「株の知識があれば、より楽しめる!」ダム・マネー ウォール街を狙え! おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
株の知識があれば、より楽しめる!
仕事帰りにたまたま時間の都合がよかった本作をチョイス。実話ベースであることも、元となった株騒動自体も知りませんでしたが、なかなかおもしろかったです。
ストーリーは、ゲームストップ社が好きで、そこの株に財産を注ぎ込んでいた会社員のキース・ギルが、「ローリング・キティ」の名で動画配信を行い、同社の魅力や再価値を訴え続けたところ、それに賛同した小口個人投資家が同社の株を買い始め、それはやがて大きなうねりとなり、小口個人投資家と富裕層投資家の対立の構図に発展していくというもの。
株の知識がなさすぎて理解が追いつかないところは多々ありましたが、小口個人投資家である庶民たちによる超富裕層への逆襲が描かれていることはよくわかりました。生活に余裕のない庶民に希望を与え、富裕層に一泡吹かせるようなローリング・キティの存在にみんながすがったことで、この騒動は起きたのではないかと思います。それだけ、庶民は救いを求め、富裕層への不満を抱えていたということでしょう。
それにしても、小口個人投資家として学生やフリーター等も描かれますが、誰もが株の基礎知識をしっかりもっていて、スマホひとつで手軽に売買していてることに、日本との大きな違いを感じます。ましてや生活余剰金が潤沢にあるわけでもないのに、なけなしの蓄えを注ぎ込んでいく様子にはびっくりです。株の知識も売買経験もない自分には考えられない行動です。今や日本人でもこんな感じなのでしょうか。折しも新NISAが始まり、日本でも投資熱が高まりつつあります。国も積極的にこれを後押しして、“老後の資金は各自で用意して国に頼るな”と言わんばかり。これは本気で株の勉強を始めないといけないですかね。とはいえ、やはり手を出すのは怖い気がします。作中で株に熱を上げる家族をたしなめる「のめり込んじゃダメ!麻薬と一緒だから」という言葉が、とても印象的です。
さて、元となった騒動は、コロナ禍の2020年というつい最近の出来事のようです。昨今の社会現象の発端として、YouTubeを始めとする各種SNSが大きな影響力をもっていることを改めて感じさせます。今回の騒動とはちょっと違いますが、その昔、我が地元の信用金庫が、女子高生の冗談が発端となって取り付け騒ぎに陥ったことを思い出しました。もしあれが現在のSNSで拡散されたら、本当に倒産してしまったのではないかと思います。もはや生活に欠かせないSNSですが、その付き合い方は一人一人がよく考えないといけないですね。
主演はポール・ダノで、人のよさそうな雰囲気が本作によくマッチしています。脇を固めるのは、ピート・デビッドソン、ビンセント・ドノフリオ、アメリカ・フェレーラら。