「資本市場の民主化運動!?主役はロビンフッターのガチホ勢!!」ダム・マネー ウォール街を狙え! リオさんの映画レビュー(感想・評価)
資本市場の民主化運動!?主役はロビンフッターのガチホ勢!!
2021年にアメリカの資本市場を揺るがした「ゲーム・ストップ株騒動」をめぐる人間模様をコミカルに描いたヒューマンドラマ。
サラリーマンの同士にも絶対にお勧めだし、自分のつたない知識でも十分に楽しめる分かりやすい内容でした!それに何より、本作の本筋は良質な人間ドラマだからね。
公式サイトの監督のコメントを読めば、どうして小口投資家(若者達)の人間ドラマをここまでつぶさに描けたのか、その理由が分かります。(当時24歳で監督と同居していた息子も、作中のロビンフッターよろしく、ゲームストップ株のガチホ勢だったそうな!そら当事者感も出るわなw )
個人的に気になったのは、主人公のローリング・キティはゲーム・ストップ社に何らかの思い入れがあってこの株を買い支えていたのか?あるいは、あくまで自分の投資手法(ショートスクイズ)を体現するための道具に過ぎなかったのか?映画を観た感想としては、あくまで後者だったのではないだろうか。
一方で、スマホやソーシャルネットワークの発展、さらにロビンフッドのような画期的な投資アプリの登場など(さらに幾つかきっかけとなる規制緩和などもあったのだろう)を契機に、資本市場が一気に一般の若者にも解放されたことで、「民衆の力でウォール街をぶっ倒そう!」といった、これまでであれば非現実的だったスローガンが、徐々に顕在化してきたのだと思う。SNSを媒介としている点からも、資本市場の「アラブの春」とも言えるのではないだろうか。
それから、ロビンフッターの若者達は、ちょうど親がリーマンショックの煽りを受けて苦労をした世代。また、作中の当時は、コロナ禍の閉塞感や社会不安などが蔓延していた。それらが渾然一体となった結果、潜在的にあったヘッジファンドを含む超富裕層に対する不満が大爆発して、強固なガチホ勢を生み出していったのだという、社会構造的な背景が裏にあった点については見逃せないところだ。
因みにロビンフッドの社長も、リーマンショック後に起きたOccupy Wall Street(ウォールストリートを占拠しろ)運動に感化されて、資本市場の民主化を目指して同社を設立したのだとか。
一方で、小口投資家の取引き手数料を無償化する一方、主なロビンフッド社の収入源は高頻度取引先からのリベートとなっており、それら大口取引先である機関投資家やヘッジファンドに頭が上がらない関係性は、ゲームストップ騒動において、小口投資家のみを対象に、勝手に取引きを停止すると言った「反則技」を使わせるだけの圧力となって返ってきた点において、とても皮肉な事実だなと思う。
最後に、本作のポール・ダノはバルサ時代のリオネル・メッシにめちゃくちゃ似てますよねw メッシなら、投資などせんでもお金持ちなのに…と雑念を抱きながら本作を鑑賞してしまいました。