「「日本人の形成」のプロセスがつまびらかにされる」小学校 それは小さな社会 Tofuさんの映画レビュー(感想・評価)
「日本人の形成」のプロセスがつまびらかにされる
舞台は2021年度の世田谷区立塚戸小学校。新入生の入学前から翌年の入学式までの一年間を追ったドキュメンタリー。主に1年生と6年生に焦点を当てて追いかけていて、6年生は新入生を迎えるところから卒業式まで、1年生は自分たちが入学するところから翌年2年生として新入生を迎えるところまでが描かれている。
ちょうどコロナ禍2年目の年で、マスクやアクリルの仕切り板、そして黙食など、あの時代を象徴するいくつかのアイテムが必然的に含まれることを除けば、おそらく多くの日本人にとっては馴染み深い、誰しもが頭に描くであろう小学校生活が淡々と映し出される。
学習指導と生活指導が並行して行われ、その中で規律や努力、勤勉といった日本社会や日本人を形容するのに頻繁に用いられる資質を6年間で獲得していく様、まさに英語タイトルが示している通り「日本人の形成(The Making of a Japanese)」のプロセスがつまびらかにされている。
まさに日本人の美徳であり、その過程での児童たちや先生方の葛藤や努力の様には胸を打たれ、目頭が熱くなる。おそらく製作者サイドの意図もその日本の良さを世界に知らしめることにあったに違いないと思う。
ただ、一方で、前日に「型を破る」話を観たばかりであるせいか、「子どもたちの主体性を伸ばすために頑張っていきましょう」と職員会議で話していながら、手の挙げ方や靴の揃え方、廊下の歩き方まで、事細かに指導している様を目撃していると、どちらかというと「型にはめる」方向に向かっているのではなかろうかという疑念が自分の中で払拭できなくなっている。社会マナーの指導の意義も理解できるだけに、どの点をどう評価するのか、観客一人ひとりの観点が問われる気がする。