あんのことのレビュー・感想・評価
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こんな胸糞な映画あるだろうか。 毒親では足りないほど気の狂った母親...
こんな胸糞な映画あるだろうか。
毒親では足りないほど気の狂った母親の元にいるのは可哀想すぎた。薬に手をつけてしまうのはやむを得ないと思わせてしまう環境。
そんな彼女を支える刑事と記者の存在はどれだけ救いとなっただろうか。更生して母からの支配からも逃れることができて笑顔も見せるようになって、やっとこれからって状況の時に…
コロナという閉鎖的な状況もあり、あまりにも容赦のない展開に口をあんぐり開けたままとなった。
目を背けたくなるが同じような境遇の人がいること、目を背けてはならない。
観たあとも胸に残る
これが実話なのか、、、物語が進むにつれてその境遇に衝撃を受け、さらにそれを演じる河合優実にも衝撃を受ける。どうか、どうか救われてほしい、そう願いながら叶わぬ結末に観おわったあとも気づけばずっと頭から離れない。
家に帰りこれを書きながらもう一度涙が流れた。
今日も日本のどこかで繰り返される
『香川杏(河合優実)』は生活力の無い母親から暴力をふるわれて育ち
十二歳の頃から売春を強要され、
小学校にも通えず
二十一歳の今では麻薬も常用するように。
「私、頭が悪いから」と、ことあるごとに口にするも、正しくはない。
単に学ぶ機会が無かっただけで、
何かの際にはどうすれば良いのか、
誰に頼れば良いのかを知らないだけ。
無口なのも、どう表現すれば良いのかを学んでいないだけ。
そんな彼女が、型破りな刑事『多々羅(佐藤二朗)』に出会ったことで
更生への道を歩み始める。
『多々羅』は麻薬中毒者の面倒を親身に見、
自助グループさえも個人的に組織する。
しかしそんな彼も二面性を持つのが世の常であり、
後々にスレ違いを生む一要素に。
また『多々羅』主宰の「サルベージ赤羽」に出入りする
雑誌記者の『桐野(稲垣吾郎)』も同様。
『杏』に親身になる一方で、
『多々羅』の近くに居るのは何らかの理由があることが、
ちらほらと示唆される。
これも後に、正義と情の狭間で懊悩することに。
物語が始まるのは、コロナが流行する前の東京。
順調に世間並みの暮らしに近付いていた主人公は
コロナが猛威をふるうとともに、
一つ一つと退路を断たれ、
次第に立ち行かぬ状況に追い込まれる。
2020年のあの頃。我々が伝染病の影に怯える裏では、
こうした惨事があちこちで起きていたに違いない。
自身の子供を、生活のための道具くらいにしか考えていない親は、
残念ながら多いのだろう。
本作の『杏』の母親は、
日頃は罵詈雑言と暴力を浴びせるのに
時として「ママ」とあり得ない呼称で娘を呼び
強く懇願する。
本来であれば暖かい単語が、
ぞわっと背筋に突き刺さるように聴く者の耳に入って来る。
離れたいのに切れない血縁に縛られるのは
どれほどの絶望感か。
そしてまた肝心な時に、信頼し頼ることのできる人間が
身近に居ない心細さはいかばかりか。
冒頭、重い足取りで明け方の街を歩く主人公の背中を追うシーンは
終盤で再び繰り返され、
そこに我々は深い悲しみを見る。
自身の力だけでは、どうにも抗えない
世間や社会に対しての。
新聞には毎日を目を通していても、
本作の元になった事件は
たぶん読み飛ばしているのに違いない、
既視感のある、ありがちな記事として。
しかしその背景を詳しく知れば、
心が引き裂かれるほどの背景が詰まり
困窮する多くが遍在することを理解する。
その義憤を映像に繋げた『入江悠』も見事だし、
カラダを張って監督の期待に応えた『河合優実』にも
賛辞を贈らずにはいられない。
今年一番の衝撃作。悲しすぎて涙が出ない
影と光
どう感想を書いたらいいのか…それくらいこの映画に動揺している。
閉鎖した状況から逃れられない人物に寄り添い、描き続けている入江悠監督。
今作では親から虐待を受け続け、覚醒剤や売春に手を出してしまった主人公杏に、今迄以上にそっと寄り添い、見つめている。
単純に良い映画という事を許されないような、監督の憤りの様なものを感じる。
壮絶な映画。暫く頭から離れそうにない。
兎に角、杏を演じた河合優実さんが素晴らしい。
箸の持ち方や筆記具の持ち方だけでも、育ってきた過程が見えてくる。
特に中盤、杏が更生に向かい、仕事が安定し、行けなかった学校にも通い始める所は、普通の生活と学ぶ事が楽しくて仕方ないという感じがする。そんな表情の変化が見事。
また、照明も初めは人物を影に納めながら、杏の変化とともに光を入れていくのが見事。
そして、杏と刑事の多々羅、ジャーナリストの桐野の3人のシーンが何とも良い効果。暖かくなるんです、その段階では!
ここから始まる地獄。
「人は良い事をしながら悪い事をする」と言ったのは、池波正太郎先生だったか、彼は欲望と贖罪に揺れながら生きて来たんだろうな。うん、佐藤二朗さんというキャスティングは見事だ。
正しい事と思いながらも、揺れ続ける桐野の稲垣さんも見事!
そしてコロナ禍が、築き上げた関係性全てを無にしてしまう。
不意に預けられた子供を虐待の連鎖なんて起こさず、ちゃんと育てようとする姿に杏の本質が垣間見える。依存していた部分があるとしても。
だからこそ、最後の絶望は辛すぎる。あそこで母親を刺せる杏なら、死にはしなかったんだろうな。けど、自分を傷付けても人を傷付ける事が出来ないのも杏の本質なんだろう。
まだ、ちゃんと咀嚼しきれてないけど、今年ベストの映画になりそうな気がする。
そして、今年の主演女優賞は河合優実さんにあげて!
#あんのこと
絶望と閉塞感
絶望と閉塞感に満ちていますが、そこに指す微かな希望や光をもっと対比として鮮明に落とし込み描かれていれば、更に良かったかなと少し残念に思いました。
またディテールが消化不良で、ストーリーに深みが無くなってしまったようにも感じました。
それは週刊誌記者の桐野と刑事の多々羅の描き方にも現れています。善人か悪人かパーソナリティーの表現が中途半端で、もっとドロドロした人間臭さを出した方が面白かったと思いましたが…。
あと確かに近頃の若手の中では河合優実は良い演技をしていると思いますが、演技力についてはややワンパターン気味だし、皆さまが絶賛する程そんなに良いかな?
実力があって評価されていない人は他にも沢山いると思います。
ただ、今過大な評価をするのでは無くて、コレから更に期待出来る可能性の有る役者だとは思いますが…。
人生で見た最高の映画
切ない作品
河合優実は本当に存在感があり、素晴らしい演技でした。目を引くような美人ではないが、山口百恵のような日本的美しさがある女優。悲しくて過呼吸になるシーンは、命をすり減らして演技していると感じました。
多々羅のことは力強く優しい父親のように感じていたのかな。自分を助けてくれて、信じていた刑事の裏切り。新型コロナの感染で自宅待機となり、施設の入所者やスタッフとの繋がりが途切れてしまった。最初は扱いに困っていた子供も、彼女の生き甲斐になっていた。
度重なる不幸の連続に、衝動的に覚醒剤を使ってしまう。積み上げてきた努力を自ら台無しにしてしまったその自責の念に耐えきれなかった。自分に期待してくれている施設の入所者や関係者など、心の支えとなっている周りの人達に申し訳ない気持ちもあったのでは。
彼女の人生がうまく行き始めると現れて、肝心なところで邪魔をする母親。あのような母親がどのようにして出来たのか気になった。
もう少し生活の基盤が確立し、もう少し自分に自信が持てるようになり、もう少し強くなっていれば、何とか乗り越えることもできたのかな。
酷い人生を歩んできたが、弱者に寄り添える優しい娘。悲しい結末がとても切ない作品でした。
【”絶望と諦念の日々からの微かな灯。そして・・。”今作はコロナ禍に起きた出来事を基に入江悠監督の鎮魂のオリジナル脚本に応えた、河合優実さんを始めとした役者陣の渾身の演技に魅入られる哀しき逸品である。】
<感想>
■入江悠監督の練り込まれた鎮魂のオリジナル脚本の凄さ
・悲しき出来事をベースにしながら、オリジナル要素である
<シェルターマンションに避難していたあん(河合優実)の元に、同じマンションの男とトラブルを起こした女(早見あかり)が、幼子ハヤトを押し付けて逃げ去る所からの、コロナ禍の中、仕事と学びの場を失いつつも、あんがハヤトを懸命に育てる姿。>
を練り込んだ事により、あんの人間性の清さ、強さ、尊さを際立たせた事である。
故に、彼女が遺したハヤトの食べ物の好き嫌いを記した燃え残りの日記の頁を親である女が見るシーンは、哀しい。
■脚本に応えた役者陣の渾身の演技
・勿論、筆頭はあんを演じた河合優実さんである。冒頭の目の下の隈を作りながらフラフラと歩く姿から、クスリの誘惑に負け泣き崩れる姿や、懸命に再生しようと介護施設で高齢者を介護する姿。
無理やり押し付けられた幼子ハヤトをDVの負の連鎖に嵌らずに、懸命に育てる姿。そして、ハヤトがご飯を食べる姿に喜ぶ優しき表情。
更には、再び絶望に突き落とされ、再びクスリを打ち、日々記していた日記を焼く姿。
ー 河合優実さんの出演作はデビューからほぼ全て見ているが、どんどん凄い女優さんになって行く。ー
・怪しげでありつつ、善性も併せ持つ不可思議な雰囲気を漂わせる刑事、タタラを演じた佐藤二朗さん。
あんの再生の手助けを懸命にしつつ、サルベージ赤羽に通うミヤビと言う女性を恫喝し性的関係を強いていたアンビバレンツな男を怪演している。
ー 佐藤二朗さんと言えば、ご存じのように福田雄一監督の数々のコメディ映画でおバカな演技をしているイメージが強いが、監督・脚本を務めた「はるヲうるひと」や「さがす」でのシリアスで、場合によっては悪辣な演技も凄い。今作では、後者の面が炸裂している。ー
・毒を振りまく母を演じた河井青葉さん。
あの役の演技はさぞやキツカッタだろう。鬼気迫る演技であるが、あの毒母を河井さんが見事に演じた事により、この映画の底知れぬ怖さに奥行きを齎している。
特に、あんに縋る時に彼女を呼ぶ”ママ、ママ・・。”と言う声と表情には観ていて、激しく嫌悪感を催すが、河井さんの演技が凄いからである。
<今作は、毒を振りまく母親に人生を蹂躙されながらも懸命に生きた若き女性の半生と、現代日本の数々の闇を抉り取った入江悠監督の練り込まれた鎮魂のオリジナル脚本の凄さ及びそれに応えた河合優実さんを筆頭にした役者陣の渾身の演技により成立している悲しみ溢れる邦画の逸品である。>
ぐちゃぐちゃになった感情を引きずる
重く生々しく、良くも悪くも未知の領域
暗澹たる日本の現実を思い知る
超怒涛の衝撃作です。2021年夏、東京五輪の開会式に合わせブルーインパルスが青い空に真っ白な五線を描く、その下で少女が自らの命を絶った。あの思い出したくもない不快なオリンピックのポスターを随所にさりげなくフレームに移り込ませ、本作の時代設定を示すと同時に、その表と裏をくっきりと本作は焼き付ける。
実際の出来事に基づく、と冒頭のテロップ。よもやよもやの展開に疑念の余地を一切与えず、まるでドキュメンタリー映画のように対象に張り付く。ちょいと邦画では珍しく、米国の社会派映画の荒々しさで深層に迫る作劇。だから例えば稲垣吾郎扮する週刊誌記者が河合優実扮する主人公・香川杏に名刺を差し出すも、名刺を画面にアップしない。例えば杏がお婆ちゃんにケーキを買ってきた時、おり悪く毒母が男を連れ込んで登場するシーン。身も心も少し安定した杏を象徴するショートケーキが、映画では必然のようにグチャグチャにされる描写、当然に崩れたケーキをアップでカットするべきを、敢えてしない。積み重ねる映画的描写を捨て、切り返しも最小限に、リアルを覗き見る手法。
だから観ていてとても辛いのです、刑事・多々羅役の佐藤二朗も、ТV「不適切」で一躍メジャーとなった河合優実も知ってはいるけれど、あまりにリアル。そんな中やっと登場のメジャーな稲垣吾郎を観ると、当たり前ですが本作は再現フィクションと言う免罪符を以って、少し落ち着いて観る事が出来る程。とは言え、後半押し付けられた幼児の登場するシーンに至っては、明らかに泣きじゃくる幼児をフレームに収めながら取っ組み合いの喧嘩なんて、もう胸がはち切れそうなのです。無論、最大限のケアの下での撮影でしょうけれど、逆に役者も大変とつくづく思います。
こんな義務教育すら満足に受けられていない子供達、7人に1人が貧困生活、給食以外に食べ物もない少年・少女が確かに現在の日本にいる現実。全く機能していない我が国の為政者の実態が、あの青空のジェットスモークだと言う事。悪事も悪評も何時の間にか霧散して消えてしまうとばかりに。
それでも一方では地道なボランティア精神にいそしむ人々がいることを本作は確かに伝えてくれる。薬物依存脱却のための施設、まるで米国映画でしか観る事の出来ない集団での発言シーンは素晴らしい。人手不足の介護の現場職員も、DV避難の住居提供も、頭が下がる思いです。しかし、よりによって薬物依存脱却施設での悪事が週刊誌記者によって暴露され、砂上の楼閣のように拠り所が崩壊してしまう悲劇。被害者がいる以上、暴露し成敗せざるを得ないでしょうし、全く同次元でコロナ禍での閉鎖も主人公を追い詰める結果を導いてしまった悲劇。
冒頭からの茶髪を多々羅の庇護の元、ショートにカットした主人公、殆ど中学生くらいにしか見えない主役・河合優実。絶望の苦痛の表情をアップでまるで切り取ってくれない作品ながら圧巻の演技です。ちょっと前までは杉咲花の独壇場の役でしたが、時は移り今は河合優実だと強烈に印象付けられる。佐藤二朗も殆ど主役扱いで、普段はコメディタッチが多い事が逆に活きる。ベテランでしたら内野聖陽がぴったしの役ですがね。稲垣吾郎にはラストの自殺に驚くシーン以外にさしたる見せ場なく、少々勿体ない。最大のヒール役である毒母に扮した河井青葉はよくぞ頑張った、昨日観た「かくしごと」にも出てらっしゃったのね。
無謀にも幼児を押し付けた女に警察が言う「後悔してませんか?」と。このセリフ1つで幼児のその後の容態が一挙にクローズアップされ、最後になってその傍らに元気な姿を確認出来ほっとする段取りはいいけれど。が、あんたが無謀な事をしなければ杏は生きていたはずと、手を繋ぐ親子の最終カットに心底腹立つのです。
絶望の中に感じたもの…
「可哀想」が際立つ
公開当初から評判が良かったので劇場へ。
入江悠作品は何本か観てきたけど、やっぱりあんまり私の趣味とは合わないのかな。
河合優実の演技は光ってるし、「自宅が地獄」っていう残酷なシチュエーションも効いてる。
救いを与えてくれる人は皆途中で退場、地獄だけが向こうからしつこく追い掛けてくる。
思い返せば、あの毒親も自分の母親を守る為に客をとっていたんだろう。
公的な支援や活動も、時には牙を剥き、守るべき弱者から順に襲いかかる。
ただ、作品としては最終的にそんな主人公が「可哀想」に終始してしまった気がする。
多々羅の件もイマイチ腑に落ちないし。(個人的に佐藤二朗が苦手ということもあるが)
ホントなら、あの男の子は彼女が残した数少ない「優しさ」「生きた証」だったはずなんだけど、ほぼ懐いた様子もなかったし。もう少しここの光を描くか、逆にもっと突き放すかしてくれたら、印象は違ってたと思う。
早見あかり扮する無責任な母親にフォローされても「お前が言うな」って感じ。
必死で頑張っても仇で返され、苦しんで苦しんで、それでも闘ってそして…
次は?
行き止まり?
このラストまでが実話なのであれば、もちろん取って付けた様な美談にすることはできないってのも分かる。
でも、「可哀想」で終わるよりは「それでも彼女は必死で生きた」という部分がもう少しあれば。
そんな変なモヤモヤが残った。
なんでも最後は
衝撃作
クソな母親に怒りの感情が止まらない、佐藤二朗ー‼️頑張ってくれよ。お前だけが頼りだったのに。惜しい。
吾郎ちゃん、もう少し早く気づいてよ。
これ、大体は実話ですよね。
悲しいね、頑張ったのにね、あと少し乗り越えていたらね。
ノート、燃やしたくないのに燃やす気持ちが痛いほど分かったよ。
余談
河合さん、上戸彩にも石原さとみにも見えました。
シャネルズを久しぶり聴きたくなりましたね。
世の中には正しい判断でも、それは最善とはならず、最悪の結果を招くことになりかねないことを強く印象づけられました。
2020年6月に新聞の小さな三面記事に掲載された、ある少女の壮絶な人生をつづった記事に着想を得て制作された作品です。
機能不全の家庭に生まれ、虐待の末にドラッグに溺れた少女が人情味あふれる刑事や更生施設を取材する正義感を持つ週刊誌記者といった人たちに出会い、生きる希望を見出していく姿が描かれます。
●ストーリー
21歳の主人公・香川杏(河合優実)は、ホステスの母親春海(河井青葉)と足の悪い祖母恵美子(広岡由里子)と3人で暮らしてきました。幼い頃から母親に暴力を振るわれ、小学4年生から不登校となり、12歳の時に母親の紹介で初めて体を売ることを強要されました。そんな過酷な人生を送ってきたのです。売春を強制されるなかで、客からシャブ中毒されてしまい、覚醒剤をやめられない身体になってしまったのです。
ある日、覚醒剤使用容疑で逮捕されて、多々羅保(佐藤二朗)という人情味あふれる刑事から、取り調べを受けます。釈放後に多々羅から「薬物をやめるための自助グループ」の参加を勧められます。
大人を信用したことのない杏でしたが、なんの見返りも求めず就職を支援し、ありのままを受け入れてくれる多々羅に、次第に心を開いていくのでした。「自助グループ」では頻繁に顔を出す桐野達樹(稲垣吾郎)と知り合います。彼もまた杏の身を案じ、勉強を教えたり仕事を紹介するなどのサポートをすることで、就職も決まり、住まいも探し始めて、まっとうな生活への道を歩き出すのです。
けれども桐野は、週刊誌の記者でした。多々羅に近づいた本当の理由は彼に関する疑惑を突き止めるためでした。「多々羅が薬物更生者の自助グループを私物化し、参加者の女性に関係を強いている」というリークを得て、慎重に取材を進めていたのです。
多々羅は、グループに通う女性に関係を持とうとした疑惑があり、刑事である立場と薬物を利用したことで前科のある立場を利用して関係を迫り、さらには彼女以外にも同様の手口で関係を持ったことが桐野の取材によって明らかになります。
もちろん記事になり、多々羅は刑事をクビになり、さらには逮捕までされてしまうことに。その結果、杏の甦生の拠り所だった「自助グループ」も解散。さらに追い打ちをかけるように突然のコロナ禍によって、仕事も失い、杏がやっと手にした居場所や人とのつながりは、あっという間に失われてしまいます。行く手を閉ざされ、孤立して苦しむ杏。そんなある朝、身を寄せていたDV被害者らのためのシェルターマンションの隣人三隅紗良(早見あかり)から思いがけない頼みごとをされるのでした。
●解説
映画の前半、トントン拍子に事が運びます。多々羅は業務の外で薬物中毒者を更生させる団体に杏を誘い、社会復帰のために役所と掛け合います。杏は理解ある経営者に出会って介護の仕事に就き、行政の支援を受けて母親からも独立することができました。意志あるところに道ができるもの、世の中は捨てたものではありません。他人のために本気になる人たちに胸が熱くなるし、杏が抱く夢を観客も共有し、応援したくなるような展開です。希望がすぐそこに見えていたはずでした。
ところが後半、杏を取り巻く環境はことごとく反転します。コロナ禍の職場で、杏のような非正規雇用者は真っ先に雇い止めにあい、行き場を失います。夜間中学は休校。母親にも見つかってしまうのです。そして希望を打ち砕く一撃が加えられ、杏は再び社会の底へと沈んでゆくのでした。貧困、虐待、売春、薬物中毒と現代の問題がズラリと並び、格差社会の底辺に落ち込んだ弱者の再起がいかに難しいか、その立場がどれだけもろいか、端的かつ印象的に示されます。しかし一方で、明暗の転換があまりに劇的。特に多々羅の変身は極端で、映画の流れとしてはご都合主義的とも思えるほどでした。
ところが、杏のたどった運命や登場する人物の背景など、基本的に事実だというのです。物語自体は虚構とはいえ、現実の残酷さに別の衝撃を受けることになります。映画なら杏を救う結末も可能だったはずでしょう。入江悠監督ら製作陣は、あえてこの、やり切れない結末を選んだのでしょうか。もう一人の杏を生まないために何ができるか、見る側にも切々と問い掛けている作品です。
監督・脚本は「SRサイタマノラッパー」で話題を集めた入江悠。今回はオーソドックスな落ち着いた演出で、杏の身に起こったことを描き出します。無駄な台詞を極力排し、彼女の優しい心根、感情をていねいにすくいとっていきました。時にカメラを激しく動かして臨場感を高め、ドキュメンタリー的な効果も生み出しています。特筆すべきは、河合優実の喜びや痛みを込めた気迫あふれる存在感。心の変化を映す「思い」の力に圧倒されます。
河合は撮影前、入江悠監督と共に、主人公のモデルとなった女性について取材を重ねたといいます。そうして役と一体化したからこそでしょうか。想像していた以上に杏の痛みと苦しみが胸に迫り、生きる力を得ていく姿がまぶしいのです。もはや演技の域を超えていると言ってもいいほどなのです。ドラマ「不適切にもほどがある」で演じたネアカで親の愛に恵まれた不良娘の対極にある底辺のリアル。この河合の振り幅はすごかったです。 また、人懐っこさとだらしなさが共存する刑事役の佐藤二朗。情熱的でありつつ、風変わりで笑いも誘う多々羅は、演じる佐藤の個性も相まって、とても魅力的に映りました。 人情とジャーナリズムの間で苦悩する記者役の稲垣吾郎は、だれかを断罪しても胸は晴れないコロナ禍の空気を体現しています。
●感想
どん底の境遇にいる少女が、支援者の献身と本人の努力で立ち直る。そんな物語なら、どんなによかったことでしょうか。実際の出来事をモデルにしたとはいえあまりに重く、そしてだからこそ切実に社会のひずみを突きつけるのです。
生活保護、特別養護老人ホーム、薬物更生の施設や自助グループ。更にDV被害者らのためのシェルターマンションや、夜間中学での日本語学習など、杏の生活や行動に即して様々な制度や活動が紹介されます。しかし、それらがいかにもろいシステムか、新型コロナの登場で歴然となるでした。
杏が置かれた状況は言葉を失うほど過酷で、コロナ禍で彼女が追い込まれていく結末には胸がつぶれる思いがしました。けれども、最も印象に残ったのは、未来を切り開こうとした瞬間の杏の表情です。河合がモデルとなった女性の人生を尊重し、懸命に前を向いた人として演じた証しでしょう。年齢よりもあどけなく、はにかんだ笑顔が忘れられません。杏が救われるチャンスは何度もありました。個人だけではなく社会ができることは何か。彼女がつないだとも言える命を映し出すエンディングが投げかけるものは大きいです。 結局一番の悪者は、私たちの隣にいてもおかしくない杏への「無関心」という魔物なのかもしれません。
物語のターニングポイントは、何と言っても桐野の正義感。刑事ともあろう者が、助ける代わりに見返りを求め、さらには性的な強要までしているという職権濫用を暴いたわけだから、桐野の行ったことは確かに正しいと思います。
しかし、桐野の暴露記事で多々羅が解雇及び逮捕されたことによって、これまで支えとしてきた自助グループの面々は、これからどうなってしまうでしょうか。
薬物に依存したくなる強い衝動に対して、一つ一つの日々の積み重ねが大切であると強く語ってきた多々羅の言葉、そしてデトックスのため多々羅の指導で定期的に続けてきたヨガも、胸の内を語るグループセラピーも、自助グループに集っていた者たちにとってどれだけの励みになっていたことでしょうか。
それがなくなってしまうことで明らかに心身のバランスは崩れたに違いありません。もしかしたら再び薬物に手を出してしまうことだって考えられます。
杏もまたその1人であり、せっかく太く繋げてきた糸がプチンと切られたかのような絶望感を抱いていくのでした。
すべてが終わった後に、うずくまる桐野。自分の記事がすべてをぶち壊したことを、獄中の多々良にぶちまけます。そして自分は本当に正しかったのかと尋ねるのです。
本作のもう一つのテーマは、桐野の懺悔を通して、「正義」というものを考えさせられることです。世の社会復帰のために役所と掛け合います。杏は理解ある経営者に出会って介護の仕事に就き、行政の支援を受けて母親からも独立することができました。意志あるところに道ができ中には正しい判断でも、それは最善とはならず、最悪の結果を招くことになりかねないことを強く印象づけられました。
衝撃作、大人達の欲に子供が犠牲、誰が一体守ってやるんだよ! 本当に心打たれた!
最近、配給でキノフィルムズさんを良く見掛けるように成ったね。
過去何作か鑑賞した事はあるが 今一歩作が多かったかな。
しかし近年、”騙し絵の牙”や”碁盤斬り”など 作品に非常に魅力を感じる物が増えたと思う。
そして今作を鑑賞したが、お見事であった。
作品への目利きがモノを言うのだが、近年非常に鋭く優れてきてると感じます。
素晴らしい作品を発掘し上映機会を広げて頂いてる事に深く感謝いたします。
今日は「あんのこと」を鑑賞しました。
この作品をズバリ語ると、”違国日記”の真逆側位置に当たる感じがします。
作品比較するのは良くは無いのですが、どちらも少女を主としての描写、その後を描く流れ展開が同じに捉えられます。そして
向こうの作品は 女性達によって影響し心情変化がしている事に対し、
この作品は、男性達によって心情変化していると思います。
(本作のこと)※実話ベ-ス
監督、脚本:入江悠氏
上映時間:113分/PG12
-----役者陣-----
・香川杏(不遇の少女):河合優実さん
・多々羅保(人情ある型破り刑事):佐藤二朗さん
・桐野達樹(週刊誌記者):稲垣吾郎さん
・香川春海(杏の駄目母):河井青葉さん
・香川恵美子(杏の祖母):広岡由里子さん
・三隅紗良(隣人、幼子の母):早見あかりさん
実話ベ-ス展開にて、少女杏の事(生きた軌跡)が描かれています。
生まれた時から虐待、小学校にも禄に行けず、親から売春斡旋させられて暴力受ける。全く酷い母親だ! なんて女なんだ、こんな母親は死ねば良いと本当に思う。
売春で同時に麻薬患者にも接触しシャブを打つようにもなる。
中学中退、売春、麻薬、そして逮捕補導。PG-12も頷ける内容です。
こんな人生既にリ-チで詰んでしまってる少女を、破天荒な刑事と、記者が寄り添い 何とか更生させていく話展開です。
女性からしたら こんな酷い仕打ちの作品観たい?と思うかもですが、
最後までご覧頂いたら きっと心の底から彼女へ手を差し伸べたい想いで
心いっぱいに満ちると思います。
特に、あれだけ人生荒れてた彼女が 介護施設で立派に働き老人に接していて
その姿に目を見張ります。
給与明細住所発送の手違いで働き先がバレて
虐待母親が施設へ乗り込んできて、娘へ凄く暴れる場面。
少女杏が皆さんに迷惑をかけたと、辞めないといけないと思い下駄箱を片づけようとした所。社長(施設責任者)が辞める必要は無いよ、皆で考えようと言ってくれて、杏が ”本当にすみません、ごめんなさい” と涙ながらに言葉発するところは
凄く涙し心打たれました。
こう言う周囲への配慮、感謝と謝罪が言葉に出来るくらい確り更生した姿が、
観ている側の心の奥底まで触れてきて 見ていて"良かった"の思いで一杯です。
多分、彼女以上の年齢の方なら 何とか彼女へ手を差し伸べたいと思うでしょう、きっと。
やがて、コロナ感染の闇が世間を包み、非正規社員の介護師(杏)は休業をしなくてはならず、そんな中 破天荒刑事も薬物患者を救う会(サルベ-ジ)の人と怪しい繋がりを指摘され記事になり逮捕。ネタを記事にしたのは一緒に杏へ手を差し伸べた桐野であった。一緒に杏を救済に努力していた輪の 何かが音を立てずに崩れて行くのを感じて行く~。
保護マンションに籠る杏に急に 隣人から預かり託される幼子(男の子)。これがリアルに幼少の子供を使っててマジでそのまま 一緒になって心配な思いになる。
夜間学校にも行っていたが、コロナで自宅授業。
幼子面倒みて、自宅待機、仕事にも行けず。でも杏は 託された幼子を必死に育児するのである。この姿は本当に健気であり、何とか自分と同じ様な目にはさせられない思いが強かったのであろうと感じた。
薬物患者を救う会は刑事の逮捕で閉鎖し、誰にも連絡できず 誰にも頼る事が出来ず、本当にこの幼子と二人っきり生活と成ってしまうのである。
窓の外に 五輪開催のブル-インパルス飛行機雲が見えていたのが マジリアルな情景に思い成りました。
・・ そして・・・悪魔の虐待母親に、ある日遭遇してしまう・・・
ココからは、書きません。いえ 書けませんわ。悲し過ぎて。
彼女の生きてきた証が、誰かの記憶に残るなら。
破天荒刑事(多々羅)の 拘置所のやり切れない思い。
私も凄く同じだったです。
杏を演じた河合優実さんは 本当に素晴らしかったですね。
大変な役所、良く頑張ったと感じました。
次回作にも期待しております。
中々、心エグられる内容展開ですが
ご興味ある方は
是非 お近くの劇場へ どうぞ!!
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