「【大都会の中で孤独で深い喪失感を抱え生きる男。だが、男を深く愛した”モノ”達は時を超え男に生きる目的を与えるのである。今作は、人が心の片隅に抱える孤独感、喪失感を静的トーンで描いた映画でもある。】」異人たち NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【大都会の中で孤独で深い喪失感を抱え生きる男。だが、男を深く愛した”モノ”達は時を超え男に生きる目的を与えるのである。今作は、人が心の片隅に抱える孤独感、喪失感を静的トーンで描いた映画でもある。】
ー アダム(アンドリュー・スコット)は12歳の時に両親を路面凍結による交通事故で亡くして以来、深い喪失感と孤独を抱えながらロンドンのマンションで映画脚本家として暮らしている。
ある日、アダムは幼少期に過ごした且つての実家で、30年前に他界した両親(父:ジェイミー・ベル、母:クレアフォイ)と再会する。
それ以降、足しげく実家に通うようになったアダムは、平行して同じマンションで出会った男、ハリー(ポール・メスカル)と親密な関係を深めて行く。ー
◆感想
・オリジナルから改編した幾つかの部分で、上手いな、と思ったのはアダムを同性愛者に設定した点であると思う。
ー 母から、””良い人は居ないの?”と尋ねられ、”僕は女性を愛せないんだ。”と答えると驚く母。
年代的なモノであろうが、母は心配の余り色々と聞いてくるが、アダムは”大丈夫だよ。そんな時代じゃない”と答えるのである。HIVによる性感染を心配する母。両親が生きた時代と現在との対比を上手く描いている。-
・両親と会ううちにアダムの幼少期が明らかになる過程の描き方。
学校で苛められていても両親に言えなかった事が、大人になったアダムは父親に言えるのである。
そして、父親は”それはひどいな。”と呟き困った顔をするのである。
ー アダムと両親の30年間の空白が、会話を通じて徐々に埋められて行くのである。ー
■アダムと両親の最後のレストランでの食事シーンは可なり沁みる。アダムはレストランでファミリーセットを頼むが、両親は徐々に彼の事が見えなくなって来る。
手を差し出した母の手を握るアダムの表情が切ない。
・ハリーの存在も重要である。
”このマンションに住んでいるのは僕達二人だけみたいだよ。”と言いながらアダムとハリーは親密になって行く。
ー だが、ある日、アダムはハリーは既に死んでいる事を知る。それを察したハリーは”あんな姿は見せたくなかったな・・。”と呟く。
つまりは、アダムはマンションにたった一人で暮らしていたのだ。だが、ハリーはそんなアダムと、親密になり、自身を大切にしてくれたアダムを大切にするのである。-
<今作の原題は「オール・オブ・アス・ストレンジャーズ」である。
アダムを含め、自分の生きる世界にどこか違和感を覚えている全ての人間が異人と言う意味であろうか。
今作は、男が心の片隅に抱える孤独感、喪失感を、男を深く愛した”モノ”達が静的トーンで癒し、生きる目的を与える様を描いた映画なのである。>
さすがNOBU さん、
なんでゲイの設定なんだろうと思ってたら、そうか、あの時期の同性愛者はHIV感染で亡くなる人もいた時期でしたね。日本のオリジナルと比べない方がいいと思いました。