「二転三転する展開に心地よくだまされる」ARGYLLE アーガイル tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
二転三転する展開に心地よくだまされる
単純なアクション・コメディーだと思って油断していたら、両親が敵だったり、自分が凄腕スパイであったことを思い出したり、そうかと思えば、その主人公が敵の組織のエージェントだったりと、意表を突く展開に素直に驚かされた。
考えてみれば、小説と事実が偶然に一致していたとか、小説家に予知能力があるとかといった設定は荒唐無稽すぎるので、小説の内容が、彼女の無意識の記憶だったというカラクリは、それなりに説得力があるように思える。
イアン・フレミングやジョン・ル・カレにまつわる質問だとか、心臓を撃たれて死んだ登場人物を生き返らせるアイデアだとか、倒れた敵の頭を踏み潰してとどめを刺すアクションだとかが、伏線として機能しているところも良くできている。
カラフルな煙幕の中でのダンスのような銃撃戦や、重油の上のアイススケートのような近接戦闘など、いかにもこの監督らしいアクロバティックなアクションも堪能することができた。
ただ、二転三転する物語だけでも十分に楽しめたので、終盤の派手な活劇の連続が、少々くどく感じられたのも事実である。
しばらく見ない間に、ブライス・ダラス・ハワードの体格に、随分と厚みが増したことが気になったのだが、小説家としての不摂生な暮らしぶりを表しているのかもしれないと思いつつも、彼女が、覚醒後に、キレッキレの身体能力を発揮する様子には、やはり違和感を覚えてしまった。(こういうことを書くと「セクハラ」と言われてしまうかもしれないが・・・)
いずれにしても、観客を喜ばせようという作り手の心意気が感じられる反面、全体的に冗長になってしまった印象は否めないので、もう少しコンパクトにテンポよくまとめられていたら、より一層楽しめたのではないかと、少し残念に思ってしまった。