ダム・マネー ウォール街を狙え!のレビュー・感想・評価
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下層の意地と反逆に鼓舞される。
富裕層に楯突いた名もなき庶民たちの胸のすくような実話、という体裁からして、いかにもハリウッド好みの題材に思えるし、草の根の運動が大きな波を起こすカタルシスも、実話ベースであることを思えば、ハリウッド的な単純化から逃れてはいない気がしてしまう。しかしそれでもなお、この映画が描く反骨精神を応援しようという気持ちには同調するし、群像劇で登場人物が多く、ひとりひとりの掘り下げに時間を割いていないからこそ、誰かひとりに肩入れするのではなく、ムーブメントに自分も参加したような気分が味わえる。その意味では、今必要な下層の人間を鼓舞してくれる役割をクレバーに果たしている作品ではないだろうか。『ラースとその彼女』『アイ、トーニャ』のクレイグ・ギレスピー監督のことが好きすぎて、ちょっと評価が甘くなっている気もするが、まあそれも監督の功績が為せる技ということで。
題材に誠実に向き合った作りだが、それゆえの物足りなさも
IT系ニュースサイトで翻訳に携わってきた関係で、「ゲームストップ株騒動」は一応覚えていた。とはいえリアルタイムで追いかけていたわけではなく、公聴会が開かれるほどの大問題に発展してからの報道で、それまでのおおよその経緯を知った程度だが。そんなわけで本作を観ることにより、主人公であり騒動を牽引したキース・ギルの動機や、彼の動画配信やRedditの書き込みを通じて賛同した低所得の若年世代が手数料なしの投資アプリ「ロビンフッド」を通じてゲームストップ株を買い支え、巨額の空売りを仕掛けていたリッチな大口投資家らを慌てさせる過程などを追体験する感覚でよく理解できた。
本編中に「マネー・ショート 華麗なる大逆転」の映像の引用があったが、同作や「アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!」を撮ったアダム・マッケイ監督の作風と比較すると、金融市場を通じて富裕層が庶民から収奪する構造を問題提起するスタンスは近いものの、ユーモアやサスペンスで盛り上げる娯楽成分が、この「ダム・マネー ウォール街を狙え!」にはやや足りない。誠実に向き合ったことは伝わるのだが、まじめゆえに物足りないというか。コロナ禍の期間に撮影されたため、登場人物の大半がマスクを着けていたり、電話やビデオ会議で会話するシーンが多いなど、あの時期特有の閉塞感が漂っているのもすっきりしない一因だろう。
ゲームストップ店舗の上司をデイン・デハーンが演じていて、ほぼマスク着用のためカメオ出演みたいな感じになっているのはちょっと笑えたが。
わかりやすく、高揚と狂騒に満ち、語り口にも勢いがある
我々の暮らしが金融市場と不可分な以上、『マネー・ショート』(15)のような作品は何度となく出現し続けるのだろう。『ダム・マネー』にも少なからずあの語り口やノリに似たものがある。すなわち、観客が現在地の足場を確認しながら、それでいて決して専門知識的な”置いてけぼり”を喰らうことなく身を投じていける狂騒的でいて高揚感あふれるジェットコースターのような空間だ。物語も明快。「ゲームストップ」という銘柄をめぐるヘッジファンドの空売りと、それに目をつけて小口投資家に抵抗を呼びかけたローリング・キティの闘い。ファンドの当初の読みは虚しく、株価はグングン上がる。コロナ禍という時代背景もポイントで、皆がフィジカルに集結し触れ合う「場」を失った中で育まれる一体感だからこそなおいっそう胸を打つ。決して誰しもが担えない奇妙で人間臭くもあるカリスマを、ポール・ダノがごく自然体でこなしている姿には目を見張るばかりだ。
煽りにご用心
莫大な資金を背景に空売りを続けるヘッジ・ファンドに対して、大した財産もない一般投資家が人数の力でその株を買い続け株価を高騰に導き、遂にはファンドに大損を蒙らせたという2021年にアメリカであった実話に基づく物語です。
経済音痴の僕は、ウォール街のマネー・ゲーム映画にはいつもついて行けなくなるのですが、本作は「信用取引」と「空売り」が分かっていれば何とかギリギリ理解できました。でも、最後に「踏み上げ」なる言葉が出て来て混乱してしまいました。
でも、2021年の出来事を早くも娯楽映画にするのですから、アメリカ映画界の力強さとフットワークはやっぱり凄いな。
そして、「所得倍増」をいつの間にか「資産倍増」にすり替え、「投資しよう」と叫び続ける岸田政権の煽りにはやっぱり用心だなと思った次第です。
鑑賞動機:ポール・ダノは過小評価されている9割、あらすじ1割
金持ちへの妬み/やっかみは(私自身も含めて)少なからずあるとは思う。それが資本主義の市場のルールだと言ってしまえばそれまでなのかもしれない。そのルールの中でなされたことを、自分たちに都合が悪いからといって、捻じ曲げようとする。そこに腹が立つし、一矢報いようとする人に快哉を送るのだし、自分もそこに加わろうとするのだろう。
もしフィクションだったらもっと盛って、カタルシスが大きくなるような構成にした方が楽しいとは思うけど、仕方ないか。ポール・ダノ以外も敵役含めて曲者揃い。色々な人物の視点で描く構成もよかった。
「空売り」の仕組みがなかなかイメージしづらいけど、
「株を借りて売る」「売った株は必ず買い戻さなくてはいけない」ということらしいから、たとえば買い戻す時に売った時の10倍の価格になっていたら…、あとはわかるね?
実話物が大好きな自分としてはかなり点数は低め。 うーん、なんでだろ...
実話物が大好きな自分としてはかなり点数は低め。
うーん、なんでだろー?
なんか盛り上がりに欠けるというか………・
ただそれが事実なのだとしたらしょうがない。実話ですから。
色々考えてみたのだが、映画の冒頭部分が、すでに株の値上がりして、大口が焦っている場面から始まるのだが、自分的には、大口の金持ち達が大儲けをしてセレブの生活をしている場面をもっと強調してほしかったな。そうすれば、その後の暴騰で資産を失っていく場面がもっとスカッとしたのかもしれない。
ポール・ダノがいい
リーマンショックを題材とした傑作映画の「マネー・ショート」と比べたら、ドキドキ感が薄くてやや劣るけれど、株式取引モノとして十分楽しめました。
随所に笑いのツボがあって、ナードなポール・ダノがイイ。最後に本人の映像が出てきて、実在の人物の方が爽やかイケメンだったのは(笑)
全裸で走り抜け!
ポール・ダノ最高 アドレナリンがドパー!
パンデミック真っ只中の私達を私達はもう忘れてるんではないか?と自問自答した。マスクして!COVIDで家族を亡くした人達。学校はオンライン授業。学校も会社も町も人がいなくてガラガラ。エッセンシャル・ワーカーに感謝しましょう、言葉だけ?シングル・マザー/ファーザーへの対応は良かったのか?自転車で食べ物を運んでくれる人達、色んなものを運ぶトラック運転手への感謝を忘れてないか?会議も公聴会もオンライン。
キース=キティに賛同し応援する小口の個人投資家は、多額の学費奨学金ローンを抱えている学生たち、子どもの歯の矯正にもローン支払いにもお金がかかるシングル・マザーの看護師(パンデミックの特別手当てなんて雀の涙)、就職氷河期にぶち当たってしまった若い人達、潰れそうな町の個人営業店で働く店員達。千差万別、いろいろ!共通項は金持ちでない普通の人達。
そしてテニスしてワインセラーもってプライベート・ジェットで移動してやたら大きな窓が多くて海が見える大豪邸に住んでいるのは白人男性で少し年配。個々の特徴はあんまり見えてこない。
キティの詳細で正確な情報と目的に共感し信頼してSellを押さずにBuyを押す、多額の収入が見込めるのに。持ち続けることが大事。それで株式市場が本来の健全さを取り戻す事ができる。音楽もよかったし家族の物語、友達との友情物語でもあった。
マネー映画というよりも、家族愛を描いた映画!
コミカル×シリアスをうまく混ぜあわせ、絶妙なバランスでつくりあげられた作品だと思います。
主人公家族(夫婦、弟、両親、そして亡くなっている姉)の愛情を描きながら
女子大生の2人、看護師、ゲーム店店員など、群像劇的な要素も入れていて
実に人間ドラマとして面白かったです。
事実をベースにしたドラマということで、
マネーを中心に取り上げられている映画だろうという先入観がありましたが
それは話の軸に過ぎず、描いているのは家族愛だなと思いました。
それから主人公のYouTubeをきっかけに、主人公をフォロー(YouTubeのみならず実際も)する
フォロワーがいることも、主人公の人間性をあらわしていますね。
特にラストでの弟へのプレゼントは実にニクい。
私も感激しました。
それにしても、コロナ禍中の出来事を描いた作品はさほど見受けられませんが、
本作はマスクへの言及等、コロナ禍を意識するつくりになっていますし、
加えて、マネーの動きがすべてスマホやパソコンの“数字”でしかないのが、
世界は変わったな〜と感じました。
宮崎は今でも映画のチケットは「現金可」の販売機利用が圧倒的に多いです。
これはエリアによって異なるのでしょうね。
というわけで、実に良くできている作品ですが、
マイナーなのでなかなか集客は難しいだろうなと思います。
そこが残念ですが、多くの方に観ていただきたいです。
大富豪vs個人投資家
社会現象を巻き起こしたゲームストア株騒動の実話を映画化した物語。空売りする大富豪に挑む個人投資家たちの争いをユーモアたっぷりに描いている。なかなか興味深いストーリーで今後も同じようなに一攫千金出来るチャンスが起こる可能性があるのではないでしょうか。
2024-54
私にとっては、ポール・ダノ観るための映画だった。 登場人物にリザル...
私にとっては、ポール・ダノ観るための映画だった。
登場人物にリザルトが表示されてる演出が面白いのと、個人投資家達が裕福ではないけどみんな個性的で魅力的に見えるのに資産家達は、無個性でそんな楽しく見えないのが印象的。
俺はちょっと・・・。
ストーリーに興味惹かれたのと、誰かが「良かった」と言ってたので観に行ったけど、俺はちょっとダメでした。
専門用語多いのと画面が暗いのなどで正直、途中、眠くなりました。
あと音楽が、最近の流行なのかも知れないけど騒々しくて。
実話の重み。音楽も脚本もクールだった。日本でもそうだけど、個人投資...
実話の重み。音楽も脚本もクールだった。日本でもそうだけど、個人投資家が増えてる中、こういう動きが現実に起こっていることに感動。ファンドの規制ができないものか。
資本市場の民主化運動!?主役はロビンフッターのガチホ勢!!
2021年にアメリカの資本市場を揺るがした「ゲーム・ストップ株騒動」をめぐる人間模様をコミカルに描いたヒューマンドラマ。
サラリーマンの同士にも絶対にお勧めだし、自分のつたない知識でも十分に楽しめる分かりやすい内容でした!それに何より、本作の本筋は良質な人間ドラマだからね。
公式サイトの監督のコメントを読めば、どうして小口投資家(若者達)の人間ドラマをここまでつぶさに描けたのか、その理由が分かります。(当時24歳で監督と同居していた息子も、作中のロビンフッターよろしく、ゲームストップ株のガチホ勢だったそうな!そら当事者感も出るわなw )
個人的に気になったのは、主人公のローリング・キティはゲーム・ストップ社に何らかの思い入れがあってこの株を買い支えていたのか?あるいは、あくまで自分の投資手法(ショートスクイズ)を体現するための道具に過ぎなかったのか?映画を観た感想としては、あくまで後者だったのではないだろうか。
一方で、スマホやソーシャルネットワークの発展、さらにロビンフッドのような画期的な投資アプリの登場など(さらに幾つかきっかけとなる規制緩和などもあったのだろう)を契機に、資本市場が一気に一般の若者にも解放されたことで、「民衆の力でウォール街をぶっ倒そう!」といった、これまでであれば非現実的だったスローガンが、徐々に顕在化してきたのだと思う。SNSを媒介としている点からも、資本市場の「アラブの春」とも言えるのではないだろうか。
それから、ロビンフッターの若者達は、ちょうど親がリーマンショックの煽りを受けて苦労をした世代。また、作中の当時は、コロナ禍の閉塞感や社会不安などが蔓延していた。それらが渾然一体となった結果、潜在的にあったヘッジファンドを含む超富裕層に対する不満が大爆発して、強固なガチホ勢を生み出していったのだという、社会構造的な背景が裏にあった点については見逃せないところだ。
因みにロビンフッドの社長も、リーマンショック後に起きたOccupy Wall Street(ウォールストリートを占拠しろ)運動に感化されて、資本市場の民主化を目指して同社を設立したのだとか。
一方で、小口投資家の取引き手数料を無償化する一方、主なロビンフッド社の収入源は高頻度取引先からのリベートとなっており、それら大口取引先である機関投資家やヘッジファンドに頭が上がらない関係性は、ゲームストップ騒動において、小口投資家のみを対象に、勝手に取引きを停止すると言った「反則技」を使わせるだけの圧力となって返ってきた点において、とても皮肉な事実だなと思う。
最後に、本作のポール・ダノはバルサ時代のリオネル・メッシにめちゃくちゃ似てますよねw メッシなら、投資などせんでもお金持ちなのに…と雑念を抱きながら本作を鑑賞してしまいました。
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