あんのことのレビュー・感想・評価
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あんはどこにでもいる (追記)(追記2)
絶望さえ知らなかったあんが希望を持ち前へ進んでいく。
救ってくれた刑事、仕事、始めた勉強、慕ってくれる老人、押しつけられた子供、子育て。
すべて奪われ、失ってしまったあんは自ら命を絶つ。
救いのないストーリーだが、実話がもとになっている。
この映画のあんは実際にいた。
いや今も私たちのすぐそばにいる。
数年前、職場に体験学習に来た高校生に宿題を出した。
今日どんなことを教わって、どんな体験をしたかを親に報告してくださいと。次の日、「お母さんは疲れているからと言って私の話なんか聞いてくれなかった」と悲しい顔で答えてくれた女の子を思い出した。
この豊かな国の現実。
寄り添ってくれる人、支えてくれる人がいれば。
「関心領域」を思い出した。
私たちは気づかないふりをしているだけ。
子供を押し付けられるのが唐突すぎて。
それまでに少しでもあの母(早見あかり)子との交流が描かれていれば、最後のシーンがもっと生きてきたのでは。
刑事の裏の顔も必要だったのだろうか。
高速うどん早打ち少女から、主人公の友だちの眼鏡っ子ビート板、数々の話題作で出番は少ないながらキラリと輝き、主演作では抜群の破壊力、いや演技力で、世のおじさんたちを虜にし、不適切の純子ちゃんで国民的スターとなった、いまや主演作品がカンヌで受賞、と世界が注目する女優となった河合優実。
あらためて素晴らしい女優さんだと思う。
どこか山口百恵に似ていると思う。
(追記)
映画なんだから、せめて少しは希望のある終わり方がよかったと思う人は多いと思う。
しかし、それだと「あぁ良かった。いい映画だったな。」で終わってしまうだろう。
どうしようもなく救いのないストーリーであるが、この映画はそれが現実だと突きつけてくる。観終わった後、何かアクションを起こさなければ、と考えさせられる。
あん、あんのこと、どこにでもいるあんのことを、映画の中だけのことではないと、この映画は、そして河合優実の演じているとは思えないほどの存在感が、観た者の心に訴えかけてくる。
観るべき作品だと思う。
(追記2)
2回目鑑賞。
途中音楽が流れていないのに気づかないくらい見入ってしまった。
「ミッシング」 今までのキラキラしたイメージを捨てて熱演している石原さとみがいた。
「違国日記」 前作に続いてガッキーではない女優新垣結衣がいた。
「かくしごと」 母となり母を演じる杏がいた。
「蛇の道」 フランス語を話しフランスでさまになってるカッコいい柴咲コウがいた。
「朽ちないサクラ」 最後の最後に期待に応えて泣きの演技を見せてくれた杉咲花がいた。
そして今作「あんのこと」には、ただあんが、会ったことはないけれども、そこには香川杏という女性が存在していた。河合優実の凄さだと思う(めっちゃ贔屓目)。
テレビ番組で初めてバラエティーに出た河合優実が、ゆりあんレトリーバーと一緒に「受賞した女優のリアクション」のネタをしていた。とても楽しそうだった。
河合優実はきっと何らかの賞は獲るに違いないから、その時は思い出して笑ってしまうだろうな。
ここ2.3年で映画を多く観るようになった私は否が応でも河合優実とい...
ここ2.3年で映画を多く観るようになった私は否が応でも河合優実という俳優から逃れられなくなった。昨年なんか観る映画観る映画みんな河合優実が出ていてそしてそのどれもが印象深い演技だった。
実話をもとにしているということもあるのだろうが演じるではなくそこに確かに居るというような存在感を放つ彼女は本当に素晴らしい俳優だと思う。共演者の佐藤二朗も「彼女は僕が10年かけて手に入れたものをもう持っている」というようなことをインタビューで語っていたけれど同意しかない。
その佐藤二朗演じる刑事がこの映画を私に最後まで見せてくれたように思う。今時こんな刑事がいるのかいきなりあんな行動をする刑事がいるのかと。取調室のシーンは不謹慎にもクスッと笑ってしまった。実在の人物をモデルにしているそうだけどどことなくフィクションじみた存在の彼がなんとかこの目をそらしたくなる物語の終わりを私に見せてくれた。
そんな二人を見守る、監視しているのかもわからないが、稲垣吾郎演じる週刊誌記者の役もハマり役だったように思う。ばるぼらもそうだったのだけれどなんかこう文字を書く役が合うように思う。彼が文豪役の映画とか見てみたい。
とにかく演者の演技が誰も彼も素晴らしかった。どの人物からもこの物語を伝えなければという気概を感じた。
その大本は監督の思いからなのだろうか。コロナ禍で知人が亡くなり何があったのかを残しておきたいというようなことをどこかで見た気がする。あの頃家族がコロナになったのが一番大きな出来事くらいで粛々と日常生活を送っていた私には思い至らない世界を見せてくれたこの映画を、やっぱり見に行ってよかったと思う。楽しくはない。救われない。でも救われるばかりだった杏が誰かを救えるようになっていたことが、私にとってはこの物語における唯一の救いだった。自分の知らない世界をまた一つ知ることができたように思う。
ツラいけれど観るべき
とにかくツラい。見通すのも苦しくなるほどに。
しかしこうした生を送った女性がいたということを我々は知るべきだ。社会の一員として。
この映画には数々の問題が含まれている。ネグレクト、DV、児童虐待、売買春、性的搾取、貧困、麻薬、依存症、セーフティネット、報道、そしてなによりもコロナ禍による断絶。
彼女をあそこまで追い詰めたのはコロナ禍なのか、社会なのか… いや、コロナ禍に押し潰されない強度を持った社会を築けなかった我々の責任だろう。
しかしカメラはそうした残酷な状況を描くだけでなく、時に訪れる幸せもきちんと捉える。
シェルターで一人暮らしを始める時に窓から外を眺める表情。日記を万引きしようか考えた挙げ句にヨガマットをプレゼントとして買う瞬間。漢字ドリル。またシャブに戻ってしまったときに「大丈夫だ」と繰り返してくれる人。ハンバーグ。玩具。公園。
それをほんの少しの台詞とともに微細な表情で感じさせる河合優実の演技はまるで本当にそんな子がそこにいるかのように圧倒的だった。複雑な面を持つ役を演じた佐藤二朗も素晴らしい。
とはいえ、冒頭のシーンが再度映されたときの「この時だったのか」という絶望感は衝撃的…
ツラいけれど、絶対に観るべき映画。
忘れられてしまう人々の悲劇
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