「しこりを大きくしないで。」異人たち だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
しこりを大きくしないで。
大林版は観てません。
アンドリュー・スコットとポール・メスカルの年齢差はちょうど20歳らしい。10くらいかと思ってた…
アダムと父母の交流を観ながら、何に触発されたのかわからない涙が止まらなかった。強く感情を揺さぶる描写でもないのに、涙が顎まで滴るのはなぜだろうと思って見ていた。
多分、アダムの孤独が自分に重なるからなんだと思う。親が早逝してもないし、クィアでもない。でも、人と関わって感じた孤独に耐えられず、そこから誰かと交流しようとしないわたしがアダムに重なった。
それと、親と人間として“ちゃんと”関われなかった後悔も、あるのだと思う。父はもう死んだし、母は生きているが、どれだけ言葉を選んでも、心を砕いても、正直にぶつかっても、“わたしの望む反応”が返ってこない(返せない)とわかっているから、これ以上向き合いたくない。
けど、数多の物語が描く、親との“ちゃんとした”関わりに遭遇するたびに、自分にはなしえなかった後悔を感じる。物語に生きる誰かの母が、わたしの母にも少しは宿っていないだろうかと。
母も父も、彼らなりの愛のようなものをくれたし、必死で働いた金でわたしたちを育てたことを理解している。でも…
本当は自分の親に掛けてもらいたかった言葉や振る舞いを、わたしは虚構から間接的に摂取して、なんとか完全に自暴自棄にならないようにしてるのだろうな。
親以外にも、恋人や友達やきょうだいや街ゆく人に、してほしかったことを、虚構から得て、なんとか生きてる。そんな気がした。
自分が誰かに生きる糧のようなものをあげられたかもわからない。自分だけが欲しがってる気もする。
忘れてしまうのでオチを雑にメモしておくと、
ハリー(ポール・メスカル)は、アダムの部屋を訪ねたあと直ぐに飲みすぎたか薬のオーバードーズかで死んでいた。前へ進むための動機が欲しくて作り出した父と母との邂逅を経て、拒絶してしまったハリーに会いに行くと、もう死んでた。
その後がわからんけど、ハリーの親兄弟に連絡してあげたりするのかな?そして、アダムは人と関わろうとし始めるのかな。胸にはまったしこりを大きくしないように。
とはいえね、めちゃ感動しといてなんやけど、突然自宅に訪ねてくる知らん人を部屋に招き入れないのは、身を守るためには極々一般的やと思うねん。あれでハリーを招き入れるのは無理やって!絶対無理!私なら居留守一択よ。名前すら教えません!!