りばめられていた。
幸せを掴むため不法滞在という選択、、、
透明人間のように生きるってどんな感じだろう?
その中で兄弟のピュアな表情と演技、魅力溢れるクリスティン、素敵でした。
本当に日本は世界から見ると平和な国なんだと実感しました。
不法移民のシビアな生活を描き見応え、しかし一方で…
ポップなポスターとはかけ離れた大国🇺🇸の小さな部屋で「透明人間」かのように暮らす不法移民親子の小さな暮らし…差別、貧困、強制送還への不安等をシビアに、しかし優しく描いて見応えがあった。終わり方も良い。一方で憧れの女性クリスティンの顛末は辛すぎた…
わりと絶賛の声が多いんだけど、わたしはクリスティンのような女性が「配置」されるのはあまり好きではないな…「少年二人にとっては」憧れで美しい金髪でスタイルも良くてセクシーな女性として存在、しかし最後はあんなことに。でもその後どうなったんだろう?登場させた限りはしっかり描いて欲しかった。
売春なんていう辛いことをしていた彼女に、さらに少年二人とセックスさせる意味もわからない。彼女はなんなの?女性として搾取されすぎてる感じが否めなくてつらい。「思い出の青春の1ページ」みたいにクスクスうれしそうにセックスしてたけど、彼女は?彼らに身体を捧げる必要あった?少年視点では素敵なお話でも、クリスティン視点で観るとあまりに酷く、つらすぎる顛末で、その後の彼女がずっと気になってしまう…
聖リタの続きが見たかった
これは、本当に良い映画なのだろうか。
スイスから資金が入っているが、監督との関係か。登場人物の一人、エドワルド(なぜか英語表記はEwald)はスイス出身との設定。ただし、露悪的で興醒め。
ストーリーは、最近日本で公開されるフランス映画に時々あるように甘い。何かの配慮があると、plotが緩むのだろう。ペルーからアメリカに密航し、ニューヨークの下町で、なんとか生きようとする親子の物語。彼らが巻き込まれる事柄の時間的な経過を入れ替えて、観客はごまかされている感じ。
ティトとポールの双子の兄弟は、結局ペルーに強制送還されるけど、同居の母親ラファエラはなぜ、一緒じゃないの?あとで、GPSで追跡される。
母ラファエラが知り合ったエドワルドの出資で始めたブリトーのデリバリー(当然、未認可)には、彼女のアパートが使われていたはずなのに、いつの間にか、さんざんに荒らされている。当局がやったの?
若いクロアチア出身の美女クリスティンはどうにもならないとしても、兄弟と再会するのは事件を起こした後なの?
たった一つ興味を惹かれたことは、兄弟が聖リタに毎晩、祈りを捧げるところ。初めはマリア様に祈っているのかと思った。この映画の原題は「Saint of the Impossible」(不可能の聖人―不可能を可能にするとの意か、聖リタのことを指す)。でも確か、聖リタは、イタリア中部の聖人のはず。スペインの強い影響下にあったペルーにどうして伝わったのか、是非カトリックの人に聞いてみたいと思った。南米やカトリックの国の人がこの映画をみたら、全然違って見えるのかもしれない。
日本語の字幕にも意訳が多い感じ。街頭の声を拾ってくれないのは仕方がないとしても。兄弟とクリスティンが通っている英語のクラスで、ノルマンディーのことから太平洋戦争に話がおよび、その時日本人を指す蔑称が聞こえた。もちろん字幕には出てこなかった(と思う)。クラスには、明らかな日本人はいないにしても、現代のNYで日本人のおかれている微妙な立場が感じられた。密航してきたペルー人には(ある程度の)配慮がある。しかし、少なくとも一旦は西洋人を追い越していった日本人は、一体どのように捉えられているのか。今、同じ立場に置かれつつあるのは中国人。この映画にも終夜営業らしい四川料理店が出てきたけれど、彼らは一晩中働くくらい、なんとも思わないだろう。彼らはずっと逞しい。
移民の国アメリカ
遠く離れたアメリカの話だからと他人事には出来ない内容だった。
今の日本にも移民の問題は確実にあるのだ。
理由は分からないが母ラファエラ、息子のポールとティトの親子は、祖国ペルーを捨ててニューヨークに移り住んだ。
後に彼らは不法入国者であることが分かるが、生活はあまりに厳しくラファエラはウェイトレスをしながら、二人の息子は語学学校で勉強しながらも配達の仕事で家計を支えている。
まるで誰からも見向きもされない透明人間のような存在の彼ら。
特に若いポールとティトはニューヨークで自分の居場所を見つけ、何者かになりたいと望んでいた。
そんな彼らは語学学校で同じく移民のクリスティンと出会い恋に落ちる。
彼女には服役中の恋人がおり、彼女は彼を釈放するためにコールガールをしながら金を稼いでいた。
そんな闇を抱えた彼女に恋をしてしまった二人。
どこまでも純情な彼らはやがてその恋によって追い詰められることになる。
同じくラファエラもエドワルドという作家に恋をしたことで人生の歯車が狂わされていく。
エドワルドは彼女をウェイトレスの仕事から解き放つためにデリバリーのブリトーの店を作る。
日々の生活に疲れていた彼女は簡単にエドワルドの言葉に乗ってしまうが、やがて彼は口先だけで人を支配しようとする小者であることが分かってしまう。
彼女がすがりついた希望は、家族を切り離す絶望への入口だったのかもしれない。
この物語の悲劇は、あまりにも無知である彼らの自業自得であると突き放す見方も出来る。
しかしそう断言できるのは恵まれた環境にいるからなのだとも感じた。
彼らは幸せを掴むために藁にも縋る思いだったのだ。
この映画に登場する移民がひどい仕打ちを受けるシーンはそれほど多くはない。
語学学校の講師のようにあからさまに彼らを嘲笑する人もいるが、ほとんどの人間が彼らに無関心だ。
そしてほとんどの人間が彼らに好意を持たない。
しかし中には彼らを利用しようとする者も現れる。
何か面倒を起こしても、彼らは大事にすることが出来ないと知っているからだ。
こういう悪意のある連中が一番厄介だ。
彼女は信じていた恋人までもが自分を裏切っていたことを知ってしまう。
そして彼女の闇はどんどん拡がり、ポールとティトをも飲み込むことになる。
終盤まで何も救いのない話だと暗澹たる気持ちにさせられたが、おそらくポールもティトも根っからの明るい気質なのだろう。
どれだけ過酷な運命に立たされても彼らは前を向いて生きている。
それはラファエラも同じだ。
映画の中で問題はひとつも解決しないが、それでも自分を信じて生きている限り、いつかは光が差し込むのだと希望を持たせてくれるような作品だった。
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