「ソフィア・ブテラの活躍が見たかった」ARGYLLE アーガイル 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
ソフィア・ブテラの活躍が見たかった
マシュー・ボーン監督の派手でかっこいいアクションの演出は「キック・アス」や「キングスマン」シリーズで大のお気に入り。本作も当然ながらボーン監督らしい見せ場が満載なのだが、VFXに頼り過ぎなせいでいまひとつ乗り切れなかった。アクションシーンで活躍する主要な俳優たちについては、年齢的・体型的に考えて大部分が本人たちの演技ではないのが明らかで( 比較的若いヘンリー・カヴィルは自演のアクションも多いかもだが)、スタントマンのパフォーマンスにポストプロダクションで顔を差し替えたものだろう。もちろん過去のボーン監督作でも使われた手法だが、もっと俳優自身が演じる格闘アクションとのバランスが取れていた気がする。「キングスマン」のガゼル役でボーン監督が世界に知らしめたソフィア・ブテラを本作でも起用しながら、身体能力の高い彼女をアクション場面で活躍させないなんて宝の持ち腐れで、実にもったいない。
作家エリーの小説世界と現実世界が交錯するメタ構造は面白いのだが、CGを多用したシーンの張りぼて感と展開の目まぐるしさも相まって、作り手がフィクションの世界をこねくり回して楽しむことを優先しているような気にもなった。なお構想としては「アーガイル」シリーズが3部作になり、さらに「キングスマン」シリーズともシェアド・ユニバースになるそうで、将来の期待は大きいものの、VFXを偏重しすぎて近年のアメコミヒーロー映画みたいにしないでと切に願う。
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