劇場公開日 2024年2月2日

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「天地人」ダム・マネー ウォール街を狙え! つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 天地人

2025年9月8日
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鑑賞方法:VOD

この作品の中で描かれることは事実を元にしたもので、大きい流れは真実と言っていい。
しかし奇跡のような出来事で、本当にそんなことが可能なのかと疑いたくなる。
それでも起こった。なぜか。

アメリカ人の多くは善悪二元論で考えがちだ。その昔、例えば一部の日本のアニメ映画などは、どっちが悪か分かりにくいと言われた。日本人の感覚だと戦争映画なんかがいい例だがどっちが悪とかなくね?。と思うものだろう。
アメリカの場合、国の成り立ちにまで関係する大事なことなので、善と悪をハッキリさせたがるのだ。キリスト教的考え方でもある。
いわば国民性と言えるものだろう。

もう一つアメリカの国民性としてヒーロー願望がある。なんでそうなのか分からない。上に書いた善悪二元論から来ているのかもしれない。
しかし、アメコミのコミック業界がヒーローものばかりなことからもうかがえるように、アメリカ人のヒーロー願望は他の国の国民以上に強そうだと分かる。

そして、最後のピースとして新型コロナによるパンデミック。

アメリカでは大企業やお金持ちは悪だ。多くの庶民が、自身が善であるならばその対極にあるお金持ちは悪というわけ。めちゃくちゃな理論だと思うだろうが事実だ。少なくともアメリカでは。
だからアメリカのお金持ちや有名人などは必死に慈善活動なんかをしているのだ。悪と認定されないように。

この作品に当てはめるならば、ゲームストップ社の株を空売りしていた投資家が悪のお金持ちということになる。
作中ではかなりえげつないことをしているので普通に観ていても悪っぽいが、一応ルールは破ってない。自分が儲かれば誰かが死んでも構わないというだけ。

悪の投資家を誅する。こんなに分かりやすくヒーロー願望を満たせる状況はそうそうないだろう。しかも自分一人では無理でも皆で力を合わせれば叶うかもしれないのだ。

この「皆」というのを生み出したのがパンデミックである。
行動制限をかけられ好きに遊びにもいけない上に、ストレスだけが溜まっていく状況。
やることないからスマートフォンを眺めていたら悪であるお金持ちを倒しヒーロー願望を満たせるチャンスが募金をするような感覚で手軽にやってきたのだ。

これらが、この作品の中で起こったことのカラクリではないかと思うのだ。
善悪二元論。ヒーロー願望。パンデミック。天地人のように時と状況と人が完璧に揃った奇跡的なタイミングだった。

マネーゲーム系の映画は実はあまり得意ではないので、面白く観られる作品は少ない。
しかし本作は、個人投資家たちの資産や、ゲームストップ社の株価という分かりやすい数字の上下動によって娯楽度を担保した。
実際は、お金持ち連中が何をしようとしているのかや、空売りの仕組み程度は分かっていたほうが面白いだろうが、もしそれらが分からないとしてもゲームストップ社の株価が上がればいいんだなくらい分かっていれば面白く観られると思う。

もしかしたらマネーゲーム系の映画で過去一面白かったかもしれない。

つとみ
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