「祖国からの逃避行」ビヨンド・ユートピア 脱北 オパーリンブルーさんの映画レビュー(感想・評価)
祖国からの逃避行
北朝鮮から川を渡り、中国〜ベトナム〜ラオス〜タイ。タイまでに通過する国々は共産圏なので、捕まると北朝鮮に返されてしまう(そして厳しい懲罰をくらう)
合間合間に逃避行を手助けするブローカーの存在がある(画面には登場しないが、彼らは巨額の利益を得ているはず)
脱北の援助をしているキリスト教の牧師が、祖母と女児ニ人の一家を救うため奔走するパートと、単身脱北してきた女性が今回は息子を呼び寄せるパートの2つに分かれる
ドキュメンタリーだから画面も落ち着かず、主観的過ぎる映画かと思ったが、スマホの映像、赤外線カメラの映像等がうまく編集されている
北朝鮮という国に産まれ落ちたことを呪いたくなるような実情もイラストで解説されて、脱北者で今は北朝鮮の悲惨さを訴える活動をしている女性の体験談も凄絶で、北朝鮮は国ごとがアウシュヴィッツのような絶滅収容所だと評されることが、決して大袈裟ではないことがわかる
牧師の妻も脱北者で、笑顔が素敵な明るい人柄なのだが、台所で料理をしながら「麺を茹でた湯は北朝鮮では捨てない。水も配給制だから無駄に出来ない。茹で汁もスープのようにして飲む」と言っていて、まさに収容所のようだなと思った
脱北というエピソード2つだけでなく、共に語られる北朝鮮という国の解説が奥行きを与える。逃げた一家の、顔つきや国の指導者への評価の変化の対比も興味深い
何度か挟まれる隠し撮りされた北朝鮮の市場での庶民の素朴な笑顔、何かを拾い食いする孤児だと解説される痩せた子ども、ラストには中国国境から川越しに撮られた大きい荷物をおぶって何処かに歩いていく人々の姿…
生まれる場所は選べないけれど、少なくとも北朝鮮に生まれなくて良かったと心から思う
【映画公開時に見逃してしまい、今回ひょんなことから家の近くの二番館で三日間限定で公開されるのを知り、見てきました
接する機会があれば、ご鑑賞をお勧めします】