「感情を込めれば名曲にも色が着く」恋するピアニスト フジコ・ヘミング Mr.C.B.2さんの映画レビュー(感想・評価)
感情を込めれば名曲にも色が着く
10月18日(金)
新宿ピカデリーで公開初日の「恋するピアニスト フジコ・ヘミング」を。観客の年齢層は高め、20代と思しき方は見当たらない(70ジジイの自分をさておいて何言ってるんだか)。
2020年からのフジコ・ヘミングの4年間の生活を追ったドキュメンタリー。
アメリカ・サンタモニカにもフランス・パリにも日本・下北沢にも家がある。60歳を過ぎて人気ピアニストとなった彼女は取り壊される所だった家を買取り、そこに住んでいる。家具は人から貰った物や中古を使っている(下北沢は青年座の稽古場だった所らしい)。
古い家を壊してマンションを建てるなんてとんでもないわ。(アメリカの家は)私が死んでも取り壊さずに済むように弁護士に相談してるの。
アメリカでは犬と猫を飼い、日本では一時は25匹もの保護猫を飼っていた事があるという。
昔観たジュリエット・グレコのステージに憧れて開催したという白や赤のカラフルなステージ演出の横浜のコンサート。
クラシックのコンサートでは誰もこういう事をやらないのよね。
パリで(だったかな?)私のピアノの師匠が、言うのよ。
「フジコ、君の演奏は素晴らしいけど、今はそれは流行りではない」
何を言ってるんだ、こいつは。殴ってやろうかと思ったわ。
カンパネラだって感情が入れば、青色にだってうす紫にだってなるのよ。
大学の時にセックスがホビーみたいな男がいて、周りの女全部に手を出していて私も騙されたけど、別れる時は決まって「前の女が忘れられない」だって。
大事にされた母親の事、幼少で別離した父親の事、先立った弟の事、パンデミックの時に泥棒に入られたが取られなかったパリの家にあった子供の頃に遊んだ人形の事。日米仏、どこの家にも母親の写真が飾ってある事。
2018年に「フジコ・ヘミングの時間」で既にフジコのドキュメンタリーを撮っている監督の前でフジコは饒舌だ。
アメリカの家で飼っていた犬と猫が死んだと報告が入る。
2023年のパリのコンサートでは、ショパン、リスト、ストラビンスキー等を演奏する。チケットは完売だ。
カーネギーホールのコンサートを控える中、自宅で転倒して骨折して中止に。その後膵臓ガンがみつかり2024年4月没。92歳。ショパンコンクール入賞とかではなく、彼女の人生とカンパネラで60歳を過ぎて注目を集めたピアニストが逝った。
殆どが彼女の語り(インタビュー)と演奏で構成されており、ピアニストと言うよりも、人間フジコにフォーカスした作品だと思った。ある意味、魅力的なおばあちゃんだった。
ピアノ・コンサートには、イーボ・ポゴレリッチとキース・ジャレット(彼はジャズだが)位しか行った事がないが、私の母親の年齢に近いフジコ・ヘミングも一度聴いてみたかった。
おはようございます。
いつも、当方にとっては貴重なコメントを有難うございます。今日は労働組合との大会議で、ドキドキしていますが、終わったら速攻で映画館に行きます。これからも、宜しくお願いいたします。