「(オンライン試写会は内容のいかんに関係せずネタバレ扱い)」ビヨンド・ユートピア 脱北 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
(オンライン試写会は内容のいかんに関係せずネタバレ扱い)
今年16本目(合計1,108本目/今月(2024年1月度)16本目)。
大阪市では夜はもう厳冬ですが、その中でもオンライン試写会を開いてくださったfansvoiceさまに感謝を。
さて、本映画は、去年から引き続き放映されている「1等当選宝くじが飛んでいきました~」とは対極的な位置にある、きわめて深刻な北朝鮮の人権蹂躙の問題と、そこから脱北して韓国なり日本なり(通常は韓国)に移動する当事者を描いた作品です。
どうしても作品の趣旨上ある程度「描写上」配慮されている部分はあり、そこは紙芝居などに差し替えられています。ただこの点は本気で「いや、現実をそのまま描くんだ」となるとR18になりかねないので仕方がなく、このあたりが妥協点ではなかろうか、と思います。
日本では本作品以外でも「北朝鮮にちょっといってきた」とか「北朝鮮の隠しカメラを経得てちょっと旅行してきた」みたいな(インディーズ系も含め)映画がありますが、その手の映画を「ある程度」みていれば(もっとも、こちらは「脱北」を描くので趣旨は異なるが)有利です。逆に言えば、このような現実があるので、「1等当選宝くじ~」と…これ、来週ですから、放映日重なるんでしょうか…、まぁそこはもう「大人のチョイスで」ということになるんだろうと思います。
※ 大阪市の某映画館で、一つは「ナチスドイツによるユダヤ人迫害を扱う映画」を扱いつつ、もう1つ(通路を挟んでむこう)で「ヒトラーと東条英機が生き残っていたら、という設定のアクションもの」という「これまたなんでそんな組み合わせにしたんだ」というヘンテコなときもありましたが…(まぁ、あのときはコロナ事情もあったので仕方がない)。
採点にあたっては以下が気になったもののフルスコア扱いにしています。
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(減点0.2/済州4.3事件、麗水順天事件などの描写がないことについて)
このこと、つまりこの2事件における「南朝鮮労働党」の扱いがないため、「対立観念」といえる「北朝鮮労働党」という語も浮かびうる余地がなく、実はそこが金日成氏の生い立ちにつながるのですが(たとえ誰であっても、呼び捨てにはしない立場)、この部分を省くと、同氏がいかにして北朝鮮で実権を握ったのかという理解がやや困難かな…という気がします(特に麗水順天事件に触れないと、金日成氏がなぜ実権を握ったのかの理解が困難になる)。
ただこのことは脱北映画を扱う本映画ではささいな事実ですし(ただ、北朝鮮の成り立ちを示す最初の部分で詰まる)、かつ、済州4.3や麗水順天10.19はそれはそれで扱いが難しい(これのみを扱う映画もある。前者は「スープとイデオロギー」ほか)ということまで了知した上でこの程度です。
(減点なし/参考/日本の描かれ方について)
ここは「やや韓国よりに」見るひとりの立場からは(どうしても行政書士の資格持ちでかつ大阪に住んでいると、一般的理解により進んで実際の文献に目を通しながら「何が正しいか」を理解しながら見ることになるので)、日本が「何を行ったのか」という点については適切に描かれていてよかったです(極端にひどくもないが、極端に矮小化もされていない。この点、どう主張しても史実を曲げることはできない)。
※ 本映画はこの論点をどうこういうのではないので注意しましょう(どういう考えであっても、日本が韓国を併合したのは事実であるため)。
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