「【”魂が入っている事、それが大事、とフジコ・ヘミングさんは言った。”新型コロナ禍の中でも、配信で多くの人にメッセージを発信していた姿に人間への”愛”を感じたドキュメンタリー映画である。】」恋するピアニスト フジコ・ヘミング NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”魂が入っている事、それが大事、とフジコ・ヘミングさんは言った。”新型コロナ禍の中でも、配信で多くの人にメッセージを発信していた姿に人間への”愛”を感じたドキュメンタリー映画である。】
ー ラストテロップにも流れるが、フジコ・ヘミングさんは今年4月に92歳で永眠された。今作は彼女の最晩年の4年間を前作「フジコ・ヘミングの時間」に続き記録した作品である。-
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・撮影が始まって直ぐに、コロナ禍になってしまう。だが、フジコ・ヘミングさんはビデオメッセージを送り、無観客の演奏会をこなし動画で発信する。
足が不自由になって行く中、変わらず、精力的な方である。
そして、コロナ禍の中でもフジコ・ヘミングさんは、日々のピアノ練習を欠かさない。
・前作でも描かれたスェーデン人の父への想いは、悪態を軽くつきつつ変わらない。母への思いも同じである。
・コロナ禍の中、いち早く解禁された各地で行われたクラシックコンサートのシーンも良い。何処の会場もソールド・アウトであるし、子供達の前でも小規模なコンサートを行う。一年に60回のコンサート回数も驚異的である。
だが、フジコ・ヘミングさんは独特の美意識溢れる衣装を纏い、彼女を一躍有名にした「ラ・カンパネラ」を始め、数々の曲群を軽やかに弾き続けるのである。
・驚いた事は他にもあり、マエストロと恋していたり、友人と仲良く過ごしていたり、世界のあちこちにある住まいで自由に暮らす姿である。
・只、唯一の肉親だった弟を亡くしたり、愛犬、愛猫が次々と亡くなり、フジコ・ヘミングさんは自分の死について、口に出す様になるのである。
<前作を観た時にも思ったのだが、フジコ・ヘミングさんの人生は波乱万乗でありながら、還暦を越えて世界的にブレイクしながらも、自分の生き方を変えない姿には感銘を受けた。
フジコ・ヘミングさんの生き様を観ていると”どうか、安らかにお眠りください。”などと書いたら”あはは”と笑われそうだなあ、と思いながら劇場を後にした。
今作は、稀代の芸術家の最晩年を描いた貴重なドキュメンタリー作品だと思います。>