「肥満中年童貞という怪獣の一大復讐劇」怪獣ヤロウ! 糸川恵さんの映画レビュー(感想・評価)
肥満中年童貞という怪獣の一大復讐劇
「怪獣映画が大好きなだけの、なんの役にも立たない地方公務員」本作のHPでは、主人公である山田がこのように表現されているが、このキャラを単に演じるというならば別に役者がぐんぴぃである必要性はない。関市にゆかりのある俳優を使うという手もあるし、それこそ春とヒコーキの相方である土岡さんが演じても問題なさそうだ。しかしそれでも、この映画の主演は「バキ童」ぐんぴぃでなければならなかったというように思える。
この映画は、主人公の山田をカッコよく撮ろうという気が全く見えない。それどころかあえて映りが悪くなるようにしているとさえ感じた。顔のアップショットは肌の汚さが目立つし、部屋着の衣装もなんだか妙に生々しい。関市の名産を食べてパワーアップするシーンがあるが、そのシーンもはっきり言って汚い。口の中に一度入った水がこぼれていく様子をやたら接写で、スローモーションで映してくるのだから。終盤にはYouTubeチャンネルで時々見かけるあの半裸姿で怪獣を演じるわけだが、脂肪があちこちに付いたその体形をキャラクターとしての魅力にするように撮るようなことはなく、ただただ太った中年男性の半裸が映される。胸毛をどうにかするだけでも、映りは結構違うと思うのだが・・・
恐らく、それは本当に「あえて」なのだと思う。この映画の主役は山田ではなく、「バキバキ童貞」ぐんぴぃだ。社会から好意的に受け入れられず、自信を喪失し、ついにはネットミームだと不特定多数から笑われた、太った中年童貞という怪獣。それが怒りと共に暴れまわり、社会に一発の復讐を食らわせるその姿をありのまま撮った映画。それがこの映画だったのでは、と感じた。