「主役2人を堪能する映画」サイレントラブ U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
主役2人を堪能する映画
腑に落ちない事が色々ある。
美夏の目の状態が終始わからない。全盲なのかそうでないのか。全盲のようにも見えるし…全盲ならば、そうはならないような事も起こる。
そんな誤差が作品の色々なとこに見え隠れして、結果没入感を妨げる。
映画としては丁寧な作りにも思うのだけど…「神は細部に宿る」ってどっかの建築家が残した言葉が頭をよぎる。どうにも細部が疎かになってたような印象だ。
物語的にも邪魔なカットが入る。
旧講堂に向かう時に人混みに翻弄される美夏のカットがあるんだけど、あろう事か美夏の主観が入る。あんな風に見える訳ないのだけれど…なんであんな鮮明な絵にしたんだろう?
喉にナイフがあんなに深々と刺さって、しかも抜いてって…医学的に可能なのだろうからああいうカットになったんだろうけど、説得力は皆無だった。よく声が出ないだけで済んだな…。
神の手の話になった時も、回想で屋上のカットが入る。ガムランボールから結びつけたとしても、あの屋上のカットまで入れるのはどうなんだろう?
ちゃんと問いかけがあって、答えたのならソレを入れるべきではないのだろうかと思う。
美夏のキスシーンを目撃した時もなんだかなぁ…付き合ってる訳ではないんだから怒るのはどうなんだ?凹むまでは分かりはするが、ガムランボールを投げ捨てたら怒りにもとれちゃうわなぁ。北村を睨みつけてガムランボール押し付けるくらいがせいぜいなんじゃないかと思うんだけど…。あんな山奥からどうやって帰ったんだは敢えて聞くまい。お約束だしな…。
廃工場に乗り込んでくる葵に向かって、敵意を向ける手下達もそうだ。意味が分からない。お前えら、葵の友達に頼まれたんだろ?なんで殺気だってんの?なんかボスの人が一言「お前もムカついてんだろ、やっちまえよ」みたいな事がありゃ、鉄パイプを葵に渡す配下は成立するのに、そんな表現もない。
所々にそういう綻びを感じる。
とまぁ…そこそこ強引な語り口調で…ラストにしたって、甲板の掃除をしてて、船が出航するカットがあったなら、葵も一緒に行ったのかと思うし。
演出上の主観が先行してて、観客との共有が出来てなかったように思われる。
総じてそこまで心を鷲掴みにされる話ではなかった。
浜辺さんは美しく、白シャツとジーンズを着てても可憐だったなぁ。
ラストのUPはご褒美カットだった。
それはたぶん、山田氏のファンにも言える事だと思う。
原案・脚本が監督なだけに、思い入れはあったのだろうと思うのだけど、その割にはって感じで、どこのボタンを掛け間違えたのか…少ない予算を主役2人にぶち込んででもやる事が、作品のクオリティを上げる意外のとこに意味合いがあるようで、どうにも釈然としない。