「自主制作映画の延長、だが嫌いでは無い」怪獣ヤロウ! 菊千代さんの映画レビュー(感想・評価)
自主制作映画の延長、だが嫌いでは無い
予備知識はほとんど入れず、さほど期待もせずみに行った。
自主制作作品の延長くらいの出来栄えだが、嫌いでは無い。
劇場内も何か温かい空気が流れ、そこそこ笑いも起きていた。まあ、主役は別として俳優陣は自主制作レベルでは無いので、本気で作ったしょうもない作品よりは遥かに良い。
タイトルから「怪獣」や「特撮」が楽しめるかと言えば、その辺りはさすがに自主制作レベルなのであまり期待をすると肩透かしをくらうだろう。
ストーリーとしては岐阜県に実在する“関市”の観光課職員が、市のPRの為の映画作りをする中、すったもんだの末に「怪獣」映画を作る事になり、その制作過程で市のPRを実現するという話し。
しょうもない「怪獣映画」なのに、すったもんだのハプニングを見事に市のPRポイントに結びつけているのが実に面白い。
正直、岐阜県の事も関市の事もあまり興味をもっていなかったが、“関市”がどんな市なのか・・・ググった人、やられたのでは
ただ、パンフレットにコメントを寄せていた平成ガメラやGMKの金子修介監督も書いていたように、やはり自主制作レベルでも主役(仮)の怪獣がボロいダンボールというのはいかがなものかと思う。中学生の自主制作が元だとしても「怪獣映画が撮りたい!」という愛情から始まるはずなので、あのダンボール怪獣は無いな〜。
今時ご当地着ぐるみやコスプレ怪獣(特にロボット系)だって結構ちゃんとしている訳だし、もう少し愛情ある”怪獣(仮)”を作らないと、あれだけ”特撮シーン”の工夫を取り入れているのに興ざめだ。
せっかく、VFXではなくあえて[特撮]を主眼において作品づくりをしているのであれば、もっと[特撮]がもっている手仕事の凄さにリスペクトがあるべき。世界中の人々が試みた「トリック撮影」の歴史の中で、1954年に初代ゴジラが切り開いた日本発[特撮]の歴史がどれほど画期的で、その創意工夫がいかに凄かったのか、公開から70年経って尚世界中の人々を魅了する原点があるはず。そして忘れてはいけない一番のポイントだと思う。
ウルトラマン大投票では、数ある歴代ウルトラマンの中でも初代ウルトラマンやセブンが上位にいる、しかも未就学児童にとってはVFX作品より初期の特撮作品の方がテンションが上がるとも言われている。まだ多くの情報に晒されていないピュアな脳に刺さる何かがそこにあると言う訳だ。VFXのハイクオリティ映像が当然の今だからこそ、こういうB級作品でしかできない事はあるはず。
という事で発想は悪く無いけど、肝心なところが雑なので星2。