恋するピアニスト フジコ・ヘミングのレビュー・感想・評価
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ラ・カンパネラは4回くらい流れます。
いやー、いい音だったなぁ?この映画は全て完璧だけど、音の再現度が半端ないんだよ?まるで、コンサートホールで聴いているとしか思えない音響でした。俺が見た映画館は、そんなにいいスピーカーを使っている筈はないんだけど、いい音でした。
フジコ・ヘミングは色んな国に家を持っているんだけど、家を持つ理由は近所に迷惑をかけないように、練習する為だけに郊外の一軒家に住んでいる。また、インテリアがオシャレなんだよな。窓際に並べる瓶の配置だけで何年もかけて置くこだわりぶり。自分の死後も家を残すように遺言していたそうな。
インタビューも、発言がいちいち含蓄があり、他人に対する気遣いもあった人格者である事は間違いない。さてさて、肝心のピアノの演奏だが、もうこれが聴いていて心地良い事ったら!学生の頃、昼食を食ってから、五時間目の授業を受けていた時に、うたた寝をしていた時のような気持ちよさと同じで、うっかり熟睡しかけたよ?
俺は、難聴気味で実年齢より10歳くらいの音域しか聞こえないが、いい音の区別は分かる。趣味のコンサート鑑賞で様々なピアノ演奏を聴いたが、どいつもこいつも、譜面の紙の範囲に縛られていて、譜面を抜け出すパワーのある演奏を聴いた事が無い。どれ聴いても、AEONで流れているクラシック程度にしか聞こえない。聴いていて面白くねぇんだよな?
型破りという言葉があるが、フジコ・ヘミングのピアノは譜面の範囲を軽く超えて、ぜってーに、譜面には書いていない演奏なのだが、基礎がしっかりしている上に、練習を欠かせた事が無いから、できる技なので、良い無茶苦茶な演奏なのだ。
フジコ・ヘミングの演奏を生で聴いた事がなかったのが悔しくてなりませぬ。この映画は音の満漢全席やぁ。
これは俺だけが知っている事だから話すが、いま現在フジコ・ヘミングは異世界に転生して魔王を倒す為にパーティーを結成している。詳しい事が分かったら逐一、noteアプリで報告するので、カミングスーン!!
【”魂が入っている事、それが大事、とフジコ・ヘミングさんは言った。”新型コロナ禍の中でも、配信で多くの人にメッセージを発信していた姿に人間への”愛”を感じたドキュメンタリー映画である。】
ー ラストテロップにも流れるが、フジコ・ヘミングさんは今年4月に92歳で永眠された。今作は彼女の最晩年の4年間を前作「フジコ・ヘミングの時間」に続き記録した作品である。-
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・撮影が始まって直ぐに、コロナ禍になってしまう。だが、フジコ・ヘミングさんはビデオメッセージを送り、無観客の演奏会をこなし動画で発信する。
足が不自由になって行く中、変わらず、精力的な方である。
そして、コロナ禍の中でもフジコ・ヘミングさんは、日々のピアノ練習を欠かさない。
・前作でも描かれたスェーデン人の父への想いは、悪態を軽くつきつつ変わらない。母への思いも同じである。
・コロナ禍の中、いち早く解禁された各地で行われたクラシックコンサートのシーンも良い。何処の会場もソールド・アウトであるし、子供達の前でも小規模なコンサートを行う。一年に60回のコンサート回数も驚異的である。
だが、フジコ・ヘミングさんは独特の美意識溢れる衣装を纏い、彼女を一躍有名にした「ラ・カンパネラ」を始め、数々の曲群を軽やかに弾き続けるのである。
・驚いた事は他にもあり、マエストロと恋していたり、友人と仲良く過ごしていたり、世界のあちこちにある住まいで自由に暮らす姿である。
・只、唯一の肉親だった弟を亡くしたり、愛犬、愛猫が次々と亡くなり、フジコ・ヘミングさんは自分の死について、口に出す様になるのである。
<前作を観た時にも思ったのだが、フジコ・ヘミングさんの人生は波乱万乗でありながら、還暦を越えて世界的にブレイクしながらも、自分の生き方を変えない姿には感銘を受けた。
フジコ・ヘミングさんの生き様を観ていると”どうか、安らかにお眠りください。”などと書いたら”あはは”と笑われそうだなあ、と思いながら劇場を後にした。
今作は、稀代の芸術家の最晩年を描いた貴重なドキュメンタリー作品だと思います。>
感情を込めれば名曲にも色が着く
10月18日(金)
新宿ピカデリーで公開初日の「恋するピアニスト フジコ・ヘミング」を。観客の年齢層は高め、20代と思しき方は見当たらない(70ジジイの自分をさておいて何言ってるんだか)。
2020年からのフジコ・ヘミングの4年間の生活を追ったドキュメンタリー。
アメリカ・サンタモニカにもフランス・パリにも日本・下北沢にも家がある。60歳を過ぎて人気ピアニストとなった彼女は取り壊される所だった家を買取り、そこに住んでいる。家具は人から貰った物や中古を使っている(下北沢は青年座の稽古場だった所らしい)。
古い家を壊してマンションを建てるなんてとんでもないわ。(アメリカの家は)私が死んでも取り壊さずに済むように弁護士に相談してるの。
アメリカでは犬と猫を飼い、日本では一時は25匹もの保護猫を飼っていた事があるという。
昔観たジュリエット・グレコのステージに憧れて開催したという白や赤のカラフルなステージ演出の横浜のコンサート。
クラシックのコンサートでは誰もこういう事をやらないのよね。
パリで(だったかな?)私のピアノの師匠が、言うのよ。
「フジコ、君の演奏は素晴らしいけど、今はそれは流行りではない」
何を言ってるんだ、こいつは。殴ってやろうかと思ったわ。
カンパネラだって感情が入れば、青色にだってうす紫にだってなるのよ。
大学の時にセックスがホビーみたいな男がいて、周りの女全部に手を出していて私も騙されたけど、別れる時は決まって「前の女が忘れられない」だって。
大事にされた母親の事、幼少で別離した父親の事、先立った弟の事、パンデミックの時に泥棒に入られたが取られなかったパリの家にあった子供の頃に遊んだ人形の事。日米仏、どこの家にも母親の写真が飾ってある事。
2018年に「フジコ・ヘミングの時間」で既にフジコのドキュメンタリーを撮っている監督の前でフジコは饒舌だ。
アメリカの家で飼っていた犬と猫が死んだと報告が入る。
2023年のパリのコンサートでは、ショパン、リスト、ストラビンスキー等を演奏する。チケットは完売だ。
カーネギーホールのコンサートを控える中、自宅で転倒して骨折して中止に。その後膵臓ガンがみつかり2024年4月没。92歳。ショパンコンクール入賞とかではなく、彼女の人生とカンパネラで60歳を過ぎて注目を集めたピアニストが逝った。
殆どが彼女の語り(インタビュー)と演奏で構成されており、ピアニストと言うよりも、人間フジコにフォーカスした作品だと思った。ある意味、魅力的なおばあちゃんだった。
ピアノ・コンサートには、イーボ・ポゴレリッチとキース・ジャレット(彼はジャズだが)位しか行った事がないが、私の母親の年齢に近いフジコ・ヘミングも一度聴いてみたかった。
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