劇場公開日 2024年11月22日

「この出会いが嬉しくなる。おかしくて優しい空気感の虜になる」夜のまにまに 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0この出会いが嬉しくなる。おかしくて優しい空気感の虜になる

2024年11月29日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

本作では劇場での一幕から”出会い”が生まれる。もとより作品中に映画や映画館が出るだけで感動しがちな僕ではあるが、ここで上映中なのがフランク・キャプラ監督の『或る夜の出来事』というのがシチュエーションを絶妙に交錯させていて巧い。よく若い男女の巡り合い映画は”ボーイ・ミーツ・ガール”と呼ばれるが、本作も同じ。だがそれに輪をかけて、幾つもの”別れ”を描いた物語でもあるところが重要だ。人はどれだけの夜と別れを超え、いつしか掛け替えのない出会いと巡りあうのだろう。過去にも「夜」と「移動」を散りばめ作品を重ねてきた監督の到達点がここにあるような気がした。この監督は決して力まない。おおらかさと思わずクスッと笑ってしまう空気感を大切に、優しさ、人の繋がりを紡ぐ。そこに夜空の輝きの如く「星の王子さま」のエッセンスも効果的に沁み渡る。旅路の果ては新たな旅立ち。エンドシーンと共に豊かな余韻が胸に広がっていった。

コメントする
牛津厚信