ファニーズのレビュー・感想・評価
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「地方の映画と侮るなかれ」な傑作ドキュメンタリー
かつて沖縄で絶大な人気を博したお笑いコンビ「ファニーズ」のその一人、今は亡き「山城逹樹(やましろたつき)」の一生と彼の生きた沖縄の笑いの歴史を辿るドキュメンタリー映画です。今は沖縄での上映は終了してますが、今年の東京ドキュメンタリー映画祭に出展が決まり、これを第一歩として県外での劇場公開もしたいと監督が語ってました。すごい良い作品なので皆さんにも是非見て頂きたいです。
ネタバレなしで感想を書くと、まずドキュメンタリーとして完成度がとても高いことが良かったです。例えるならめちゃくちゃ出来の良いNHKの特番って感じで、出てるタレントも超大物って訳でもないし(めっちゃ失礼)、取り上げてるテーマも今まで興味を持ったことも無いくらいなのに(めっちゃ失礼)、様々な人物の濃いインタビューを心地いいテンポで見せてくれて、思わず見入っちゃいます。カメラの手持ち感や環境音が結構入ってるところ等の良い意味で大作映画っぽくない、低予算の感じと相まって、製作陣の「高品質なドキュメンタリーを作ってやろう」というハングリー精神が伝わってエモいです。
しかしそれでありながら、映画としても素晴らしい仕上がりになっているのが自分が今作をオススメする最大の理由です。今作の監督を務めた「山城智ニ(やましろともじ)」は前述した「やましろたつき」の弟で、「たつき」の立ち上げた芸能事務所「FEC」を引き継ぎ、現在社長として頑張っています。その境遇を含めて、異常なまでにドラマチックな「たつき」の生き様を今作は見事にフィルムに収めています。ドキュメンタリーにおいて過度な映画的演出を入れると、ノイズになってしまうことも多いですが、今作における映画的演出はこの現実が持ってるドラマ性を映画として映し出すための極めて自然で、誠実なものとなっております。その演出により、3部構成の中盤から終盤にかけて、映画として凄まじい勢いを見せてくれるところが今作の白眉だというふうに思います。ほんとに志の高い、そしてそれに見合う手腕もきちんと伴った傑作です。是非ご覧になって頂きたいです。
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