めくらやなぎと眠る女のレビュー・感想・評価
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インディアンを見つけられたってことは、本当は奴らはそこにいない
最近こんな禅問答のようなセリフがやけに好みに合ってきた。
"どれだけ遠くに行こうとも、自分からは逃げられない"
"目に見えるものだけが現実とは限らない"
"君が君を選ぶ。上手くいくかどうかは、すべて君次第さ"
いくつもの言葉が胸に刺さるのは、僕が歳をとったせいなのだろうか。
物語は、カエルくんがでてきてはじまっていく。ん?カエルくんって?となるだろうが、カエルくんはカエルくんだ。「すずめの戸締り」のダイジンに似たようなものと思ってもいい(違うけど)。そう言ってしまうのは、彼がこのあと起こり得る大災害を防ぐ鍵を握るから。それがどう進展するかは、ここでは当然語らないけど。もしかしたら、カエルくんは、カタギリのイマジナリーフレンドなのか?とも思う。現実逃避したいカタギリが自らの心に作り出した生き物。でもそうじゃなさそうだけど。まあいい、目に見えるものだけが現実とは限らないのだし。その逆だってあり得るのだし。なにより、すべては自分次第なのだし。
今回、なんてスカした小説なんだと、あれだけ敬遠していた村上春樹にも興味も湧いた。「ノルウェーの森」は、まだ実家のどこかにあるだろうか。
猫だけが行き来できるパラレルワールド
不安と自信
いかにも、村上春樹な作品。鑑賞後に知ったけど、どうやら6つの短編から作られた映画らしく、それもあってか統一感のないごちゃっとした物語になっている。伝えたいメッセージが一致していればいいのだけど、こうも方向性・テイストの違う作品を並行して進められると、全体的なまとまりが悪く、なんとも言えない微妙な気持ちになってしまう。地震というテーマだけで一括りにされてるけど、正直なところ分けて見たかった。
とはいっても、小村の話は「ドライブ・マイ・カー」の家福悠介とほぼ同じ境遇であり、ひたすら喪失感に明け暮れる人物であるため、ハッキリ言って新鮮味も面白味にも欠けている。性に走っちゃうのもこの人の悪い癖。そもそも、フランス人から見た日本人があまりに不細工過ぎて、好きになれるキャラクターがかなり限られていた、というのも大きい。
村上春樹というと、社会を斜めから見下ろすようなちょっぴり偏った考えを持つ人であるため、個人的にはあまり好きな小説家ではなく、むしろかなり苦手。本作においても、男は弱くて情けなく女々しいし、逆に女は超が付くほど積極的で我が強い、といった男女に格差をもたらす描き方をしており、そのため小村とその周辺の話はどうもいい気持ちにはなれない。随所でいいところはあるけど、あまりにゆったりとしていて退屈に感じてしまった。
一方、片桐のエピソードはかなり面白く、苦手な村上春樹作品でありながら、このパートに関しては相当好きだった。ポスターでは本作の目玉のように大々的に写されているかえるくん。入プレだってかえるくん。前面に出してくるだけあって、非常に魅力的かつ楽しいキャラクターで、彼自信がストーリーテラーとして物語を展開していく、言わば「笑ゥせぇるすまん」的な単独作品が見てみたいなとまで思えた。
塚本晋也×古舘寛治の相性が見事で、2人の不思議な会話は思わず聞き入ってしまう。結局何がなんなんだ、何が言いたいんだと感じざるを得ないものの、まるで「君たちはどう生きるか」の眞人とアオサギのような独特な関係性には、なぜだかすごく引き込まれていった。かえるくんの登場シーンは本作でいちばんテンションが上がる🐸
人に勧められるような映画では無いものの、全然嫌いではなく、なんならちょっとクセになるような趣深い映画ではあった。導入もいい。雰囲気もいい。アニメにしたことで良さが大いに引き出されている。ほぼほぼかえるくんに捧げる点数だけど、村上春樹作品が自分にハマるとは思っていなかったため、なんだか嬉しかった。にしても、〈めくらやなぎ〉とかいう造語、よく思いつくよなぁ。あと、地震の映画見たあとに地震はあまりにも怖い。ミミズくん怒らないで🪱
違和感が不安を掻き立てる
良作!村上ファンなら楽しめるかも
センス良い風にアレンジした夢のような作品
「短編小説6編」
ハルキスト
フランスっぽい村上春樹作品
アニメ化にあたって最大の功績は「かえるくん」だろう。可愛さと不...
空虚な人生は埋められない
2022年。ピエール・フォルデス監督。村上春樹のいくつかの短編をつなぎあわせてひとつのドラマにしたアニメ―ション。震災後に妻が家を出て行った男(村上春樹に見える)はその穴を埋めようと有給休暇を取得して実家に帰ったり旅をしたりする。一方、同じ職場のさえない男は帰宅すると巨大なカエルがいて、「東京を救う」ための戦ったくれと求められる。
見ていてつくづく思い知ったのは、村上春樹作品の本質的な要素。
①本当の物語は自分ではなく身近な誰かの身に起こる。
②その物語を自分のものにする機会が生まれるが失敗する。
③結局、人生の空虚さを抱え続ける。
このところ手をつけてない村上作品の本質を思い出させるくらいよくできているということだろう。アクションやスピードよりも省略や暗示、ほのめかしが特徴。
「あ!かえるくんだ!」
中学生の頃に村上春樹を読んでから、おそらくすべての作品は買い読んでいます。中でもこの作品の原作となっている多くの作品が入っている短編集「神の子どもたちはみな踊る」は最も好きな村上春樹作品のひとつだと思っています。
そういう人間の感想なのでかなり強いバイアスがかかっていると思ってください。
日本語版の予告編でかえるくんが「かえるくんです!」と話した時、「あ!かえるくんだ!」飛び上がりました。(もちろん比喩です)
「かえるくん東京を救う」はとても好きな作品ですが、自分の頭の中でかえるくんがどんな声をしているか想像をしたことがありませんでした。それが、あの予告編の声一発で「これはかえるくんの声だ!」と思いました。他のキャラクターの声も誰ひとり「うーん、ちょっとイメージが違うんだよな」と思う人はいませんでした。これだけでも素晴らしい映画化だと思います。
正直言ってストーリー自体は、村上春樹を知らない人にとっては「これ何の話?」と思うものだろうと思います。楽しめる方もいると思いますが。
ただ、私はとても満足しました。ところどころにある、主要キャラクター以外の人(いわゆるモブ)が空気のように描かれているアニメ技法も、村上春樹作品の空気にとてもマッチしていたと思います。
想像していた通り
村上春樹原作の映像化作品として、一番好きです。
今年のアニメ映画の中でも、ルックバックよりこちらを推します。
ずっと前に原作の短編集をよみ、安西水丸さんや和田誠さんの挿し絵から想像していた、脳内の映像にほぼ一致しており、すっきりしました。いわるゆる、ジャパニメーションではうまくいかなかったと思います。
また、短編集のそれぞれの話は繋がっているようで無関係だったりしますが、うまく再構築をして一つの世界にまとめ上げてます。ダメになる前のUCU見たいです。
字幕版を見ましたが、原語の翻訳よりは原作のセリフをそのまま使っているようでした、記憶が正しければ。それもよい。
日本の描写もそれほど悪くありません。登場人物が美男美女に描かれていない(?)のも好感が持てます。主人公は村上春樹氏本人に似せてあります、たぶん。
音楽はジャズで来るかと思いきや、謎感が強くぴったりです。
以下は希望です。
郊外のバスは後ろ乗り前降りなので、直して欲しいです。
猫を待つところは無駄に長引かせて、ずっと雲の映像でもよいです。
ビールを無限に飲むシーンが見たかったです。原作を読んでそんなにビールって沢山飲めるのかって、いつも思います。
カンガルー日和も作って欲しいです。
かえるくん、東京を救う
ピエール・フォルデス「めくらやなぎと眠る女」村上春樹 の短編6本を一本の長編に再構成した作品で、短編「かえるくん東京を救う」の片桐とカエルくんのラインと短編「めくらやなぎと眠る女」の“僕”と“彼女”が他の短編のキャラも兼ねるラインが同時進行する構成でした。
構成も巧妙でとても面白かったけど、セレクトされた短編の中でタイトルにもなっている「めくらやなぎと眠る女」が他の寓意度が高い作品と比べて異質で絵ともあまりハマってなかったなと。タイトルは「かえるくん、東京を救う」でも良かったんじゃないかなーと少し思ったりしました。むしゃむしゃ。
あと、僕と友達が彼女のお見舞いに行く時にバイクに乗りながら歌ったのはなぜ「ベラチャオ」だったんだろう。
器と中味と
突然妻に出ていかれた小村の話と、その同僚で融資を焦げ付かされそうな片桐に巻き起こる不思議な話。
原作は知らず、もとは6つの話しということで章立てたつくりではあるけれど、繋がって1つの話しという作り。あ、2つの話しか?w
2011年の東日本大震災から5日間、妻が震災のニュースを見続けて何も反応を示さないという小村の話しに、担当した7億の融資が焦げ付きそうで憂鬱な片桐が帰宅すると、自宅に人間と同じ大きさで人間の言葉を喋るカエルくんがいたという話しを行き来しながらみせていく。
小村の話しは映画としてはまあありがちでそれ程面白味のない転がり方だけど、キョウコの良いところが全然みえないから同情心をあおられる感じかな。
そして片桐の話しはなんとも不思議なファンタジーで、興味は惹かれるしユニークだけど良くわからずw
あわせてみると、終わり良ければなお伽話の様なヒューマンドラマの様な感じでなかなか面白かった。
絵がシンプルな分、アニメなのに文字として入ってくる
シュールさとおかしみに浸かる
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