「期待度○鑑賞後の満足度○ 着想と構成は面白いが、それが昇華しきれていないうらみは残る。然し心に残る映画であることは言えると思う。ただ、題名(特に英語の題名)にはやや違和感あり。」若き見知らぬ者たち もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
期待度○鑑賞後の満足度○ 着想と構成は面白いが、それが昇華しきれていないうらみは残る。然し心に残る映画であることは言えると思う。ただ、題名(特に英語の題名)にはやや違和感あり。
①督促状は出てくるが、持ち家に住んでいるようだし食べるものにはそれ程不自由していないようだし、結構高くなっているタバコ(私は吸いません)も吸える。
何より手に負えなくなりつつ母親を施設に入れるには十分な「金」が無いのだろうし、何とか自分が面倒を看ようとし続けているのは彼の優しさかも知れないけれども、既に家の外で人に迷惑を掛けているのは明白なので、何とか行政に助けを求める手立てはあるはずなのに(私も助けられました)、現状を変えようとしないのは、却って彼の意固地さか頑固さが原因だと思えて感情移入しにくい。
そういう意味で「貧困」を描こうとした作品では無いように思える。
②また、親友の結婚祝いパーティーの夜に悲劇が起こるという設定もドラマチックではあるが、閉店したのなら「閉店」という札を出していたのであろうけどその当たりがよく分からないし、ああいう店をやっているのならああいう客が来るのも経験しているだろうから不自然さが先に立つ。
自転車に乗っていた彩人を倒しておいて、“大丈夫ですか?”と心配する代わりに汚く罵るようなドライバーって今時いる?、と思うし、悲劇の夜にやってきた三人の酔っ払いもひどい輩だし、彩人が命を落とす一番の原因を作りながら自分達の落ち度を糊塗する警官達も酷い(遠藤憲一が珍しく憎まれ役)けれども、彩人の周りに意図的に酷い人間を集めたような話も作為感が強いので、世間の「不条理」さという側面もインパクトが弱い。
③染谷将太扮する大和が彩人を偲んでスナックで(事件の夜以来いつまでも放ったらかしかと思った)「我が良き友よ」を歌うのもありきたりすぎてベタさが先立つ。
④といった不満点はあるが、“降りかかってくる暴力から自分を守る領域”としてひたすら謝ることを選んだ兄、自ら暴力(私にとってはボクシングとかキック・ボクシングってルール化された暴力としか思えない)を選ぶことで暴力から身を守ることにした弟。(あれで世界チャンピオンになるのというのも安直な話だとは思うけれども)、チャンピオンになったというのに兄のいない暗いスナックで虚無感を漂わせる姿。
もどかしさはあるが、この監督が描きたかったものが何となく分かる。
⑤