「ビジネスとは、感情を理解しつつ、衝突を回避する知性が求められるもの」オールド・フォックス 11歳の選択 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
ビジネスとは、感情を理解しつつ、衝突を回避する知性が求められるもの
2024.6.18 字幕 アップリンク京都
2023年の台湾&日本合作の映画(112分、G)
11歳の少年が父と富豪の思考の狭間で苦悩する様子を描いた青春映画
監督はシャオ・ヤーチュエン
脚本はシャオ・ヤーチュエン&チャン・イーウェン
物語の舞台は台湾の台北のとある町
そこで暮らす11歳の少年リャオジエ(バイ・ルンイン、成人期:ジェームズ・ウェン)は、亡き母(ユ・チアハン)の夢を叶えようとお金を貯めている父タイライ(リウ・グァンティン、若年期:チェン・ヴァンゲン)を尊敬していた
タイライは高級レストランのウェイターをしていて、一帯は大地主のシャ(アキオ・チェン、幼少期:カンイン)のものだった
タイライの住居も彼の所有物で、彼の秘書リン(ユージニー・リウ)が家賃の回収に訪れていたが、彼女はリャオジエを息子のように可愛がっていた
店には、高校時代の元恋人ジュンメイ(門脇麦、若年期:ミナ・タット)が訪れるが、彼女は大量に注文して食べず、その残り物をタイライはリャオジエに与えていた
ある大雨の夜、雨宿りをしていたリャオジエはシャに家まで送ってもらうことになった
リャオジエは「父さんに家を売ってよ」と言うものの、台湾は不動バブルの真っ只中で、彼らに手出しできるようなものではなかった
シャは、成功者になるための哲学をリャオジエに教え、父とシャとの違いを例えに出す
その思考が影響したのか、リャオジエは次第に父の前で「知ったことか!」と口癖のように言い始めるのである
映画は、金持ちの老人と貧乏な父親の思考の違いを描いていて、成功者になるためには「他人の気持ちを考えてはダメだ」という金言が登場する
とは言え、その真意は考えるのがダメではなく、ビジネスとは完全に切り離すべきだという意味になる
ラストでは、成人になって英名スティーヴとなったリャオジエが登場するが、彼は「クライアントの感情を理解し、それを損なわない関係」を築こうとしていた
だが、本音としてはビジネスライクが優先で、衝突をしないように建前をうまく使い分けている
近くに小学校があるというビジネス関係以外のところにも配慮し、双方がWin-Winになるように見せかける狡猾さを持ち合わせていた
映画の後半にて、1階の麺屋を経営しているリイ(カン・ティファン)が株で失敗して自殺をして、事故物件となったことで価値が暴落したというシーンが描かれている
そこで遺族は「市場の価格で買う」というものの、シャは先約であるリャオジエ(正確にはタイライ)に事故物件の値段で売ると決めていた
だが、タイライは遺族に譲ってくださいと引いてしまい、それがリャオジエとの確執を産むことになる
一番悪どい方法は「自分で店をすると行って事故物件として購入して、店を開けずに遺族に正規の値段で転売すること」だと思うが、ここまでするとシャとの関係が悪化するのでよろしくない
購入して賃貸として貸すというのもありだが、店を開ける条件が付随すると思うので、それも難しいかもしれない
だが、それらの思惑を踏まえて、2階を店舗にするなどの方法などを考え、さらに1階部分を遺族に貸し出すという条件も伝えた上で、事故物件と正規の値段の間で購入するというのもできる
そこで事故物件よりも高くなる費用を遺族から家賃として回収し、返済に充てるという事業計画を立てることができれば、店を出すための資金も確保できるのではないだろうか
いずれにせよ、本作はビジネス思考とは何かを描いている映画であり、このケースでこの情報があるのなら、どう活かせば良いかを考える「脳」を作る助けになると思う
リャオジエはシャと父から大切なものを学び、それを活かして経営者になっているが、彼が人の気持ちを踏み躙って成り上がったようには思えない
考えれば考えるほど、いろんな解決策が出てくるものなので、人の感情を理解しつつ反発を生まない方法を考え、さらに自分の利益も追求できる方法を考えられれば、ビジネスはうまくいくのではないだろうか