劇場公開日 2024年11月8日

「「自分の物語」として読み取る余白を大きく取った一作」ロボット・ドリームズ yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「自分の物語」として読み取る余白を大きく取った一作

2024年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

本作の、グラフィックノベルの手触りが伝わるような絵柄は、たとえば『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』のようなビジュアルアートの洪水的な派手さと比較すると、やや地味な印象を受けることは確かです。一方で、作画は隅々まで丹念で、大スクリーンだと実に細かい部分までその描きこみ、ちょっとした小物の妙などを楽しむことができます。

主人公のドッグとロボットにはほとんど台詞がなく、なんだったら名前と呼べるものもありません。そのため、ドッグとロボット、そして彼らの関係について、観客側が想像を巡らせたり解釈する余地が大きい造りになってます。特にロボットにどのような姿を見出すかで、本作の見え方がかなり異なってくるため、複数人で鑑賞して、どういった物語と受け取ったのか話し合うのも面白いかも。

ものすごいほのぼのとした絵柄でとんでもなく過激な物語、という作品も世の中にはたくさん存在するので、本作にも何らかの、予断を裏切るような描写があるんじゃあ、とうがった見方をしそうにもなりますが、本作は基本的に絵柄を裏切るような展開はほぼないので、その点は安心できるところ。裏返して言えば、衝撃のどんでん返し展開!を期待すると物足りないかもしれない、ということでもあります。

鑑賞後はアース・ウィンド・アンド・ファイアーの『セプテンバー』を聞き返したくなること間違いなし!なんだけど、歌詞の内容自体が「ドリームズ」なところはちょっと切ない…。

yui