あんのことのレビュー・感想・評価
全145件中、121~140件目を表示
やるせない怒りと悲しみ
売春や麻薬の常習犯である21歳の香川杏は、母親と祖母と3人でゴミ屋敷で暮らしていた。子どもの頃から母親に虐待され続けた彼女は、小学4年生から学校に行けなくなり、母親から強要され12歳から体を売って金を家に入れていた。刑事・多々羅に捕まったことをきっかけに更生しようとした杏は、多々羅やジャーナリスト・桐野の助けを借りながら、介護の仕事を始め、母親から離れるため新たな住まいでの更生生活を始めた。しかし、突然のコロナ禍で仕事が無くなり、そして多々羅の逮捕、毒親に見つかり・・・杏はどうなる、という話。
実話に基づく作品とのことで、衝撃を受けた。
沖縄の貧困問題を描いた、花瀬琴音主演の「遠いところ」を連想してしまい、やるせない怒りと悲しみが湧いてきた。
杏役の河合優実目当てでの鑑賞だったが、彼女は期待どおり素晴らしかった。母親役の河井青葉も狂気の毒親ぶりが素晴らしかった。
多々羅役の佐藤二郎は良い人だと思ってたのに、うーん、ちょっとガッカリかな。
これも日本の現状。自分が何も出来ない無力さを感じながら、知ることから始めないといけない、と思わせてくれる。
なるべく多くの人に観てもらいたい作品です。
実話ってことが怖い…
本当にこんなひどい母親がいるのか、信じられない。
おばあちゃんは杏のことを庇ってくれたという台詞があったが、
もしかしたら、
昔は母親を虐待していたのかもしれないと疑った。
よく「負の連鎖」の話は耳にするから。
多々羅刑事に出会い、やっと人間らしい生活を手に入れたと思ったときに
コロナが蔓延。
ふと思い出したのが「特別定額給付金」のこと。
この家族受け取ったのだろうか?
間違いないのは、
杏は絶対に受け取ってはいないこと。
流れてくるニュースも理解してなかっただろう。
逆に、給付金を利用して儲けていた輩もたくさんいた。
本当にやるせない…
簡単に言葉にはできないが、
実際にこのような子がいたということは現実なんだ。
辛い映画ですが、
杏を演じた河合優実さんは素晴らしいと思いました。
モデルとなった実際いた方と、手を取るように演じたと
パンフレットには書かれていました。
日本のどこかで杏のような子は、他にもいるのかもしれない。
私たちはそれを知らないで生活してます。
だって、こうやって映画を見る生活を送っているのだから…。
でも、まずは知ること。
それで、今はいいのか、正直わかりません。
あんのこと、忘れない
*
主人公のモデルは朝日新聞の記事に
登場したハナ(仮名)
幼少期からの虐待や薬物依存を乗り越え
介護福祉士になる夢ができた
夜間中学で学ぶはずだったが
コロナ禍に前途を阻まれ、
2020年春25歳で命を絶った
*
これが現実に起きた話だなんて
信じたくない…
なぜ毒親は存在するんだろう…
その連鎖はなぜ止まらないのだろう
普通に学校へ行って、友達をつくって、
夢を見つけて勉強に励む…
そんな当たり前の権利が彼女には
与えられなかった
自分の身体と引き換えに
ただお金をつくって渡すだけの
ほんの一筋の光さえも見えない現実に
風穴を開けて光を見せてくれたのは多々羅だった
多々羅は杏のことを思ってサポートした
杏の目は生気と光を取り戻していった
初めての給料で杏は手帳を買った
なんでもない「普通」が輝いてみえた
おばあちゃんにケーキを振るまった
なんだか「普通」の家庭にみえた
ラーメン屋さんで3人でご飯を食べたり笑ったり
カラオケではしゃいだり安らぎの時間があった
その様子を見ていてずっとずっと
これが続いていったらいいのにと思った
このひとときは紛れもなく幸せだった
多々羅が居なくなってから
少しずつ変わって行く現実…
桐野はそのことに後悔のようなものを
抱いていたようだけど
彼は彼の仕事を全うにこなした
ただそれだけ
生活の基盤は整っていたから
多々羅や桐野が居なくなっても
杏は前に進んでいけるはずだった
しかしそれはコロナ禍によって
どんどんと破壊されていく
ほんとにコロナ禍が憎くて仕方ない…
彼女は犠牲者だ
介護施設での別れのシーン
お金や物ではない
「心」を、ただ、自分の存在を、
頼ってくれた時は嬉しかっただろうな
シェルターで暮らしていた
隣のシングルマザーから子の子守りを頼まれ
いきなり母になってしまったのは驚いたけど…
そんな状況も杏の持ち前のひたむきな努力と
責任感と前進力でこなしていっていた
すっかりお母さんのようになっていた
自分の親のようにはならないと覚悟して
精一杯の愛情を注いだのだろう
適応能力が並大抵ではない…
人と人との最後の絆のようなものが
取り上げられてしまい
またもや努力が泡となって消えた
もうやめてくれ…
一体彼女が何をしたというのだろう
ああ、あの日に逝ってしまったんだ…
頑張れって、ありがとうって、
空が応援してくれたあの日に逝ってしまったんだ…
ただただ絶望に暮れてしまって
涙すら出てこない
ただただ、たらればを繰り返す…
繰り返したって彼女は帰ってこないのに
*
杏がいまどんな気持ちで何を感じているのか
心の描写が細やかに表現されていて
すごくわかりやすかった、痛いくらいに…
とても重いテーマだったけれども
河合優実さんが尊敬の気持ちを込めながら
実在していた彼女を生き返してくれたから
目を背けずに最後まで見届けることができた
彼女の存在を知ることができてよかった
今日もどこかで彼女と同じような苦しみを
強いられている…その現実を胸に刻む。
*
多々羅も佐藤二朗さんしか考えられない
「タバコくらい吸っとけよ!」すこし笑った
杏を支えたい、助けたい、その気持ちは本心…
涙しながら彼女を慰めていた姿は嘘じゃない
だからこそ
自分の心の闇にもきちんと目を向けてほしかった
*
観たあとも胸に残る
これが実話なのか、、、物語が進むにつれてその境遇に衝撃を受け、さらにそれを演じる河合優実にも衝撃を受ける。どうか、どうか救われてほしい、そう願いながら叶わぬ結末に観おわったあとも気づけばずっと頭から離れない。
家に帰りこれを書きながらもう一度涙が流れた。
影と光
どう感想を書いたらいいのか…それくらいこの映画に動揺している。
閉鎖した状況から逃れられない人物に寄り添い、描き続けている入江悠監督。
今作では親から虐待を受け続け、覚醒剤や売春に手を出してしまった主人公杏に、今迄以上にそっと寄り添い、見つめている。
単純に良い映画という事を許されないような、監督の憤りの様なものを感じる。
壮絶な映画。暫く頭から離れそうにない。
兎に角、杏を演じた河合優実さんが素晴らしい。
箸の持ち方や筆記具の持ち方だけでも、育ってきた過程が見えてくる。
特に中盤、杏が更生に向かい、仕事が安定し、行けなかった学校にも通い始める所は、普通の生活と学ぶ事が楽しくて仕方ないという感じがする。そんな表情の変化が見事。
また、照明も初めは人物を影に納めながら、杏の変化とともに光を入れていくのが見事。
そして、杏と刑事の多々羅、ジャーナリストの桐野の3人のシーンが何とも良い効果。暖かくなるんです、その段階では!
ここから始まる地獄。
「人は良い事をしながら悪い事をする」と言ったのは、池波正太郎先生だったか、彼は欲望と贖罪に揺れながら生きて来たんだろうな。うん、佐藤二朗さんというキャスティングは見事だ。
正しい事と思いながらも、揺れ続ける桐野の稲垣さんも見事!
そしてコロナ禍が、築き上げた関係性全てを無にしてしまう。
不意に預けられた子供を虐待の連鎖なんて起こさず、ちゃんと育てようとする姿に杏の本質が垣間見える。依存していた部分があるとしても。
だからこそ、最後の絶望は辛すぎる。あそこで母親を刺せる杏なら、死にはしなかったんだろうな。けど、自分を傷付けても人を傷付ける事が出来ないのも杏の本質なんだろう。
まだ、ちゃんと咀嚼しきれてないけど、今年ベストの映画になりそうな気がする。
そして、今年の主演女優賞は河合優実さんにあげて!
#あんのこと
切ない作品
河合優実は本当に存在感があり、素晴らしい演技でした。目を引くような美人ではないが、山口百恵のような日本的美しさがある女優。悲しくて過呼吸になるシーンは、命をすり減らして演技していると感じました。
多々羅のことは力強く優しい父親のように感じていたのかな。自分を助けてくれて、信じていた刑事の裏切り。新型コロナの感染で自宅待機となり、施設の入所者やスタッフとの繋がりが途切れてしまった。最初は扱いに困っていた子供も、彼女の生き甲斐になっていた。
度重なる不幸の連続に、衝動的に覚醒剤を使ってしまう。積み上げてきた努力を自ら台無しにしてしまったその自責の念に耐えきれなかった。自分に期待してくれている施設の入所者や関係者など、心の支えとなっている周りの人達に申し訳ない気持ちもあったのでは。
彼女の人生がうまく行き始めると現れて、肝心なところで邪魔をする母親。あのような母親がどのようにして出来たのか気になった。
もう少し生活の基盤が確立し、もう少し自分に自信が持てるようになり、もう少し強くなっていれば、何とか乗り越えることもできたのかな。
酷い人生を歩んできたが、弱者に寄り添える優しい娘。悲しい結末がとても切ない作品でした。
【”絶望と諦念の日々からの微かな灯。そして・・。”今作はコロナ禍に起きた出来事を基に入江悠監督の鎮魂のオリジナル脚本に応えた、河合優実さんを始めとした役者陣の渾身の演技に魅入られる哀しき逸品である。】
<感想>
■入江悠監督の練り込まれた鎮魂のオリジナル脚本の凄さ
・悲しき出来事をベースにしながら、オリジナル要素である
<シェルターマンションに避難していたあん(河合優実)の元に、同じマンションの男とトラブルを起こした女(早見あかり)が、幼子ハヤトを押し付けて逃げ去る所からの、コロナ禍の中、仕事と学びの場を失いつつも、あんがハヤトを懸命に育てる姿。>
を練り込んだ事により、あんの人間性の清さ、強さ、尊さを際立たせた事である。
故に、彼女が遺したハヤトの食べ物の好き嫌いを記した燃え残りの日記の頁を親である女が見るシーンは、哀しい。
■脚本に応えた役者陣の渾身の演技
・勿論、筆頭はあんを演じた河合優実さんである。冒頭の目の下の隈を作りながらフラフラと歩く姿から、クスリの誘惑に負け泣き崩れる姿や、懸命に再生しようと介護施設で高齢者を介護する姿。
無理やり押し付けられた幼子ハヤトをDVの負の連鎖に嵌らずに、懸命に育てる姿。そして、ハヤトがご飯を食べる姿に喜ぶ優しき表情。
更には、再び絶望に突き落とされ、再びクスリを打ち、日々記していた日記を焼く姿。
ー 河合優実さんの出演作はデビューからほぼ全て見ているが、どんどん凄い女優さんになって行く。ー
・怪しげでありつつ、善性も併せ持つ不可思議な雰囲気を漂わせる刑事、タタラを演じた佐藤二朗さん。
あんの再生の手助けを懸命にしつつ、サルベージ赤羽に通うミヤビと言う女性を恫喝し性的関係を強いていたアンビバレンツな男を怪演している。
ー 佐藤二朗さんと言えば、ご存じのように福田雄一監督の数々のコメディ映画でおバカな演技をしているイメージが強いが、監督・脚本を務めた「はるヲうるひと」や「さがす」でのシリアスで、場合によっては悪辣な演技も凄い。今作では、後者の面が炸裂している。ー
・毒を振りまく母を演じた河井青葉さん。
あの役の演技はさぞやキツカッタだろう。鬼気迫る演技であるが、あの毒母を河井さんが見事に演じた事により、この映画の底知れぬ怖さに奥行きを齎している。
特に、あんに縋る時に彼女を呼ぶ”ママ、ママ・・。”と言う声と表情には観ていて、激しく嫌悪感を催すが、河井さんの演技が凄いからである。
<今作は、毒を振りまく母親に人生を蹂躙されながらも懸命に生きた若き女性の半生と、現代日本の数々の闇を抉り取った入江悠監督の練り込まれた鎮魂のオリジナル脚本の凄さ及びそれに応えた河合優実さんを筆頭にした役者陣の渾身の演技により成立している悲しみ溢れる邦画の逸品である。>
衝撃作
クソな母親に怒りの感情が止まらない、佐藤二朗ー‼️頑張ってくれよ。お前だけが頼りだったのに。惜しい。
吾郎ちゃん、もう少し早く気づいてよ。
これ、大体は実話ですよね。
悲しいね、頑張ったのにね、あと少し乗り越えていたらね。
ノート、燃やしたくないのに燃やす気持ちが痛いほど分かったよ。
余談
河合さん、上戸彩にも石原さとみにも見えました。
シャネルズを久しぶり聴きたくなりましたね。
衝撃作、大人達の欲に子供が犠牲、誰が一体守ってやるんだよ! 本当に心打たれた!
最近、配給でキノフィルムズさんを良く見掛けるように成ったね。
過去何作か鑑賞した事はあるが 今一歩作が多かったかな。
しかし近年、”騙し絵の牙”や”碁盤斬り”など 作品に非常に魅力を感じる物が増えたと思う。
そして今作を鑑賞したが、お見事であった。
作品への目利きがモノを言うのだが、近年非常に鋭く優れてきてると感じます。
素晴らしい作品を発掘し上映機会を広げて頂いてる事に深く感謝いたします。
今日は「あんのこと」を鑑賞しました。
この作品をズバリ語ると、”違国日記”の真逆側位置に当たる感じがします。
作品比較するのは良くは無いのですが、どちらも少女を主としての描写、その後を描く流れ展開が同じに捉えられます。そして
向こうの作品は 女性達によって影響し心情変化がしている事に対し、
この作品は、男性達によって心情変化していると思います。
(本作のこと)※実話ベ-ス
監督、脚本:入江悠氏
上映時間:113分/PG12
-----役者陣-----
・香川杏(不遇の少女):河合優実さん
・多々羅保(人情ある型破り刑事):佐藤二朗さん
・桐野達樹(週刊誌記者):稲垣吾郎さん
・香川春海(杏の駄目母):河井青葉さん
・香川恵美子(杏の祖母):広岡由里子さん
・三隅紗良(隣人、幼子の母):早見あかりさん
実話ベ-ス展開にて、少女杏の事(生きた軌跡)が描かれています。
生まれた時から虐待、小学校にも禄に行けず、親から売春斡旋させられて暴力受ける。全く酷い母親だ! なんて女なんだ、こんな母親は死ねば良いと本当に思う。
売春で同時に麻薬患者にも接触しシャブを打つようにもなる。
中学中退、売春、麻薬、そして逮捕補導。PG-12も頷ける内容です。
こんな人生既にリ-チで詰んでしまってる少女を、破天荒な刑事と、記者が寄り添い 何とか更生させていく話展開です。
女性からしたら こんな酷い仕打ちの作品観たい?と思うかもですが、
最後までご覧頂いたら きっと心の底から彼女へ手を差し伸べたい想いで
心いっぱいに満ちると思います。
特に、あれだけ人生荒れてた彼女が 介護施設で立派に働き老人に接していて
その姿に目を見張ります。
給与明細住所発送の手違いで働き先がバレて
虐待母親が施設へ乗り込んできて、娘へ凄く暴れる場面。
少女杏が皆さんに迷惑をかけたと、辞めないといけないと思い下駄箱を片づけようとした所。社長(施設責任者)が辞める必要は無いよ、皆で考えようと言ってくれて、杏が ”本当にすみません、ごめんなさい” と涙ながらに言葉発するところは
凄く涙し心打たれました。
こう言う周囲への配慮、感謝と謝罪が言葉に出来るくらい確り更生した姿が、
観ている側の心の奥底まで触れてきて 見ていて"良かった"の思いで一杯です。
多分、彼女以上の年齢の方なら 何とか彼女へ手を差し伸べたいと思うでしょう、きっと。
やがて、コロナ感染の闇が世間を包み、非正規社員の介護師(杏)は休業をしなくてはならず、そんな中 破天荒刑事も薬物患者を救う会(サルベ-ジ)の人と怪しい繋がりを指摘され記事になり逮捕。ネタを記事にしたのは一緒に杏へ手を差し伸べた桐野であった。一緒に杏を救済に努力していた輪の 何かが音を立てずに崩れて行くのを感じて行く~。
保護マンションに籠る杏に急に 隣人から預かり託される幼子(男の子)。これがリアルに幼少の子供を使っててマジでそのまま 一緒になって心配な思いになる。
夜間学校にも行っていたが、コロナで自宅授業。
幼子面倒みて、自宅待機、仕事にも行けず。でも杏は 託された幼子を必死に育児するのである。この姿は本当に健気であり、何とか自分と同じ様な目にはさせられない思いが強かったのであろうと感じた。
薬物患者を救う会は刑事の逮捕で閉鎖し、誰にも連絡できず 誰にも頼る事が出来ず、本当にこの幼子と二人っきり生活と成ってしまうのである。
窓の外に 五輪開催のブル-インパルス飛行機雲が見えていたのが マジリアルな情景に思い成りました。
・・ そして・・・悪魔の虐待母親に、ある日遭遇してしまう・・・
ココからは、書きません。いえ 書けませんわ。悲し過ぎて。
彼女の生きてきた証が、誰かの記憶に残るなら。
破天荒刑事(多々羅)の 拘置所のやり切れない思い。
私も凄く同じだったです。
杏を演じた河合優実さんは 本当に素晴らしかったですね。
大変な役所、良く頑張ったと感じました。
次回作にも期待しております。
中々、心エグられる内容展開ですが
ご興味ある方は
是非 お近くの劇場へ どうぞ!!
河合優実のこと
すでにかなりの出演作があり自分も含む映画好きにはとっくに名の通った役者だった河合優実がテレビドラマで一気にネットニュースやCMや雑誌にどんどん出はじめる。タイミングを計ったわけでもなくドラマより先に撮られていた話題作が立て続けに公開される。もう一本ではカンヌまで、声優でルックバックも。役者業は固いと思っていたが、まさかこんなに早くお茶の間のスターになるとは想像していなかった。
ストーリーは、これが2020年代の概ね実話で、それも刑事の悪事までが実話だというのが恐ろしく、平和なゆでガエルで定年を迎えるサラリーマンには想像がつかない。改めて自らの幸福を真にありがたく思う。子供を預かる件は現実にはなかったオリジナルらしいが、結末を知らなかったので「もしやいい感じで終わるのか?」と油断してしまった。
河合優実は想像どおりの腕力できっつい話を演じ切る。加えてますます独自色を強める稲垣吾郎がいつにもまして自然な顔の演技で微妙な心境を定着させる。残念ながら佐藤二郎はちょっとやりすぎた感。早見あかりは最初と最後でキャラが変わりすぎたような気がする。そして「偶然と想像」の上品な女性のイメージしかなかった河井青葉のやさぐれ母ちゃんには驚いた。
残念すぎますね、、、
せっかくまともな生活を手に入れて1からスタートしたとこだったのに、コロナのせいでとても孤独になってしまった。まだ精神的に未成熟でちゃんとした大人がそばにいてほしい時期なのに、、、母親に絶対会わないような遠いところに行けば良かったのに、とかたらればになってしまう。これから楽しいことがいっぱいあっていろいろ経験できたはずなのに、、、今現在、あんのような子がいると思うけど、すこしでも幸せになるように願います。
本当のどん底とは
まだ頑張れば何とかなる、と思っているのは本当のどん底ではないとヒリヒリと感じられる物語だった。
最後に、子供の母親が「杏ちゃんのおかげです」というシーンがあるが、大して知りもせず、無理やり子供を押し付けていったばか親のくせに、ちゃん付で呼ぶのは違和感ありまくり。普通は「香川さんのおかげです」だろう。それとも、わざとばか親のバカさ加減を際立たせるために、あのようなセリフにしたんだろうか。
光と絶望。
売春と麻薬が常習の杏が多々羅という刑事とジャーナリスト桐野という人間に出会い更生しようと前向きに歩き出そうとする話。
刑事の顔と脱ドラッグ施設(ダルク的な)を経営する二つの顔を持つ多々羅に出会い、その施設に世話になり、そこで出会ったジャーナリスト桐野から介護施設の仕事を紹介してもらい杏の生活が少しづついい方向へと変わろうとしていたが…。(実話に基づく作品)
~子供の頃、母親からの暴力から守ってくれた好きなばあちゃんに介護してあげたいと介護施設で働き始める~
とりあえず杏の母親が常に鬱陶しいよね。
こんな母親じゃなければ家の環境も普通だったろうし、普通に優しいばあちゃんがいたりで…、子は親を選べないけどただただ観てて悲しかったです。
佐藤二朗さん演じた多々羅がなかなかヤバイ刑事でタバコのポイ捨て、ツバ吐き捨て、口悪い、罵声すぐ浴びせるみたいな感じだけど意外とホントは優しくて杏にとっては心の拠り所みたい人だったけど…、その施設を利用してる女性に立場利用して性強要とか…。
桐野にネタにされなければ施設は生き残ったかもですが、桐野は桐野の仕事をしただけ、多々羅がもう少しまともな奴で、心の拠り所でいれたなら杏は生きてたんでしょうね。
作品としては楽しめたけど実話に基づくと思うと心が痛い。
コロナがなければ起きなかった悲劇。
悲惨な生活を送っていた杏は、多々羅が主催する薬物更正グループの集まりに参加し新しい1歩を踏み出す。日記帳とヨガマットを買う場面で、万引きを思いとどまる描写に杏の決意を感じ応援したくなる。週刊誌記者の桐野に老人介護施設の仕事場を紹介してもらい経済的にも安定する。シェルターに身を隠し、初等教育を学ぶ場にも参加する。
このままいけば明るい未来を歩めたかもしれないが暗雲が立ちこめる。多々羅の裏の顔が暴露され、薬物更正グループがなくなってしまう。
更にコロナが追い討ちをかける。老人介護施設の職場を解雇されてしまうのだ。僕はここで初めて知って驚いたのだが、コロナとはいえ国から人を減らす要請があったとは知らなかった。
老人介護施設なんて どこも人手が足らなくて、いっぱいいっぱいの職場だ。非正規とはいえエッセンシャルワーカーの介護職は安泰だと思っていた。残された正規社員はてんてこ舞いだよ。
更に更にコロナは追い討ちをかける。初等教育を学ぶ場もコロナで休止になってしまう。
泥沼から抜け出し希望を見い出したかに見えた杏。 だけどコロナで居場所を失くし孤立する。ここで言う居場所とは、対面で人とつながれる場所のことだ。
しかし、ここで救世主が現れる。シェルターの隣人に押し付けられた幼な子が杏の生きるよすがになる。普通に考えればコロナで八方塞がりのところに子供まで押し付けられたらお手上げである。さっさとシェルターの管理人か警察にでも引き渡せばいいと思う。
しかし杏は自分で養うことにする。この事が杏に幸いする。放って置けば死んでしまう幼子を養うことが杏の生きる力になる。これは決して母性愛に目覚めたとか、子育ての喜びを知ったということではない。自分が誰かのため、何かのために役に立てる存在であるという思いが杏の力になる。幼子は杏に養育されているのだが、幼子の存在が杏に力を与えているのだ。
しかし、この子さえ杏の前から消え去ってしまう。杏の絶望たるや想像に難くない。絶望した杏は、自ら命をたってしまう。
ラスト、杏の最後の希望だった幼子が、再びママと生きていくことになった事に少しホッとする。
マスコミ向けのパンフレットには、杏について「希望はおろか絶望すら知らず」とあるらしい。
刑事の多々羅と記者の桐野は、杏に希望をもたらす。皮肉なことに、杏は、希望を知ってしまったから絶望も知ってしまう。2人に出逢わなければ、杏は死ななかったかもしれない。
しかし希望を知らないから絶望することもない人生は、幸せではないと思う。
コロナでは10代から20代の女性の自殺が顕著に増えた。仕事が失くなり経済的に困窮したのも原因だが、仕事をしてない10代も多く含まれる。人と対面でつながる居場所がなくなってしまい、強い孤独を感じてしまったことが原因ではないのかと言われている。男が孤独に強いのではなく、多くの男がもともと対面での言語のコミュニケーションが苦手で少ないことが幸いしたらしい。男はコロナになる前からさしてコミュニケーションとってないから変わらない。男の子のワシも個人的には分かる (^^)
確かに〝生きようとしていた〟
〝積み上げたものを自分でくずしてしまったことへの自責の念… 〟
記者の問いに杏の思いをそんなふうに語った刑事
これは職務経験からの発言だったが、あの時の自身の思いにも重なるところがあったのだろう
しかし、リークされなければこんなことにもならなかったのにと、あの状況にいて自分本位な思考がみえる様子に苛立ちが込み上げた
その自覚のなさが人を傷つけ追いやるのにその熱弁はどこか勘違いしたヒーロー的で思わず嫌なため息が出る
鈍感なのか?
麻痺しているのか?
しらばっくれているのか?
杏を思うともうそのどれでも許せない
なぜなら
身勝手な母に振り回され、生きる上での選択肢もなく、自己肯定もできずに、諦めで生気を失った目をしていた杏の姿が頭によぎるから
そんな彼女がそっと心を開いたのは、光を掴ませようとしてくれた彼の人間性を信頼したのを目撃したから
その裏切りが〝なんとか信じてみたい世界〟をついに見失わせたのを感じたから
母や刑事が自分を守る為に誰かを犠牲にしている時、杏は誰かを守る為に自分を犠牲にしていた
必死に生き直そうとし、はじめて自分の居場所を感じ笑顔を見せるようになったのに…
見捨てられる痛みを知り尽くしているからハヤトを必死に守ったのに…
悪意の手をのばす大人達によってまた踏みにじられた杏
絶望した心はきっと本人もしらないうちに重いはずの命を紙切れのようにふわりと風にのせ無のなかへ舞わせた
コロナ禍もかぶる実話をベースにしたというこの物語に心を抉られる
そして、彼女がもういないことの取り返しのつかなさがぽかりとあいた穴をさらに広げていく
杏のように涙すらもう出ない
生きようとした杏を忘れたくないだけだ
追記1
刑事の自責は、かと言って改めるものではなく、都合の良い立場を(悪さをするのに)失うことへの自分自身の残念さに見えた。
記者に疑われた時、責めたり威圧してみせたのは自己中心性の境地だと思う。
母は言うまでもなく。
追記2
嘆いていては変わらないですね。
自分のまわりからよくみつめよくかんじとり冷静に動ける大人でありたいです。
修正、追記済み
ずっと胸が痛くなる作品
あらすじを聞いてあまりに内容が気になりすぎたので初日に見に行きました。私の住む地域で唯一公開されていたとこだったためか、ほぼ満席に近い状態でそれほど注目度が高い作品なんだなと感じました。肝心の内容はというと、実話をもとに作られたとのことですが果たしてどこまでが実話なのかがものすごく気になりました。とにかく最初から最後まで救いがなく見ていてとても胸が痛くなりました。思い描いていた内容が絶望の中から希望を見出していく、それでもまたそれが崩れてそれでも希望を見出していく今年3月に公開された「52ヘルツのクジラたち」のようなものをイメージしてました。たしかにそれに通じる部分もありましたが本作はさらにそれを上回る救いの無さ。先月見たミッシングも救いのない作品でしたが本作はそれとはまた種類の違う救いの無さでした。あまりのバッドエンドすぎる感じにとにかく見終えた後のどんより感がすごかったです。1番気になったのはタタラさんがわいせつなことを行っていたという件が本当なのかどうかよくわからなかったとこ。でも本人は素直に逮捕されてるのでやっぱりそういうことなのか。物語の展開上あのくだりは必要だったのでしょうけどあれだけ熱心に薬に溺れた人たちを支援してて、わいせつなことを要求してたってところがどうもつながらず、あんにはそういうことはしてなかったし、なんかそこが自分としては納得いかなかった。でもどんな善人にも悪い心があるという部分での表現なのか。吾郎ちゃんが正しいことをしたことが結果的に人を殺してしまったことへの無念さもとても心が痛かった。そして内容の凄まじさもありながら本作は主演の河合さん、母親役の女優の方も佐藤二郎さんも各々が今まで他の作品では見たことない演技力を爆発しています。特に母親役の方は本当にぶっ殺してしまえ!と、思うほどの憎たらしさ。佐藤二郎さんもいつもふざけてばかりですが、今回はちゃんと役者をやってます(笑)この演技力の凄さにはものすごく引き込まれます。だいぶ見るのがしんどい作品ですがぜひその目に焼きつけてください。
頑張って生きたよね。
優しくて責任感のある女の子だったんだろうな。
あのひどい生活環境で頑張って生きたよね。
壮絶な人生の中でもほんの短い時だけでも希望を持って充実していたならそれだけが救いです。
世の中の貧困家庭と苦しむ子供が少しでも多く救われる事を祈ります。
河合優実さん、素晴らしい俳優さんですね。
貧困の現実を描くにしても、ここまで不幸と不運のオンパレードにする必要はあったのだろうか?
子供を金づるとしか思わない毒親のせいで、小学校を中退し、売春を強要され、薬物中毒者となった主人公の悲惨な姿を見ると、しっかりと立ち直って健全な人生を送ってもらいたいと、心から思ってしまう。
やがて、彼女を取り調べた人情派の刑事のおかげで、薬物更生者の自助グループに加わり、介護施設に働き口を見つけ、DVやストーカー被害者用のシェルターに住み、夜間学校に通い始めて、彼女が「まとも」な生活を送れるようになると、本当にホッとした気分になる。何よりも、それまで死人のようだった主人公の顔に、みるみる生気が満ちてくる様子を見るだけで、胸が熱くなった。
しかし、女性の体が目当てだったという刑事の裏の顔が明らかになって自助グループが閉鎖され、コロナ禍のせいで仕事を失い、学校も閉鎖されると、主人公の幸せな日々は、一気に暗転することになる。
隣人から突然預かった赤ん坊を、主人公が四苦八苦しながら育てる様子に、微かな希望を感じ取ることもできるのだが、偶然出会った母親に、人質同然に赤ん坊を奪われたことにより、主人公は、再び売春と薬物に手を染め、やがて取り返しのつかない選択をすることになる。
ここで、いくら実話がベースでも、貧困の現実を描くのに、何もそこまで不幸と不運の連鎖を作り出さなくてもいいのではないかと思ってしまうし、あまりに救いのない結末に、何ともいたたまれない気持ちになってしまった。
確かに、薬物中毒から抜け出すことは難しいのだろうが、悪徳警官とか、コロナ禍とかの特殊な事情を持ち出すのではなく、むしろ、一般的な状況で、それを描いた方が良かったのではないかとも思う。
劇中、真実を報道したことに葛藤するジャーナリストが出てくるが、そもそも、自助グループを運営するよう人は、善意からそうしているはずであって、それを、下心があることが当たり前の「必要悪」のように描いているところにも違和感がある。
ラストで、コロナで死んだとばかり思っていた赤ん坊が、元気で生きていたと分かったことが、この作品の唯一の救いと言えるだろうか・・・
どこまでが実話なのかはわかりませんが、あまりに希望がなさ過ぎる。
かなりヘビーな映画です。
石原さとみのミッシングも重く苦しい作品でしたが、個人的に本作はさらに重く苦しい印象。
ミッシングはうっすら涙ぐみはしましたが、本作は涙が暫く止まりませんでした。
自分を痛めつけることでしか生きてゆけない悲しいひとりの少女が、あるひとりの中年男性とひとりの男の子により、前を向いて生きようとするのだが、娘を自分が生きるための道具としか思わない母親(親と呼ぶにはあまりに鬼畜過ぎて言葉にならない)に行く手を阻まれ、悲劇的な結末をむかえます。
彼女は生きていて、本当に幸せだったのだろうか、誰にも何にも救ってもらえない彼女を神様はみるに見かねたのでしょうか。
そんなことを考えたら涙が出てきました。
言い忘れましたが、河合優実さん良かった。
全145件中、121~140件目を表示