あんのことのレビュー・感想・評価
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連鎖
実話を元にした映画です。
いつも明るくニコニコしていて恥ずかしがり屋で、周囲から少し引いて、もじもじしているような女の子だったそうです。
伝えたいと思った。
でもそれは、様々な決めつけや偏見に苦しんだであろうご本人を、更に苦しめるかもしれない。
葛藤の中、最大の共感で寄り添いながら作られたこの作品からは、精一杯生きた主人公の人生が、とても愛おしく伝わってきました。
わたしの力では、世界を変えることはできないし、今生きて苦しんでいる、たくさんの杏を救うこともできない。
でも、目の前のほんとに小さなことを積み重ねることはしていきたいと思う。
誰にだって起こりえる瞬間の、あとほんの少しの勇気になることだってあるかもしれないから。
今目の前にいる誰かが、もしかしたら彼女ではないかと想像して、たとえ小さ過ぎることでも、できることをしていけたらと思いました。
一つだけ気になったのは、難しい問題だろうと思いますが、お母さんにも寄り添う必要があるのではと感じました。
生きるのは難しく、一人では乗り越えられないこともたくさんあるから、少しでも負の連鎖を正の連鎖に変えていけるように、支え合って生きていければいいなと、夢みたいに思いました。
無垢
すごい作品を観てしまった
上映中、ほとんど泣いていた。
あんが、日記を買ったり(盗まなくて良かった…)ぎこちなくはにかんだり、一歩引いてた所から少しずつ周りに馴染むようにがんばったり、そんな一挙一動に心を酷く揺さぶられ、とにかく涙が止まらない。
もう、彼女を愛さずにはいられない。
それくらい純真で、周りの優しさを素直に聞き入れスポンジの様に綺麗なものを吸い込んでいく。
奪われた少女時代を取り戻すように勉強し、働き、日記に丸をつけ、自然に笑えるようになっていく。
どんぐりころころなんて、他愛のない言葉も全て拾い上げる。
あんなに実の親から虐げられていても、腐るところなく明るく染まっていく。
アパートでカーテンを開けた瞬間、光があんを射し込み「すご…」そっと呟く。
しかし、悪いものも諦めたように吸い込んでいくのだ。
周りの大人達の勝手な優しさや裏切り、搾取、世界情勢、それらのピースが全てハマってしまった時、あんは真っ黒になってしまう。
最後に放たれた「恩人」の言葉。
一瞬、報われたと思ったがそうではないのだ。
あんの生涯はそんな陳腐な言葉で片付けていいものではないのだ。
青い空にはインパルスが。
そして、あんを「ママ」と呼び依存する寄生虫毒母は上映中脳内で50回くらい刺しておいた。
崩れるのは一瞬
序盤の「お前がクスリやってんだろ」という佐藤二朗の取調べで、意外とコミカルなのかと。
まぁ、そんなワケないですよね…
劣悪な家庭環境の中、多々羅のサポートによって徐々に抜け出す術を知る杏。
河合優実の表情変化が素晴らしく、初めて笑顔を見せた時にはまだ数十分しか杏を知らないのに涙腺が緩んだ。
介護施設の所長もいい人だったし、サルベージで身の上を語った杏の肩を抱く多々羅が暖かくて…
だからこそ、多々羅が根っからの悪人とは思えない。
もちろんやったことは最低だが、すべてが下心からの演技ではないと感じるのは、自分の願望だろうか。
杏のことを時折「ママ」と呼ぶ母など、基本的に登場人物の深層までは明かされない。
このあたりは解釈の分かれるところだと思う。
桐野から、予告にある「正義感と友情に揺れる」様子が見られなかったのは残念。
多々羅が逮捕された後のフォローくらいしろよ。
早見あかりの役どころも、それまで交流があったかも分からず、最後のアレは逆に軽薄に映る。
ただ、彼らに悪意はないし、自分がそうならない自信もない。
個人的には、原さんや子供と接する杏が好きだった。
お年寄りだけなら祖母と重ねたのかと思うが、子供への接し方も愛に溢れていた。
あの生い立ちであれなのだから、本当に優しいコだったんだと思う。
また『サマーフィルムにのって』や『愛なのに』のような河合優実が見たいが、次回作もヤバそうだな。
蜘蛛の糸を這い上がれ無かったあん
こう言う作品、今迄数限りなく観てきましたが、どの作品も、最後は何かしかの救いが有りましたが、この作品、私には全く有りませんでした。初めてです。敢えて言えば、主人公の母親が、泣いてる子を追い出すのに、役所を使ったのが、主人公には救いを感じたかも知れませんね。佐藤二朗さん、初めてです、この佐藤二朗さんを観たのは。圧巻でした。
「蘇り彼女が残した物」生まれ死ぬまで何も無い、そして墓も無い
ギャンググースなど手掛けた入江悠監督作品
主演は河合優実、パワフルな演技の刑事役の佐藤次郎、「十二人の刺客2010」で悪役で好演だった稲垣吾郎が記者役として脇を固めます。実話が元で作られた作品で
小4で不登校、12歳で体を売りシャブの中毒で売人でもある21歳のあんの生涯を描いた作品。
生い立ちが不幸な主人公のあん演じる河合優実は腕にシャブの跡だらけ、目に大きなくまを作り痛々しいですが、そこにエネルギッシュな佐藤次郎が加わり、稲垣吾郎がカラオケでブルーハーツの情熱の薔薇を歌ったり、ハモリを入れたりとさり気ない歌手らしい演技もあり一瞬、作品に希望の光が差しますがこれが現実と言わんばかりに冒頭から終わりまで状況は変わりません。この作品にハッピーエンド、バットエンドなど存在せず、現実を描いたまでと思いました。
作中、あんが祖母にケーキを買って来たり、多々羅に手紙で感謝を告げるシーン、そして最後の墓は無いの一言は心に残り涙し、生きている者は真面目に強く生きなくてはと言うメッセージにも思えました。入江監督は「ギャングース」でも不幸な主人公達を描いており、今回の稲垣吾郎の様に「アンブロークン」のMIYABI、般若とアーティストも起用していてギター演奏もラップも無しでちゃんと俳優として扱うのが素晴らしいと思います。「ギャングース」は報われる所謂、ハッピーエンドですが幼児虐待、高齢化社会など日本の闇もしっかりと描写に入れています。「あんのこと」と「ギャングース」では真逆の結末ですが何れも日本の現実を捉え、力強い作品が多く大好きな監督です。
商業的な映画が多い中、「あんのこと」の様に
ちゃんとお金を払いたい映画が増えたらと心から願います。
物語~結末
映画開始早々に誰も居ない薄暗い街を虚ろな表情で歩く主人公のあん。
既に幸せな結末にはならない予感が伝わり、シャブの中毒であり売人である事が描かれ
家に帰ると足の踏み場も無いゴミ部屋に売人で得た金を強請る母親、足の不自由な祖母。
父親は見当たらず、冒頭の予感が絶望と言う確信に変わる。そんなあんは、逮捕される事を機に佐藤次郎演じる刑事、多々羅に出会う。リストカットを即座に見抜く鋭い洞察力を持ちながら取調室で呪文を唱え、机の上でヨガを始める奇想天外な刑事の行動にあんはお手あげ。股間を探りコンドームに入った白い粉を差し出す。煙草は吸わないあんに対し「煙草位吸っておけ!バカヤロー」と浴びせると
この人もシャブ中なの?と思う位にぶっ飛んだ行動る反面、生活保護申請など真摯にサポートする姿にあんは徐々に心を開き、刑事主催の更生セミナーに通う。その後、刑事の紹介で介護施設に働く事になるがこれはあんが将来、祖母を介護したい意向による事だった。
早々に施設ではわざと、飲み物をこぼす老人(老害)も登場し老人介護の闇も描かれ。
そう簡単に上手に進まないと思いきや、足の不自由な祖母の面倒に慣れているあんは、何も気にせず仕事をこなす。
初給料を貰い(真っ当な)日記と祖母にケーキを買う。セミナーで多田羅がシャブを使用しない日の日記に〇をつけろと言う言葉に従うが日記は平仮名ばかりだ。同様に祖母にケーキを買って帰る健気なシーンは心を打たれますが、それを早々に酔っ払い、男を連れた母親が破壊し初給料も奪われてしまいそうになる。ハンカチに赤い血。
あんは家を出て自立する覚悟を固める。
給料の不当な扱いからあんは、セミナーに取材に来る桐野の紹介で違う介護施設に移る。
給料を強請りに母親が職場に乱入する事もありながら施設の人々は追い出す事はなかった。
あんを暖かく迎える職場、新しい住まい、セミナー以外にも新たなに学校に通う。全く新しい生活に生きる喜びを得たあん。
セミナーで手紙を読むシーンは小学生で食べる為に万引きを繰り返し不登校。12歳で母親の強要で売春と不幸な生い立ちを告白しながら多田羅に感謝を伝える姿は目頭が熱くなります。
セミナーに通う人達を取材すると言う記者、稲垣五郎演じる桐野はあんに接近する。(実際は多田羅の不正行為のリークがあった為に通っていた)記事にする為と言うより、純粋に多々羅とあんに惹かれた様子で三人で過ごす描写が多くあります。桐野は取材を続けセミナーに通っていた女性から多々羅に性的要求されたと言う情報が入る。多々羅の行動を良く思わない施設の人間、刑事もおり早々に多々羅は逮捕される事になる。ショックを隠せないあんに、今度はコロナの猛威が襲う。
信頼していた、多田羅の逮捕。(親友)
逮捕によるセミナーの廃止。(同じ境遇の仲間)
コロナによる出勤停止。(金)
通学していた学校の休校。(学)
ボクシングで言うならば井上尚弥の本気パンチを4発連続で顔面で受ける。過去も不幸なだけにヘビー級ボクサーのパンチレベルかもしれない。
何れにせよ、普通の人では一発だけでも立ち上がる事は困難で最悪死に至るレベルだ。
追い打ちは終わらず今度は突然、アパートの住民に子供を預かってほしいと強引に子供を渡され逃げられてしまう。(あんは前夜にその母親の怒鳴り声と子供の声で寝れなかった)
もはや、極限状態で引き金を引いた銃やピンが抜かれた手榴弾を手渡された状態だ。
あんは仕方なく子供の世話をはじめ、子供の食事のアレルギーなど日記にメモを残していく。実の家族の様に子供と生活をする様になった所で偶然、あんの母親と遭遇してしまう。
「祖母がコロナにかかったかも知れない」と言う言葉に釣られ家に戻ると祖母は元気で、嘘をつかれた事に気が付いたあんは逃げようとする。
しかし、母親に子供を人質に取られ体を売って金を稼いで来いと要求され、あんはそれに従う。
あんは体を売り得た金を握り、母親に子供を返す様に要求する。
母親は子供が面倒だったから市役所に引き取って貰ったと告げる。あんは怒り、包丁を手にするが母親の圧力に負け、家を後にし再び覚醒剤に手を出してしまう。
目覚めたあんは、◯を付けてきた日記に目が止まる。再び覚醒剤を打ってしまった事、多々羅に対するやるせない気持ち、我が子の様に育てた子供を奪われ、何をしても上手く行かない人生の嫌気、衝動で日記を燃やそうとする。途中で慌てて火を消して焼け残ったメモを見つめ泣き崩れる。
窓の外を見上げると、コロナと闘う医療従事者をはじめとする多くの人々に、敬意と感謝を示すためのブルーインパルスの飛行が目に入る。
青空に不死鳥を意味するスモークが残っていた。
しかし、あんにはその意味も分からず、
分かっていたとしても理解する余力は残って居なかった。
導かられる様に窓を開けてベランダへ向かう。
そして、あんは再び覚悟を決める。
終盤、あんに子供を預けた母親が子供を市役所に引き取りに来る。母親は職員からあんが亡くなった事を告げられメモが渡される、メモはあんが子供の為にアレルギーなど書き残した物だった。
母親はあんにお礼が言いたいと
墓の場所を尋ねるが職員は
「母親が遺骨を取りに来たが、墓は無いでしょくね」と告げられる。
生まれてから殆ど良い事も無く、何か進んでもそれを覆す不幸な毎日、そして墓も無い。
このシーンは見ていて重い石がすっと体から落ちた感覚になり言葉を失いました。
映画は引き取られた子供とその母親の後ろ姿で幕をとじる。
スクリーンに蘇った彼女が残した物。
預けられた子供を救った事も勿論、
この作品を見て子育て、仕事、私生活と個人で刺さるポイントは違えど真っ当に生きなくてはと言う気持ちになった人は多いだろう。
真っ当な人間が増えればあんも、あんに預けられた子供の様な事は減る訳ですから。
この映画であんの様な子が一人でも減れば、報われると思います。
只、悲しい、可哀想と言う感想だけの人が多いのは
個人的にも残念で、監督や作品も亡くなったあんも
わざわざスクリーンで蘇らせてまたその一言で終わられてしまうのは報われないと思います。
悪い意味では無く日本が平和な証拠。
光が見えた矢先に訪れる困難、そして・・・
ドラッグの常習犯だった杏(あん)、ホステスの母親、
そして身体の悪い祖母と、ゴミ捨て場のような家で暮らす。
幼いころより母親より暴力を受け育ち、中学?で売春。
義務教育も放棄し、中学卒業もできず、21歳となった杏は警察に捕まり、
そこで、多々羅という刑事、ジャーナリストの桐野と出会い、
更生の道を歩み始める。
仕事に就き、学校にも通い始め、遅れを取り戻し始めたのだが、
そんな時に、新型コロナが流行、人々の生活が変わり、
杏、多々羅、桐野の三人の生活もいろいろと・・・
まあ、なんといっても鬼畜ばかり。
杏の母親、なんなの!最後の最後までひどすぎる。
それに、多々羅刑事、変わった刑事だなという反面、
ドラッグ中毒者の更生という慈善活動、素晴らしいと思いきや、
裏では・・・ひどすぎる
また、最初から怪しかったけど、ジャーナリストの桐野、
やっぱり探ってたんだよね。ひどすぎる。
幼子を杏にいきなり預け、失踪する女性。
こいつも母親としてどうだよ。ひどすぎる。
せっかく光が見えてきたという矢先に訪れる、
困難の数々、そして周りから頼れる人がいなくなり、
最後は鬼畜の母が。。。
主人公の杏を演じた河合優実さん、素敵ですね。
「不適切にもほどがある」は最初しか見ていませんが、
自然な演技、素晴らしいです。これからも注目。
多々羅刑事は佐藤二朗さん、ちょっと前に見た「変な家」といい、
あまり、らしくない役柄でしたが、好演でした。
最後、無事母親のもとに戻れた幼子のシーンが救い?
でも、また捨てられるかも、と思うと・・・
これが実話?あまりのバッドエンドな分だけ減点。。。
公開規模
ここ数年、「この作品にも河合優実」と見過ごせないばかりか、必ず印象に残る演技で爪痕を残してきた彼女。そんな彼女が主演と聞けば「いざ行かん」と本作公式サイトで劇場情報を確認すると、思いのほか公開規模が小さく。。正直一時は、入江悠監督(の過去作品たちを)を槍玉に挙げて配信待ちにまわす可能性もあったのですが、スケジュール的に無理がなさそうだったので久しぶりの丸の内TOEIです。記録がないため、何年ぶりなんだろう?大変ご無沙汰いたしました。サービスデイの11時の回は当日券を求める行列もあったりして、平日とは言えそこそこの客入りです。
で、鑑賞後の感想ですが、、入江監督、大変申し訳ありませんでした。凄かったです。ここまで衝撃を食らうとは思っておらず、帰途もついつい「あんのこと」を思い出し泣きそうになるほどで、これはしばらく要注意。かなりダウナー作品のため、これからご覧になる方も注意が必要です。何なら、これを配信で観ようものなら最後まで通して観ることが出来るのか?やはり劇場で見る意味の大きい作品でもあると思います。
本作、兎に角キャストの皆さん、もれなく演技が素晴らしく、そして凄まじい。比較的、個性強めな俳優さん揃いですが、皆さん悪目立ちすることなくまさにこの作品に存在する人間として違和感ないため、鑑賞していて否が応でも作品内に没入させられます。そして、緊迫のシーンが本当に怖く、だからこそ安寧な日々に幸せを感じ、さらにそこからの絶望に容赦のなさを感じます。
いやぁ、、言葉にならず申し訳ないですが、本作は予想をはるかに超えて刺さりました。キノフィルムズさん、これは公開規模拡大すべきです。少しでも多くの方に観ていただき、「関心領域」をひろめるべき。とても重要な作品だと思います。
環境
入江悠監督作品は初めて見ました。
この作品は事実を基にしているとの事、胸が痛むひどい話でしたが、映画にする意義は大きいと思いました。
あんという女性がいた事、彼女のような人たちがまだまだいるであろう事。
毒親・鬼畜母(または父)を映画で見る度、病気だなと思います。まともじゃない。娘への愛情など微塵もなく、あるのは執着心と支配欲だけ。育つ過程に何があったのか、負の連鎖?おばあちゃんは優しい人なのに。この母逮捕されりゃいいのにと本気で思いました。
シェルターで隣のシングルマザーからあんな風に子どもを押し付けられるなんてそれも驚き。この母親も男とトラブルって…最後「あんちゃんありがとう」ってさー(`´) 日記帳の切れ端見て悟ったとかそれは分かったのですが、びっくりしました。
手を差しのべてくれた多田羅刑事も、聖人君子ではなかった。でも行動によってあんの人生が変わっていこうとする事は唯一良かった点ではないかと思います。皮肉にも押し付けられた子どものお世話に懸命になり、老人ホームのおじいさんからも慕われた、あんの最後が残念でなりません。
俳優の皆さん素晴らしかった。
河合さんは脇役でちょいちょい拝見してましたが、実力派。すごくいいですよね。今年、一気にきましたね。今後も楽しみ。
佐藤二朗さんは「変な家」を見た後だけに、余計良かったです。
善と悪と正義と
心の深奥に刺さる映画である。
DV、貧困、無知、売春、覚せい剤、打算とこの世に蔓延する悪の中に、杏という弱々しい
無償の善の持ち主を放り込み、「悪に翻弄される善」という普遍的なテーマを展開する。
ここまでなら良くある構図だが、監督が秀逸なのは、そこに多々羅という極端な善悪両面を備えた刑事と、正義を標榜する新聞社の記者を据えたことである。かくして善悪だけでは割り切れない複雑な構造を映画にもたらすことに成功した。その結果、降りしきる雨の中で杏を抱きしめる多々羅刑事の姿は、善悪を超えた崇高さを持ち、一方で正義の遂行(新聞による告発、児童相談所による幼児の確保)が杏にとどめを刺す、という胸をかきしめられるような展開を描き出した。
登場人物の中で杏だけが、ただ他人の為に生きた。燃え残った日記の一片には、子供のアレルギーや好き嫌いに配慮した食事が記されており、それは善の塊であり、杏の生きてきた証であり、墓標である。
幕が閉じた時、監督からの問いかけに気づく。お前は誰だ。杏か毒親か新聞記者か刑事か。「いえ私はただの観客です。杏はかわいそうでした。行政はもっとしっかりすべきです。」といつもの日常に戻るのは簡単だが。
杏に出会ってしまったからには、日記の続きを託されたと観念すべきであろう。
河合優実、河井青葉、佐藤二朗の演技は圧巻である。
杏の不幸の根源は……
ある不幸な女性の話だが、登場人物に、ひとりを除いて悪い人間はいない描き方。もちろん人間は誰しも負の側面を持っているもので、例えば刑事の多々羅にしても途中でえっという顔を見せるのだが、杏の更生には親身になって手助けをする。そんな人々のお陰で、杏は新しい人生を歩み始めるのだが……。
心を打つシーンが幾つもあるものの、これが実話ベースというところが悲しい。
河合優実の素晴らしい演技に没入
2020年実際に起きた事件から着想を得て、入江悠監督が映画化。幼い頃から母親に暴力を受け、壮絶な人生を送ってきた主人公を描いた作品。
彼女が置かれたあまりにも絶望的な環境、そこから抜け出そうともがく、救いのない重いストーリー展開。
助演の河井青葉の鬼気迫る演技も凄かったが、主人公のあんを演じ切った河合優実は、他の共演者たちを完璧を凌駕、その素晴らしい演技に没入した2時間。中々よいキャスティングの中で、稲垣吾郎が唯一余計だった。
現代の社会問題を描くこの作品、悲しく、救いようのない現実が存在していることを深く印象づけた。
この河合優実、そして杉咲花、山田杏奈なども然り、最近の日本映画界には、主役をしっかり演じ切る若手女優が増えたと、この作品を通じて改めて思った。
杏ちゃん
私は脚本も書ける監督さんをとても尊敬しているのだ。
本作も入江悠監督が脚本も手がけている作品なのだが、代表作?のラッパーシリーズは未見。
「太陽」と「22年目の告白 私が殺人犯です」しか知らないので、どんなテイストの作風の監督なのか?
いまいちわかっておりませんm(__)m
本作は河合優実ちゃんが主演というだけでチェックしていたもので、いつもなら気になる監督すら確認しないまま鑑賞。
キービジュアルは見ていたが、事前情報ほぼゼロです。
最初に「実話ベース」とのテロップが出る。個人的に苦手な演出。
どこまでフィクションで、ノンフィクションなのか気になってしまうし、第一印象に影響が出るから。
でも、本作では有効だったと思った。
キノシネマのリクライニングできるゆったりした座席に腰を下ろし鑑賞している自分。
冒頭で映し出された杏ちゃんの顔のアップ。
目の下のひどいクマ。正気を失った表情が映し出された時、
「あ、、どうしよう」と動悸がしてきて、、、でも覚悟が決まった。
目を逸らしてはいけない。
実話ベースの悲惨な事件であることは間違いない。
杏ちゃんを救えなかった日本の現状。
だけど、この闇や大人達に怒りの感情を向けるだけではダメなのではないか。
断罪する事にこだわっている様ではこれからも変わらない。
まだ日本のどこかに存在しているであろう第二、第三の杏ちゃんは救えない。
この絶望的な世界に身を置く子供達を、取りこぼしたままでいる日本を変えなくては!と、強く思うものの、では、自分に何が出来るのか?と、問うてみても、無力過ぎて落ち込むのだ。
日々流れて来る似たような事件を目にするたびに、心が痛み、憤りを感じ、大きなため息が出るだけだ。
(身近な所だと新宿のトー横とかか)
だから考える。考える事を止めてはダメだ。
今の私にも出来る事。
自分の周りの人には優しくいたい。
バカみたいな言葉しか出てこないけど、何かあったらあの人に!って頭に浮かぶ人間になりたい。
(あと選挙行く)
杏ちゃん。
あなたの頑張っていた人生を少しだけど、見せてもらったよ。
知らなくてごめんね。
助けてあげられなくてごめんね。
動のさとみ、静の優実。
主演女優賞はさとみなんだろ〜けど、私は優実ちゃんを推したい!
◎追記◎
タタラのモデルになった刑事に裏の顔があった事も実話に基づいていると知りました。
言葉が出ません。
救いはあった。それでも救われない現実
救いがないわけじゃなかった。ただ、救いはあっても掬いきれないことはあって、救われない現実に心が痛む。こういう映画を観ても、「自分に何ができるか」なんてことは考えずに生きてきたし、そんなふうにしか生きていけない。それでも、河合優実さんが演じたような環境にある人がいること、そういう人と向き合っている人たちがいることは見て見ぬふりをせずに生きていきたい(Xへの投稿コピペ)
目をそらすことを許さない河合優実さんの見事な演技
ほぼ全編通してふざけない佐藤二朗さんの渾身の演技
抑制が効いて実在感たっぷりの稲垣吾郎さんの演技
娘あんへのもう一つの呼び名に身の毛がよだつ河井青菜さんの怪演
見どころたっぷりの演者たちと、
家の様子やロケーションなどで実話ベースであることを
違和感なく見せた入江監督の手腕に拍手です。
河合優実の適切な演技
先日放送していたテレビドラマ「不適切にもほどがある!」に出演していた河合優実さんが主演という事で、女優さん目当てで鑑賞に行きました
期待どおり河合さんの演技はピカイチで、大袈裟なところが無く台詞も自然で、人物が実在するような演技ができる女優さんであることを再認識し、ますます好きになった
わたしのなかで最近どハマりしていたのは杉咲花さんでしたが、河合優実さんが並んでツートップの位置を占めました
重いテーマをドキュメントタッチで描いたように感じた今作、ワンカットが長く、シーンが冗長に感じることが多々あり好みは分かれる、というか、わたしはダメだった
最後の5分から10分は付け足された感じもあり、不必要なシーンに感じた
河合さんの演技は最高でしたが、評価は星3
河合優実の説得力
河合優実の演技が、演技に見えない説得力。実話に基づく物語ですが、ドキュメンタリー以上にリアルな感触を与える、すごい女優さんが出てきたな、という印象です。佐藤二郎が絶賛する理由がよく分かる。
理不尽な家庭環境から絶望さえ知らなかった少女が、ほんの少し希望を与えられ、少しずつ人生を立て直していけるか…と思ったらまた理不尽に奪われ、突き落とされる。トーヨコにいる少女達も多かれ少なかれ、こういった背景を抱えているのだろうと想像できて、苦しくなります。
大人が大人の責任を果たさないことのツケを、子ども達が払わされている理不尽。観て、我々大人達が反省し、次の行動につなげなきゃいけない作品です。
河合優実推しですが
愛なのにを観てから河合優実を推している。NHKドラマの家族だから愛したのではなく愛したのが家族だったや、不適切にもほどがあるも面白かった。
本作では河合優実の魅力が発揮されていたが、佐藤二朗と稲垣吾郎は今一つ。佐藤ではなく岡部たかしの方が二面性が出るし、稲垣ではなく北村有起哉の方がジャーナリスト感が出たのではないか。ドラマ化されるのであれば、ぜひこのキャストで。
実際の事件を元にして作られているというが、どこまで同じなのか知らない。ただ、PG12ということからも、描き方が中途半端な感じがした。
コロナ禍の影響はあまり関係なく、母親はコロナ前でも家庭に満足に金を入れずに自分のために使い、祖母の介助も杏にやらせていたのだろう。後半で男の子の世話をするが、祖母や母親のために生きることが杏にとっての生きる意味だったのか。ただ、自死をするまでの流れは、脚本がやや甘かったと思う。
杏のような子供は、程度の差はあっても多く存在するのではないか。
期待を裏切らない河合優美
想像力や思いやりの欠如がもたらした悲劇を描いた作品。
馬鹿な大人たちの犠牲になった少女が憐れ過ぎる。
冒頭からデイパックを背負って早朝の赤羽のOK横丁を一人歩く河合優美(杏)。
佐藤二朗の多々羅。こんなイイ刑事いるかぁ?とは思いつつも、稲垣吾郎を含めて3人で杏の就職を祝ってカウンターで乾杯したり、カラオケするシーンに幸せを感じて、もう何年も足を向けないようにしているOK横丁に寄りたくて仕方がなかった。
サルベージ赤羽紹介してもらおうか😅
ロケ地は赤羽台団地や埼京線沿線武蔵浦和あたりのマンションか。
なんでブルーインパルスが飛んでるシーン入れた?
インパルス堤下を連想しちゃった。
クスリつながり?
KEYUCAで絶対可愛い手帳を万引きすると思ったのに、すんでのところで思いとどまる。多々羅へのお礼のプレゼントを買う。細かなこころの変化を演じる河合優美。
佐藤二朗も好演。
「さがす」での伊東蒼との佐藤二朗もよかった。確実に進歩してる😎好感度あげた。
どうにも薄っぺらい正義やうわべだけのマニュアル対応に苛つく多々羅。介護施設のおじさんの対応は神。元ヤンキーって言ってたな。
ゴミ屋敷はちょっとやり過ぎ。生活保護もらってないのに、缶酎ハイやビールの空き缶が多すぎ。結構リッチじゃんと思ってしまった。
あんな境遇にもかかわらず、母性に目覚めたあんちゃん。ジャガイモの皮を剥かないで賽の目に切るところなんか泣かせる。
杏の母親は酷すぎる! 馬鹿すぎる。
よく我慢していたというか、あんちゃんはいい子過ぎる。元ヤンにみえる河合優美は実はお医者さんちのお嬢さんなんで、そこはかとない品を感じる。
鈍いオイラだって、燃やしかけた手帳から切り取ったページが育児期間のものだってわかる。
杏
幾つか河合優美さんの作品を視聴してきたが
あの映像を観た時、彼女は正にあんだった。
不思議なリアルさを感じた。
貧困家族、虐待、暴力、売春、覚醒剤、コロナ
非正規雇用。
地獄のような道を辿ってきたが更正しようとする
杏。
産まれた時は皆同じ。
ただ、環境や育て方や周りにいる大人達の
影響は有り得る。
最初から悪い人はいないし、そんな事は
誰も望んでないが現実には限界もある……。
新しい部屋を見て入った瞬間のあんの表情や
ラーメン屋さんのでの食べる姿が印象的。
少しずつ人間らしく生きたいと思い始めたのに。
言葉が出ない。この過酷な社会のシステム。
本当にこのような方は存在していたの
だろうと思わせた河合優美さんの演技は
凄かったし重みも感じた。
しんどいけど観ておくべき作品。
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