宇宙戦争 ロンドン壊滅のレビュー・感想・評価
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モノは良いが表現は古すぎる
H・G・ウェルズのSF小説『宇宙戦争』が原作。
この小説は1898年に発表され、火星人が地球を侵略する様子を描いている。
この小説は過去に二度くらい映画化されたが、有名なのが2005年のスティーヴン・スピルバーグ監督 トム・クルーズ主演のものだ。
あの作品は圧巻ともいえるものだった。
あれよあれよという間に事態が急変していく様は、見る側に暇を与えない。
これぞハリウッド スピルバーグ作品。
それから約20年 この作品がイギリスからリリースされた。ウェルズの故郷だ。
だが非常に悩ましく思える。
冒頭登場する3人の学生
彼らの緊張感というのか雰囲気がまったく変化することなく最後まで同じリズムを繰り返している。
何故いまさらそんな作品を作ったのだろう?
穿った見方だが、監督は何度もリメイクされた有名な作品で興行収入を挙げたかったのか、名前を売りたかったのかと思ってしまう。
さて、
この小説『宇宙戦争』を元にしたアメリカのラジオドラマ
1938年10月30日にオーソン・ウェルズがラジオ番組「マーキュリー放送劇場」で放送したもので、火星人が地球を攻撃しているという内容があまりにもリアルだったため、多くのリスナーが本当に火星人が襲来したと信じてしまい、パニックが起きたことがあった。
それほどこの小説はリアルだったのだろう。
我々が勝手にイメージしたタコのような火星人の様相も、これが元ネタだ。
そのあれよあれよという当時のパニックになるような雰囲気を、スピルバーグ監督はうまく映像化した。
ラジオの鬼気迫る声が人々をパニックに陥れるほどだ。
それが良く表現されていた。
私もDVDを買ったほどよかった。
しかし、
この「ロンドン壊滅」版にはそのような緊張感はない。
そのほとんどが学生三人の会話に終始する。
何故そんな手法を取ったのだろう?
さて、、
そもそもこの小説はいったい何を描いているのだろうか?
地球よりもはるか高度な科学技術を持った生命体
永い間地球を観察していたことがナレーションされる。
オチは同じで、細菌やバクテリアの存在だった。
これは、人間の盲信を描いているのではないだろうか?
誰かの勝手な意見 思想 ドグマ 私利私欲
奪い取るという勝算の計算
それによる無慈悲な攻撃
それらしい大義名分を掲げた植民地化活動
彼ら火星人の目的は地球の植民地化計画と言ったところだろうか。
小説が発表された1898年当時は、米西戦争 ヨーロッパの帝国主義 産業革命の進展…
パニックが起きた当時の第二次世界大戦下の世界情勢 侵略 攻撃 殺戮 強奪…
この思考の延長線上ですべての物事を見てしまうのが、人間なのかもしれない。
戦争のきな臭いにおいが立ち込めていたのだろう。
だからこそ、ウェルズはこの小説を書いたのかもしれない。
そして繰り返されるきな臭い世界情勢…
「サイコ神父」だけは新しかった。
映像は頑張ってるけど
S.スピルバーグが描いた2005年版から早くも20年経った今、再び映像化された本作だが、2005年〜2008年位までは"本家"の影響からかリリースされる回数も多かった印象だが、昨今はめっきり見かけなくなった様に感じる。
本作で描かれるのは異星人の恐怖と、危機に瀕した際の人間の恐ろしさであり、ある程度新解釈にはなっているが本作でもテーマは同じである。本国では公開されたのかは不明だが、それなりに映像表現は頑張っており、B級ファンとしてはニヤリと出来るポイントだ。
だが、もちろん大作級の予算を投じられる筈もなく、戦闘シーンはほんのちょびっとしか描かれない。それも異星人から逃げる主人公らの背景の様に、引きの画がほとんどである。だがそれは観る前から期待していないので問題無い。
本作で残念なのは、驚くほど緊迫感が皆無という事だ。周囲の状況も分からず、どこまで逃げれば良いのかも見当がつかない状況で、小隊の唯一の生き残りである人物を味方に付け、鬱蒼とした森や閑散とした街をウロウロしているだけの画が続き、何の盛り上がりのないまま"原作通り"の展開を迎えるのである。
危機的状況の中でも困難に立ち向かう人々の姿や、絶望の中に光る希望の様な展開を入れた方がまだ観れたのではと思う。
H.G.ウェルズの描いた物語は確かに怖いと思うが、時代も移り変わり、巨大宇宙船の一撃で大打撃を与える異星人だったり、スポーツカーに変身する異星人、怪獣のクローンを作って海の底からやって来る異星人など侵略も効率化を重視する様になってきた現代において、ちっぽけな人間をレーザー銃で一人ずつ消していく非効率的な侵略を目論む異星人なんて居ないだろう。ふとそん事を考えてしまったが、それでもしっかり怖かったS.スピルバーグの作品はやはり凄いのだろう。思わず自身のBlu-rayコレクションから手にとって見てしまった。
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