劇場公開日 2025年2月28日

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TATAMIのレビュー・感想・評価

全85件中、41~60件目を表示

5.0自由と尊厳への闘い

2025年3月6日
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鑑賞方法:映画館

実話というのが、驚き。世界では、平和ボケの日本では、考えられないことが、理解できないことが起こっている。自由と尊厳のために戦い続けることの厳しさが、ひしひしと伝わってくる。

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DnaH

4.0社会派スポーツ映画

2025年3月6日
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鑑賞方法:映画館

女子世界柔道選手権。母でもあるイランの女性選手が名誉と国をかけて戦うスポーツ映画…かと思ったらトンデモナイ!そこに政治の思惑が深く関わってくる社会派映画!
国を背負って戦っている筈なのに政府に裏切られる選手。戦うのか?辞めるのか?
驚く事に実話を元に作られているらしい。
スポーツ映画としても、社会派映画としても、素晴らしい。

#tatami

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naichin

3.0TATAMI

2025年3月6日
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興奮

『選手たちは命を懸けて闘っています!』
純粋なスポーツに今でもしばしば政治が絡んでくる
イスラエルと戦ってはいけない
製作者も命懸けでイラン出身者は全員亡命 過去に男子柔道で起こった事実に基く作品
イスラム女性のヒジャブ問題も取り上げて
JUDOシーンは臨場感アリ
自分も小学6年間道場に通った
団体戦だけど講道館の都大会で入賞、そして全国大会で一回戦負けだけど武道館でも試合をしたってのは全く関係のないイラン話し🇮🇷

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kanapopo

5.0命を懸けて試合に臨む姿

2025年3月6日
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鑑賞方法:映画館

主人公の柔道選手が政治の介入に対して、
試合を継続できるのか、勝ち続けられるのか、
無事でいられるのか、最後までハラハラの展開。

映像はモノクロの画面が内容にすごくマッチしていると感じた。
試合はもちろん、登場人物たちは短時間で様々な二者択一の選択を迫られ続けるが、
その緊迫感をモノクロの強いコントラストの画面が強調しているように思った。

銃器の閃光のようなカメラのストロボとか、
冒頭とラストの同一構図による対照的な環境の描写など、
印象的な映像表現も溢れている。

限られた空間、時間の話でありながら、
高い緊張感、リアリティを維持している要因として
映像と合わせて、リズム主体の音楽の力も大きいと思った。

全編にわたって、命をかけて試合に臨んでいる選手やコーチの
気持ちの強さ、気迫の凄まじさ、正直でありたいという美しい姿に感動した。

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HK

3.5杞憂に終わるのに

2025年3月5日
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鑑賞方法:映画館

黙って見といても何もならんかったのにねぇ・・・結果論だけども
そぉかぁ、あの辺の国々はそういうお国柄なんだねぇ
日本に生まれてのほほんと平和ボケして暮らせる事のなんと幸せな事かと
実感せなあかんなぁ

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みのまる

4.0柔道の映画なのに日本人が出てこない新鮮さ

2025年3月5日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

柔道の映画なのに日本人が出てこないので違和感あったけど、新鮮に感じた
最近のイランに関する映画を観ていると、日本では当たり前にできてることができていないというのに驚き、胸が痛む
くだらない力の誇示のために個人の自由を奪うというのは許せなく、弱者は全てを捨てて逃げるしかないというのがもどかしい

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NOSTOS3

3.0国民より国の都合が優先される社会ってほんと最悪

2025年3月5日
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日本政府が映画の中に出てくるような行動を実際に取るとは考えにくいが、最近同じイランが舞台の映画『聖なるイチジクの種』を観ていたので、確かにイラン政府ならこんなことしそうと思えた。
国民が国外脱出を考えないといけない国って酷すぎる。
映画を観終わって「イランに生まれなくて良かった」と思ってしまった。

「負けると全てを失う」という話はよくある気がするが、「勝つと全てを失う」話は珍しいと思った。

この映画自体は実際にあった出来事を基にしたフィクションとのこと。
どこまでが本当のことでどこからが創作なのかは分からないが、話に納得できないところが多々あった。

イラン政府の行動がとにかくお粗末。

まず根本的に思ったのは、「自国の選手がイスラエルの選手と戦うのは好ましくないから試合を棄権しろ」とのことだが、それは試合当日ではなく、もっと事前に伝えるべきでは?
優勝を目指して人生の大半を練習につぎ込んできた選手に、試合直前になって「棄権しろ」と言ったって、納得せずに反発される可能性、高いでしょ。
イスラエルの選手と試合になったら棄権するように大会前に約束させて、それに納得した選手だけ試合に派遣すればよかったのでは?

仮に試合当日にそれを伝えるにしても、イスラエルの選手と戦う試合(この映画だとその可能性があるのは決勝戦)を棄権すればよくて、なんでそれよりもっと前の試合を棄権させたがっているのかも意味がわからなかった。
選手自身やイスラエルの選手が決勝まで進む保証はないはずなのに。
それならそもそも試合に選手を派遣しなければよかったのでは?と思った。

その一方で、選手の家族をいつでも拉致できるように家の近くに特殊部隊が待機してたり、会場に政府関係者を忍び込ませていたり、棄権に応じなかった時の脅迫する準備だけは異常に用意周到。
努力の方向性が間違ってると思う。

あとこの映画で気になったのは試合の実況。
柔道の試合っていつ勝負が決まってもおかしくないと思うが、選手が戦っている時に、実況が選手の監督の生い立ちを永遠と説明してて違和感。
実況が映画の補足説明として機能していて、実況としてはリアルに思えなかった。

試合シーン自体も淡々と進んで単調に感じた。

昔の話だからモノクロ画面にしているのだろうけど、この映画のモノクロ画面は眠気を誘う原因の一つになっていた。

脚本がダメだからなのか実際のイラン政府がダメだからなのかは分からないが、個人的には映画としてはイマイチだった。

代表チームの女性監督がイラン上層部から電話で棄権するように命じられた後、電話を切ってすぐに何か言葉を発するが、字幕だと「馬鹿」と表示されていて、音声でも女性監督が「ばーか」と言っているように聞こえたのは気のせい?

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おきらく

4.5製作に参加したイラン出身者は全員亡命しているイランでは上映不可とな...

2025年3月5日
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製作に参加したイラン出身者は全員亡命しているイランでは上映不可となっている映画で、webで予告編を見た時から「これは絶対 私好みだろう」と直感したモノクロ映画。
予算を掛けなくても「こんな緊張感のある鋭い作品が作れるんだ」と感じる。日本で起きた実話をベースにしたと知って驚いたもんだ。(※)
鑑賞中の疑問点は「イラン政府はイスラエルとの直接対決になる直前までは試合を許しては?国の代表として出場させてるんだから。」と思った。映画として盛り上げるには本作のこの脚本がいいが。
ガンバリコーチを演じたザーラ・アミールは映画監督でもあり、BBCの「2022年 世界で最も刺激的で影響力のある女性100人」リストに登場した方でイランからフランスに亡命してる。

※2019年 イランのサイード・モラエイ(Saeid Mollaei)は、男子81キロ級の決勝でイスラエルの選手との準決勝を放棄するよう求められたと明かした事件。
国際柔道連盟(IJF)は世界柔道選手権(World Judo Championships 2019)でイランの選手にイスラエルの選手との対戦を許可しなかったイラン柔道連盟(IRIJF)に対し、無期限の資格停止処分を科した。

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ナイン・わんわん

4.0家族を人質に取るからズルい

2025年3月5日
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鑑賞方法:映画館

対立するイスラエルの選手に負ける事を恐れての棄権強制かと思いながら観ていましが、、、
国として認めていないイスラエルの選手とは試合する事もままならないらしいですね。。
宗教や歴史絡みの対立や性差別など中東問題は難しいです。この映画はガザ侵攻以前の話ですから、今は余計に難しい。
映画としての問題提起と、スリラーとしても面白い映画でした。

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やまぼうし

4.5まさかの号泣した

2025年3月4日
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凄く苦しい
終わらない悪夢のような内容だけど

そんな中でも支えてくれる家族や
助けてくれる人達の優しさが何よりも心強くて

その僅かな温かさが凄く身にしみて

まさかの号泣した、、、

それでも
ラストのセリフが
ずっと終わらないんだなと認識させられる

"自由"であることがこれほど難しいとは

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創

4.0問題が複雑すぎて…

2025年3月4日
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鑑賞方法:映画館

政治とスポーツは別と言うけれどこういう作品を見るとそんな簡単な話では無いことを改めて痛感。好きな事を好きにやる自由がどれだけ貴重な事か…。モノクローム映像の効果も絶大で緊迫感がひしひし伝わってくる。必見レベル。

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peanuts

4.0ひどい話だ…と思ったが、よく考えたらこれは「スト破り」ではないのか?

2025年3月4日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

知的

選手は最後まで真剣勝負がしたいのに、イスラエル選手と対戦する可能性があるという理由で、イラン政府から棄権を強要され、拒絶すると家族まで迫害の手が及ぶ…
実話を基にしたフィクションだが、これだけみれば確かにひどい話だ、イランけしからん、で納得しそうなところ。

だが、調べてみると、そう単純な話ではない。
パレスチナ問題を理由に、イスラエルのスポーツ選手との対戦を忌避すること(イスラエル・ボイコット)は、イランだけに限らず、アラブ・イスラム圏の国全般に及ぶもので、アラブ・イスラム諸国が団結してイスラエルの所業に抗議する「ストライキ」の意味合いをもつ。
労働運動としてのストライキは周知の通り、使用者の行為に対して労働者が団結して労働を行わないことで抗議するものだが、労働組合が機関決定に基づいて行うストライキは組合員を拘束する。
もし個々の組合員が、「私は労働がしたい!わざと何もしないなんて我慢できない!」なんて言い出して勝手に労働現場に戻ったら、それは「スト破り」として他の組合員に対する裏切り行為とみなされ、組合からは除名処分など制裁の対象となりうる。
意地の悪い見方かもしれないが、ホセイニ選手の行為は「スト破り」そのもので、アラブ・イスラムの同胞に対する裏切り行為と解釈することも可能であり、制裁を受けてもやむをえない面もあるのではないか。

個人的な意見では、わざと棄権させて対戦を忌避するやり方が賢明とは思えないし、映画で描写されたように家族まで脅迫の対象とするやり方はさすがに行き過ぎだし、一般論としてスポーツに政治を持ち込むのは勘弁してほしいと思うが、昨今のロシア・ベラルーシ選手の閉め出しをみても、依然として「スポーツに政治が持ち込まれ」ているのは動かざる現実だし、イスラエルのパレスチナに対する残虐行為を目の当たりにすればボイコット行為が不当とは必ずしもいえまい。
この映画はイスラエル人と反体制イラン人の両監督の合作だが、パレスチナ問題に関してどういうスタンスなのかも気になるところだし、仮にイスラエルのパレスチナに対する所業を棚に上げてボイコットの不当性だけを喧伝するプロパガンダが目的だとしたら、お世辞にも賛同できるものではない(実際はどうなのか知らないので、この点に関する評価は保留とする)。
それはさておき、私が言及した「スト破り」との解釈は、映画の作者にとっては「想定外」であるのは間違いないと思うが、このように作者が意図しなかった解釈の余地を許容する点で、本作は「良作」だといえよう。
ニーチェ曰く「事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである。」

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残飯マン

3.5モノクロ映像がもたらす閉塞感。

2025年3月3日
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2019年の東京で開かれた世界選手権で、イランの男子選手がイスラエル選手との決勝戦を棄権した実話にインスパイアされた作品であるようだ。ちなみに映画に出てくるWJFという組織は存在せず本当の柔道の国際連盟組織はIJF。
ジョージアの首都トビリシで開かれた女子柔道世界選手権で60kgのクラスに出場したイランのレイラ・ホセイニ。(しつこいようだが補足すると60kgというクラスはなく63kgとなる。北京で金メダルをとった谷本歩実さんのクラス)ガンバリ監督と二人三脚で序盤順調に勝ち上がるが、イスラエル選手と対戦することを恐れる本国から棄権するよう圧力がかかる。
全編の8割位がトビリシの会場の場面でありそれも広い観客席などはほとんど映らず選手控室や関係者席、廊下など狭くて暗い場所でのシーンが多い。あとは畳の上。そしてレイラと監督が右往左往して追い詰められていく姿をスタンダードサイズのモノクロフィルムが切り取っていく。実に殺風景であり閉塞感極まりない。
二人は柔道がしたいだけ、というよりは長く努力してきた柔道で結果を出したいのである。でも国家がそれを許さない。さらにスポーツ大会でありながらヘジャブの着用をもとめられること、国際大会で外国に行く妻が夫に許可をもらわなければならない不道理も描かれる。
映画の結末としては、やはり個人は国家に勝てない、選択肢は限られている。そのために何を失ったかについては触れられないけど。
ちなみに、柔道の世界大会でありながら、日本人の選手は1人も出ません。やはり難民問題となった場合、関係のない国(積極的に関与しない国)だと思われているのかな?

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あんちゃん

5.0現状の日本が抱える問題にも間接的に触れる作品。おススメ。

2025年3月3日
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今年72本目(合計1,614本目/今月(2025年3月度)6本目)。

 この作品で扱われていること「それ自体」は史実ではないですが実際にあったできごとを他の問題(後述)と絡めて描いた作品で、それが日本でも一部当てはまる部分にもなっており良かったな、というところです。

 まず、映画で示されるように、イランとイスラエルは歴史的にも非常に険悪な状況でにらみ合い状態です。このように、試合をするのも嫌だから棄権しろというのはよくある話で、柔道にせよサッカーにせよ、いわゆる「地域予選」があるような大手のスポーツではイラン、イスラエル(イスラエルを主軸とするとやはり衝突する国も多い)ほか一部で試合が成立しない等も見られます。

 もっとも日本をはじめ多くの国では「政治とスポーツほかは別扱い」としますから、ロシアのウクライナ侵攻があっても、アイスホッケー等ロシアのスポーツ等の交流はもちろん続いていますし、諸般あって国として承認していないところでも試合が組まれれば政治論とは別に試合はします。台湾や北朝鮮等がそれにあたります。日本をはじめ大半の国はそうなのですが、政治とスポーツの交流をごっちゃごちゃにする国がいくつかあり、100年どころか500年も1000年もいがみ合うような国ではそれが今現在でも顕著で、その代表例がパレスチナ問題で、それに付随するイランということになります。

 実際に起きた事件は男性の柔道出場がテーマとなっていましたが(結果的に棄権をほぼ強制された)、この映画では女性に主人公が変わっています。

 このことは、イランにおいて女性特有の帽子(ヒジャブ)の着用を巡って国内で対立が起き、軍隊まで出動して難民まで出てきた「マフサ・アミニ(氏/さん)事件」を参照しており、彼女はいわゆるクルド人にあたります。この事件もいくつかの国は制裁を科していますが、日本は「遺憾に思う」程度で終わっています。

 一方で日本のクルド人といえば1990年頃に、日本でもうすでに3K仕事として避けられていた解体業等に積極的に参加していた(イラン他ではメジャーな仕事なので、当時からいる方からすると「日本人はなぜこの仕事を嫌がるのか」ということのよう)彼らが住み着いたまま30年以上がたつ状況です。一方で日本の解体業といえばどうしても高齢者には難しいし、かといって若者が最初につく仕事としてはあまり認知されていない仕事になってしまっています。こうした「(純粋に日本人が就職できる仕事という観点で、社会から消えつつある職業」がまさにこの「解体業」であり(※後述)、一方でクルド人というカテゴリも上記のようにイラン・イラクのように人権思想が無茶苦茶な国に強制送還しましょうということにもできず、一方で日本で暮らすうえでは最低限のルールは守ってねということになるわけで、そうしたバランスを取りながら日本は動いているわけです。

 ※ 行政書士の資格持ちの一人の意見としては、日本が社会的にも世界的にも認知されている先進国だからこそ、客観的に見て明らかな難民は受け入れていく責務があるというように考えています。

 ※(上記後述としたもの) ほか、ダイヤモンドなどの貴金属を、ネックレスや腕輪などに加工する「高級(宝石)装身具作成」も、日本では在日韓国・朝鮮の方がその従事者では7~8割を占めます(東京には「御徒町」というその専門を扱う一帯がありますが、その部分の大半は韓国籍の方です。これも「日本人ができない、やりたくないことを引き受けて歴史が途切れていない例」になります(解体業ほど難しい仕事ではないが、独り立ちするのにかなりの年数を要する)。

 映画の中ではクルド人といった語はでませんが、原作で参照されている事件の男性を女性にしたこと、またこの女性の上記の事件がクルド人であり難民となったことなども日本は全く無関係というワケではなく(先進国としてお金や経済物資を送っても何も解決しない)、日本がこれからどうあるべきか、より広義にいえば、「西アジア(トルコやイスラエル等含む)とどう向き合うべきか」という問題提起も(日本で見る分には)あるように思えます。

 採点上特に気になる点までないのでフルスコアにしています。

 決して「派手な」映画ではありませんが、日本からはるかかなたにある「人権侵害が無茶苦茶な国」で何が起きているのかといった知識をアップさせるには良い作品かな、というところです。

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yukispica

4.5モノクロで描かれる、個人の「自由」と「尊厳」

2025年3月3日
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悲しい

興奮

知的

柔道の世界選手権を舞台に、イランの代表選手が、敵対国イスラエルの選手との対戦を避けるよう政府から圧力を掛けられる中、孤独に戦い続ける様子を描くスポーツ・スリラー。モノクロによる鮮烈な映像表現も特徴的。監督はガイ・ナッティヴとザーラ・アミール。脚本は、ガイ・ナッティヴとエルハム・エルファニ。驚くべきは、監督・主演のザーラ・アミールはイラン出身。監督・脚本のガイ・ナッティヴはイスラエル出身である。

最初に述べておきたいのが、パンフレットの内容の充実具合。監督2人からの力強いメッセージに加え、『eJudo』編集長・古田 英毅さんによる本作の基となった事件に関する解説、監督へのインタビュー。その他、寄稿された記事に至るまであらゆる情報が本作を深く理解する事に役立つ。900円の価値は十分にあるのでオススメしたい。

日本発祥の武道「柔道」。その世界選手権で初の金メダルを狙うイラン人アスリートのレイラ・ホセイニ(アリエンヌ・マンディ)は、自身もかつて優秀なアスリートであったマルヤム・ガンバリ(ザーラ・アミール)監督の下、日々研鑽を積んできた。初戦、二回戦を危なげなく制し、初の世界女王の座も現実味を帯び始めた頃、ガンバリにイラン柔道協会から連絡が入る。
「ホセイニを怪我を理由に棄権させろ。これは政府の意向だ」
優勝候補の1人であり、レイラのライバルであるシャニ・ラヴィ(リル・カッツ)はイスラエルの選手。イスラエルと政治的な対立を抱えているイランにとって、自国の選手がイスラエルの選手に破れるような事は、自国の尊厳においてあってはならない事態なのだ。
政府の意向に反発し、ガンバリとの対立によって孤独に戦い続けるレイラは、尚も順調に勝ち進んでいく。しかし、時を同じくしてレイラの夫ナデル(アッシュ・ゴルデー)と息子アミル、そして両親のもとへと脅迫の為の工作員が向かっていた。

自国の尊厳の為に、一人のアスリートの夢と努力が平気で踏み躙られる姿に胸を締め付けられる。日本では信じられないような話だが、世界ではこうした圧力によってアスリートやアーティストの夢が踏み躙られる事があるのだと思うと、あまりにも心苦しい。

本作の救いであり希望は、レイラに対する自国の政府以外からの手厚い対応だ。世界柔道協会(WJA)のステイシー(ジェイミー・レイ・ニューマン)は、いち早く事態を察知し、レイラやガンバリに救いの手を差し伸べる。夫ナデルは、政府の圧力に怒りを示し、彼女に「負けるな、戦え。こっちの事は僕に任せて」と、レイラのアスリートとしての意志や尊厳を尊重し、自らの危険も顧みず背中を押す。かつて政府の圧力に屈し、一度はレイラと対立する事になるガンバリも、クライマックスでは自身の立場をかなぐり捨て、一人のアスリートとして、コーチとしてレイラを応援する。
こうした、レイラを取り巻く様々な環境が、レイラを救おうとする様子に胸が熱くなった。特に、夫ナデルの勇気と妻への揺るぎない愛には、思わず目頭が熱くなる。

そんなレイラを演じたアリエンヌ・マンディの熱演も素晴らしい。逞しく、反骨精神に満ちたレイラ・ホセイニというキャラクターに抜群の説得力を持たせている。協会からの圧力を前に、トイレで激昂して鏡に額を打ち付ける姿、準々決勝でイラン女性に義務付けられているヘジャブを脱ぎ捨て、自らの自由と尊厳を胸に果敢に挑む姿が印象的。
また、試合直前の測量で、自身の出場する60kg級を僅かにオーバーし、与えられた20分という制限時間の中で必死に減量に励む姿がリアル。

政府の思惑とは裏腹に、レイラは準々決勝で敗れ、ラヴィも準決勝で敗退する。あれだけ恐れられていた、イラン人選手とイスラエル人選手の対戦は実現しなかったのだ。しかし、自分達の意思に反して試合を続けたレイラと、彼女を説得出来ずに、遂には試合を応援したガンバリを彼らは決して許さない。彼女達は、WJAのステイシーとアブリエルに保護され、遂にイランからの亡命を決意する。
特徴的なのは、レイラとラヴィは、互いを良きライバルとして認め合い、敬意を払っているという点だ。彼女らは1人の人間として、アスリートとして、国家の対立など関係なく互いを尊重し合っているのだ。だからこそ、それと対比して描かれる政府の傲慢さをより滑稽に浮き彫りにして見せている。

モノクロによる映像表現の美しさと、その選択の裏にある狙いを想像すると、その素晴らしさに拍手を送りたくなる。自らの自由と尊厳を胸に最後まで戦うか、政府の意向に従い棄権するかという選択は、白か黒かという意味において、モノクロ表現によって効果的に示される。また、個人の自由や尊厳という“カラー”が認められない様子にも繋がっている。

惜しむらくは、試合シーン、特に決着がつく瞬間の迫力不足だろうか。古田英毅氏によると、柔道の「投げ」は引きの絵ではたとえトップアスリートを起用したとしても説得力ある表現は難しいのだそうだ。しかし、やはり試合シーンの大半が選手に接近し過ぎており、素人の私には何が起きているのか分かりづらく、投げの瞬間の迫力にも乏しいように感じられた。畳に打ち付けられた瞬間の「ドン!」という音の響きの良さが、辛うじて決着の瞬間の迫力を告げてはいるが、出来れば投げの瞬間だけでもアップによる映像とロングによる映像とを連続して見せる等の外連味ある表現をして欲しかった。

ラスト、レイラとガンバリはイランから亡命し、生活拠点をパリに移している。彼女達は、様々な理由で亡命を余儀なくされた人々の集まる難民チームに加わっている。オープニングと同じ構図でバスに揺られ会場へと向かうレイラとガンバリの面持ちは消して明るくはない。しかし、ヘジャブをせず、自らの「自由」と「尊厳」を取り戻した2人は、見つめ合ったほんの一瞬、僅かな笑顔を見せる。
レイラが試合会場のライトの眩い光りの中へと向かって行く姿は、まるで、「さぁ、リターンマッチだ!」と言わんばかりだ。今度こそ、彼女(達)は「尊厳」と「自由」を胸に、“畳”の上に立つのだ。この力強く希望に満ち溢れたラストの何と美しい事だろうか。

監督達が願うように、本作で描かれている人々の思いやりや協力が勝利する事が、現実でもそうなってくれるよう願うばかりである。

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緋里阿 純

5.0イランまじひどい

2025年3月3日
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鑑賞方法:映画館

2025年劇場鑑賞70本目。
エンドロール後映像無し。

最初はただの柔道の映画かな、と思っていましたが、隷属国のイスラエルに勝ったらまずいからケガしたフリして棄権させろ、と、イラン柔道協会長から世界大会試合中の監督に連絡が来る所から始まります。
別にその時まだイスラエルと試合する事は決定しておらず、まぁ試合決定してから棄権しろという話でもないのですが、イランが国に残っている監督や選手の家族を逮捕するのはほんとクソみたいだし、なんなら「国に脅迫されています!」とメディアに言っちゃえ!とずっと思いながら観ていました。

別にモノクロじゃなくても・・・とは思いましたが、後でこの映画のスタッフ全員がイランから亡命したと聞いてその映画人の勇気に星5つです。

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ガゾーサ

3.5先日みた『聖なるイチジクの種』同様関わったイラン人キャスト・スタッ...

2025年3月2日
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鑑賞方法:映画館

先日みた『聖なるイチジクの種』同様関わったイラン人キャスト・スタッフは全員亡命を余儀なくされたという状況で作られただけあって、イランの体制側がイスラエル選手と対戦しないように主人公に棄権をするよう圧力をかける様はリアルに描かれてるが、なぜイランがイスラエルをボイコットしたがるのか、主人公以外の選手の心情はどうなのか(自分達も危険にさらされるかもしれないし、イスラエルに反感もってるかもしれない)が描かれてないのがちょっと不満が残りますかな。イランとイスラエルの監督が共同で撮ってるらしいのでその辺は掘り下げられなかったかもしれませんが。

あとは柔道の話なのに日本人がほぼ出てこない(イスラエルの選手が一回戦で勝った相手の道着に日の丸がついてたかも)のが気になったけど、限られた製作環境のなかアジア系の俳優の雇用などが困難だったのかなと察します。

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teraox

5.0エキサイティングな映画なのにしっかりポリティカルなのが凄い

2025年3月2日
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怖い

興奮

知的

 世界選手権の柔道女子の開催中のスタジアムの中だけで厳しい事態が進む、にも関わらずハラハラドキドキが止まらないエンターテインメントの良さを湛えつつも、イラン政治の理不尽をとことん突く傑作です。映画の持つ力を思い知る最良の作品です。

 何故モノクロなのかわかりませんが、ビスタサイズのやや狭いサイズで、まるでドキュメンタリーかと思うイントロです。特段実話ベースとも示されませんが、近似の現実の事件をモチーフにした創作とのこと。2019年、日本武道館での世界柔道選手権で実際に起こった事件を指すらしい。見慣れぬ出演者の中に「聖地には蜘蛛が巣を張る」の美人さんザーラ・アミールが女子柔道の監督役として出ていたから、すぐさま劇映画だと判明した。その前作同様にフィクションベースでもって現実のイラン体制を厳しく糾弾する。

 ジョージアの首都トビリシで開催中の女子世界柔道選手権。イラン代表のレイラ・ホセイニと監督のマルヤム・ガンバリは、順調に勝ち進んでいくが、金メダルを目前に、政府から敵対国であるイスラエルとの対戦を避けるため、棄権を命じられる。これが総ての映画であり、それにどう対処するかが描かれる。

 ほとんど脅迫のレベルで、当事者の家族が拘束される事態。政治的思惑で体面優先の思考では、当事者が困窮するまで徹底した脅迫が政府によってなされる。その恐怖たるや、テヘランから遠く離れたジョージアの会場までも、大使館員を動員してあの手この手で主人公を追い詰める。そのやり口の陰湿なこと実におぞましい。

 この人権侵害を受け大会を主催する国際柔道連盟が彼らの援護にまわる。オリンピック亡命も耳慣れた現実の通り事は進む。イランでは最高指導者が決めたことは絶対で、実質独裁と何ら変わらない。下僕達が忠実に理不尽な命令を実施させようと必死なのも、独裁国家ならではで、遂行しなければ自らの地位どころか命すら危ういから。国家なんて抗えばすぐさま国民を縛り上げるもので、民主主義なんて享受するものでもなく授かるものでもない。皆が戦わなければ維持できないものと改めて思い知る。

 このヒリヒリ感を柔道の試合の進行としながら、切り返しで描く巧みが本作の白眉。柔道ゆえ日本語由来の用語が実況中継に交じり、取り組みをする二人の選手の動作とをリンクさせ、念入りな編集がスリリングを盛り立てる。実際の試合ではなく、撮影用とは言えサスペンスの熟成も見事なものです。役者さんなのによくぞここまで取り組んだと驚きました。

 イラン代表が勝ち進むか、イスラエル代表がどこかで敗退するかによって国家が案ずる事態も変わってくる。にも関わらず、命令に背いた時点で反逆者の烙印おされ、母国に帰れば刑罰と家族離散しかない現実。当然に、決意を決めた監督ともども亡命の道を選択する。公開中の「聖なるイチジクの種」もイランの惨状を告発する西側サポートの下で制作された。

 なにしろフラッシュバックで描かれる、テヘランでの夫婦の生活は愛に満ち、秘密ディスコではヒジャブを脱ぎ捨て踊りまくり、妻の世界大会だからと親戚一同集まってのテレビ観戦では誰一人ヒジャブなんかしてなく、結構豊かなヘアスタイルを楽しんでいる。これを宗教警察が取り締まるなんて到底無理にしか思えない。

 難しければ、優れたテーマがあれば、高尚な意思があれば・・いい映画って言えるわけもなく。その上で時間芸術たる心理の持続性、すなわち見せる悦びを同時に満たしてこそ本物の映画なのです。思いもかけず秀作に出合え、こんな嬉しいことはありません。

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クニオ

4.0近くて遠い国

2025年3月2日
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なかなか珍しいイラン映画。と思ったけど、
最近は聖なるイチジクやアプレンティスの監督、
アリアッバシもイラン。
タイトルはTATAMIは日本の畳。
柔道世界戦を中心に社会的、宗教的な問題が彼女の集中力を削がれていく中、果たしてメダルに手が届くのか。
イランは遠い国で実情はわからないのですが、映画という形で世界に国の問題を訴えていく、という選択をとれるという土壌があるのに、どこで何かが歪んでしまったのだろう、という関心を非常に持ちました。これは完全に監督の目論見にのってしまってますが、互いの国を知ることによって解像度が深まりますから
イランは親日国です。興味ある方は日章丸事件で調べてみましょう

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うっか

3.5勝てなくても、戦う意味ーー圧政下での自由への闘争

2025年3月2日
iPhoneアプリから投稿

観ている間ずっと息苦しさを感じる映画だった。
イランの国家権力は強大で、個人の自由は存在しない。そこに抗おうとする主人公が、どれほど無力で、どれほど選択肢を奪われているのか。
圧倒的な抑圧の中で彼女が取る行動は、決意の表れというより、もはや「生きるための本能的な選択」に見えた。

試合中、彼女は呼吸が苦しくなり、試合用のヒジャブを脱ぐ。呼吸が楽になり、再び動けるようになる。これが、象徴的なシーンだった。ヒジャブを外すことで彼女は初めて「息ができる」。
宗教の抑圧、国家の支配、その両方を象徴する布を取り去ったことで、彼女は一瞬だけ自由を感じることができる。だが、それはあくまで一時的なものでしかない。

体制は絶対的な存在として描かれた。国家はすべてを監視し、命令に従わない者は粛清される。
コーチは家族を守るために最初は体制側に従うが、主人公の闘志を目の当たりにし、彼女を支える側に回る。だが、その瞬間、彼は国家の復讐に遭い、容赦なく排除されそうになる。

この映画では、イランの政権側は絶対的な悪だ。そこに「体制側の言い分」や「葛藤」は一切描かれない。ただ、冷酷に、圧倒的な力をもって個人を押し潰していく。
そのため、観客としては、主人公が最後まで「戦うことしかできない」状況に共感しつつも、「どうにもならない無力感」に囚われることになる。

この映画は単純な「勝利の物語」にはならなかった。もし、彼女が体制に抗いながら勝利を掴んでいたら、それは西洋的な「自由の勝利」の物語になってしまうだろう。
でも、この映画は違った。彼女は戦ったが、勝てなかった。彼女がどれだけ努力しても、どれだけ強くなっても、国家の抑圧は揺るがない。
だが、それでも「戦うことには意味があった」。

この映画を観ていて、最近見た「聖なるイチジク」を思い出した。同じく神権政治の抑圧下でのイランの物語だ。あの映画で抑圧者の象徴として描かれる父親は、システムの中で生きることを強いられた犠牲者でもあった。だからこそ、観客は彼に対しても一定の理解を示すことができた。
「TATAMI」にはその余地がない。国家は悪、個人は犠牲者。ただそれだけの構図だった。その分、テーマは明快で、わかりやすいが、人間ドラマとしての奥行きは少し薄かったかもしれない。

この映画の価値は「個人が勝つ話ではない」というところにある。どれだけ戦っても勝てないかもしれない。それでも、戦わずに従うことは、生きている意味を失うことだ。
だから、彼女は最後まで戦い続けた。それが、この映画の持つ最大のメッセージなのだと思う。

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nonta
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