劇場公開日 2024年10月11日

「何者にもなりきれなかった者たち」若き見知らぬ者たち サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0何者にもなりきれなかった者たち

2024年10月23日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

単純

寝られる

何を言いたい?何を伝えたい?結局、何がしたかった?雰囲気だけ社会派ドラマの、若手実力俳優によるペラッペラな群青劇。何も無い。何も出来ていない。対話のできない母、秩序が乱れた警察、救ってくれない社会、失った居場所。要素だけつまんでも、監督にどうしてもこれだけは伝えたいという信念がなければ、〈風〉な映画にしかならない。
最近この手の映画流行ってるから、自分もやってみよう。そういう適当でやっつけな感じがひしひしと伝わってくる。「佐々木、イン、マイマイン」の独自性はどこへ?めちゃくちゃ没個性じゃないか!

キャストや予告からかなり期待していた作品なだけに、これはあまりに残念。何ひとつとしての心に残るものがなかった。登場人物の描き方が恐ろしいほど雑で、特に主人公なんかは悲惨な境遇をただジッと受け止めているだけで、ほとんど話すことも自分を変えるために動くこともしないから、とてもじゃないけど感情移入出来ないし、「あんのこと」のあんのように、社会が生み出してしまった可哀想な若者、とは思えなかった。いやいや、せめてもうちょい行動してくれよ。そのまんま立ち止まっているだけじゃ、物語として帰福が無くて面白くないじゃないか。

結局自己責任。何に狂わされたのか、全くもって分からないし、社会が彼を見放したというよりも、彼が社会を勝手に見損なっているといった感じで、追い詰められるくらいなら早く母親を施設に入れろよと思う。
そもそも、彼女の日向が1番の被害者。よくもまあこんなどうしようもない男と一緒にいるよね。なんの希望もない、闇オーラ全開の彼のために夜勤でお金を稼ぎ、お義母さんのことも面倒を見て、どちらかというと追い詰められるのは日向の方じゃないのか?彩人に狂わされた日向の人生。なんてことだ。

前半はまだ悪くない作りをしていて、心がグッと苦しく場面も多くあり、若手俳優の好演のおかげでかなり見入っていたのだけど、後半に差し掛かってから徐々に様子が変になり、訳が分からない、理解し難い方向へと物語が進んでいく。え、そういうことが言いたかったの?それだと物語崩壊してしまわないか?驚愕してしまうほどご都合主義な展開に、嫌悪感を抱いてしまった。なんなのだこれは。社会の闇でもなんでもない。あまりに酷い数分間。そこに矢を向けるのは、お門違いなんじゃないのか?それだったら、これまで要らなかったんじゃないのか?

なんで気づかないんだ!なんで何とも思わないんだ!どうしてそれで平気な顔してられるんだ!とツッコミが止まらない。真面目に作ってきたはずのドラマがぶち壊し。カメラワークは秀逸で、見た目はいい作品だから見てられるけど、物語としては最低最悪な展開で、見るに絶えなかった。格闘技は本当に意味がわからない。要らん。こんなのに尺を使うな。無駄に無駄を重ねる始末。見たいのはこれじゃない。「ジョーカー2」と同じ匂いがする。そんな説教、映画館に来てまで聞きたくない。

割と久々に映画で見た岸井ゆきのは、より一層いい女優になっていた。ますます演技に磨きがかかっていく。古川琴音が似たようなポジションを確立しつつあるけど、やっぱり自分は岸井ゆきの。日本映画では欠かせない、最高の女優だと思う。もっと出て欲しい。
演出、映像、音楽はとても良く、藤井道人映画を彷彿とさせる作りでその面では好きだったけど、何にせよ脚本が酷かった。こんなのはやっちゃダメだ。滝藤賢一にこんな役やらせたことは一生忘れないからな。

サプライズ
uzさんのコメント
2024年10月24日

彩人の死後も介護を続ける日向を見て、善人ほど不幸になるラストで気が滅入りました。
家庭や社会の問題を描いておいて、通りすがりの暴力で殺される脚本は理解できません。

uz