「ファンでなくても傑作ドキュメンタリー」SUNRISE TO SUNSET スキピオさんの映画レビュー(感想・評価)
ファンでなくても傑作ドキュメンタリー
ラウドロックのジャンルのバンド”Pay money To my Pain“(略称:PTP)の結成から直近のライブまでのドキュメンタリー。ただ、バンドのドキュメントというより、ボーカルのKにスポットを当てた作品です。
バンドのファンでもなく、このジャンルに詳しくないので、映画を通してだけでしか語れませが、映画はとても心に響くものがあります。
ボーカルのKはとにかくカッコいい。歌は上手く、小柄ですが筋肉質でイカついのですが、笑う子供みたいな親しみを感じます。彼に魅せられて、メンバーを集めてバンドに人気が出てくるのが前半パート。
ネタバレってか、ドキュメントなので事実なのですが、ボーカルのKは亡くなっています。彼が亡くなった後が後半パート。
Kというカリスマ性を持ったボーカルが居なくなり、バンドや他のアーティストやファンがどう変わったのか。それを通してKとはどういう存在だったのか、というのがメインのテーマかな。
象徴的なのは前半パートでのライブ風景は主に小規模なライブハウス。一方で後半はZeppや名古屋ドームといった大きな会場です。亡くなって存在感が増した、という見方がテーマなんでしょうが、ではKが望んだのはどっちだったんだろう、と考えさせられました。
カリスマ性と精細さが、自我の強さと他人への愛情が、色々と相反する気持ちをKは抱えていることが劇中から感じられます。大きな会場、沢山の人の想いは糧にも毒にもなるのだろうな、と。
また、前半は関係者のインタビュー中心でしたが、後半はKのいないライブ映像がかなり長いです。そうなると「あ〜、このライブ風景をKが観たら、どう思うだろうか」などと考えてしまいます。
長いライブ映像を、そんなことを考えて観ていると、ふと、空いている映画館の隣でKも一緒に観て、ニコッと笑い「そんなの、一緒に歌いたいに決まってるじゃん」と言い出しそうな、、、そんな感覚になっていると、ライブ後半で会場中が携帯の明かりで照らされるシーンが、何と言ってよいのか、エモーショナルな気分にさせられます。
何に感動したのか、この感動をどう表現したものか、難しく、観終わった瞬間は「スゲーもん観たな」ってことだけでした。話して、整理しても、表しきれない感情が残っている。
PTPやロックには縁がなくとも、伝わる普遍性のあるドキュメンタリーであることは間違えなく、傑作です。